イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

リリースされなかったトリビュートアルバム

先日の良質なトリビュートアルバムの三条件のエントリー後、つい思い出してしまったのが『Songbook -Tatsuro Yamashita Covers』。2004年に登場するはずだった山下達郎さんのトリビュートアルバムです。曲目ならびに参加歌手についてはHMVに詳しく掲載されています。

ついに山下達郎の名曲が華々しく甦る!|HMV ONLINE

 (2004年4月16日付 ”こちらの商品は発売中止です。”と大きく掲載)

 

発売中止の理由についてはmixiコミュニティ内、達郎さんの「トリビュート盤」についてのページにて、伝聞の形で記載されています(mixiの特性上、リンク掲載は控えさせていただきます)。ラジオの新春放談企画で、大瀧詠一さんからの”トリビュートアルバムのリリースは?”の問いかけに対し、”断固として許可しない”と言ったというその意思が根底にあるようです。HMVによると発売中止作品のリリース元はアリオラジャパンソニー内のレーベルであり、山下達郎さんのアルバム『CIRCUS TOWN』から『GREATEST HITS! OF TATSURO YAMASHITA』まで(アナログボックスセットを除く)の現在の発売元である同レーベルが、所属時代の曲に絞ってのトリビュートアルバムをおそらく本人には内緒もしくは本人の許可を取らずとも音源を持っているので制作出来ると見越して作ろうとしたところ、現在のレーベルならびに本人から発売中止要請が来た…というのが真相ではないかと。

 

とはいえ発売中止になる以前から制作は進行していたわけで、収録予定だった数曲は後に各歌手のシングルやアルバムにて登場しています。キンモクセイによる「踊ろよ、フィッシュ」(『NICE BEAT』(2004)初回盤収録。Amazonにて試聴可能)のハツラツとした感じも好きですし、レゲエテイストなBONNIE PINK川上つよしと彼のムードメイカーズによる「Your Eyes」(BONNIE PINK『REMINESCENCE』(2005)収録 コチラで試聴可能)も心地良い仕上がり。そしてORIGINAL LOVEによる「あまく危険な香り」では田島貴男節により同曲がよりソウルフルに仕上がっていて個人的な白眉なのですが…シングル「沈黙の薔薇」(2004)のカップリングとして収録しているこの「あまく危険な香り」(ORIGINAL LOVEのディスコグラフィー参照)、iTunes Storeではなぜかシングル表題曲のみの販売なんですよね。

このシングルはCDで買って愛聴しています。 B面も A面同様の大人向けアレンジで、私としては勝手に両A面扱いです。 しかし、ここにはカップリング「あまく危険な香り」山下達郎のカバーがない!! どんな事情か知りませんが残念です。アートワークもキレイだし、本当は星5個なのに。

iTunes - ミュージック - オリジナル・ラヴ「沈黙の薔薇 - Single」 カスタマーレビューより

星3個にとどめた方のカスタマーレビューには心から同意します。「あまく危険な香り」を配信しなかったのはORIGINAL LOVEサイドの配慮なのかもしれませんが、トリビュート発売中止後に各歌手が自身の作品として発売している状況を勘案するに(それでもキンモクセイの場合は初回盤限定のようですが)、ORIGINAL LOVEの未配信が達郎さんサイドの要請だとしたならば、ちょっと縛りがキツすぎやしないか、というのが正直な感想。その対応は残念に思います(トリビュートアルバムの発売中止措置を咎めるというものでは決してありません)。

 

 

ともかく、トリビュートアルバム制作の際は、本人ならびに所属レーベルの許可を取ることが大前提ですね。そんな当たり前のことを、と言われるかもしれませんが、レコード会社は時に所属歌手の思いとは裏腹に非公式ベストアルバムをリリースすることが以前からあるわけです(ベストアルバムに巣食う利権 : 80年代後半~90年代前半を回顧するブログ参照)。自らのレーベルの所属歌手の思いを時に無視するレーベルが、他のレーベルや歌手にまで心を配れるか…そう考えると、『宇多田ヒカルのうた-13組の音楽家による13の解釈について-』がいかに良好な関係を築いていたかが分かろうというもの(発売元が宇多田ヒカルさんと同じレーベルではありましたが)。『宇多田ヒカルのうた…』が内容も素晴らしかっただけに、今後もそのような形でのトリビュートアルバムが登場してほしいものです。

 

 

ちなみに、山下達郎さんのトリビュートアルバムについて調べるうちにここに辿り着きました。

小沢健二のトリビュートアルバムを妄想した - Mohri Katsuhisaさんのノート - Facebook

 (Facebookの設定が公開となっていたため、リンクを掲載させていただきました)

 

いろんな方からの意見を集約して書き記した妄想トリビュートアルバム、想像すると楽しいですね。実現は極めて難しいかもしれませんし(まずなにより小沢健二さん本人の許可が難しい?)、特に『Eclectic』は可能性がほとんどないことは承知で、それでも期待せずにはいられません。