イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

「麦の唄」の真髄は3連リズムにおける”非3連”

先日、加藤ミリヤ「少年少女」を取り上げた際、比較対象とした中島みゆき「ファイト!」が3連リズムであるということを記載しました。昨年末放送の『亀田音楽専門学校』(Eテレ)、3連リズムの回では同じく中島みゆき「時代」が取り上げられていましたが、現在放送中の朝の連続テレビ小説『マッサン』(NHK)の主題歌として、昨年の紅白歌合戦でも披露された「麦の唄」も3連リズム、ですね。

3つの音符を囲うように”3”と書かれているのがたくさん出てきます。

 

この曲の特徴は3連リズムのみならず、転調を繰り返すことにあるということ。転調の意味などについては下記にて詳細な分析がなされていますので、勝手ながら紹介させていただきます。

「麦の唄」と『問題集』: 今ゆくべき空へ

 

で、自分が考えるこの曲の肝は、動画における1分10秒のところ、サビ終わりの部分にあるのではないかと。歌詞のサビ終わり、♪明日へ育ってゆく~の”したへそ”のメロディだけが3連リズムではないんですよね(楽譜においてその部分の音符の下に、”3”の字はありません)。

同様に3連リズムではなくなるところが、大サビの導入部(♪泥に伏せるときにも~ のくだり)にもあります。通常とは違うリズムを用意することは、聴く側に曲の場面転換(とでも言うべきでしょうか)を印象付けるのに有効な手段なのかもしれません。ちょっとした違和感を与え耳を引かせる、とでも表現すればよいでしょうか。しかしながら、先述したサビにおける”したへそ”のメロディは、♪泥に~ の箇所よりも特段ゆったりとした速度であり、その違和感はより際立っているように思うのです。

 

もしかしたらこの”したへそ”での、3連ではない且つゆったりとしたリズムでのメロディ進行は、”麦が間違いなく明日へ育っていくために着実に根を生やしている”ことをより印象付ける効果をもたらしているのではないかと。言葉をきちんと置く(だからこそ、根を生やすように感じられる)かのような非3連のメロディはまた、マーチにもにた力強さを与えているかのようでもあり、より強固な説得力を帯びるようになるのではないかと思うのです。

 

ドラマの世界観を表現する等によりドラマをバックアップするのが主題歌の役割だとして、この「麦の唄」は単にバックアップするのみならず、ドラマでの主人公の二人(マッサンとエリー)の指針とすらなっている、主人公の道筋を示すかのような曲に成っていると言っていいのかもしれません。