イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

シャロン・ジョーンズ&ザ・ダップ・キングス、素敵なクリスマスソングのビデオ公開

先月亡くなった女性ファンカー、シャロン・ジョーンズがメインボーカルを務めるシャロン・ジョーンズ&ザ・ダップ・キングスの新たなミュージックビデオが公開されました。シャロンについては一度、亡くなった際に記載しています。

 

今回公開されたのは、昨年リリースされたクリスマスアルバム『It's a Holiday Soul Party』に収録された、チャールズ・ブラウン「Please Come Home For Christmas」のカバー。クレイアニメーションにて登場しており、シャロン等メンバーもクレイアニメのキャラクターになっています。

シャロンが亡くなる前からこのビデオの構想はあった、と米ビルボードが伝えています。このクリスマスアルバムからは軽快且つ格好いい「White Christmas」のビデオも昨年公開済で、こちらはアルバムタイトル通りまさに”パーティー!”といった趣。

アルバムリリースの2年前には既に、「Ain't No Chimneys In The Project」も公開されていました。こちらもアニメーション。

アニメ化はもしかしたらシャロンの病状を考えてのことだったのかもしれませんが、クリスマスアルバム収録曲がバラエティに富み(それでいてきちんとファンクが通底している)、そしてアニメの取り入れ等音楽の魅せ方も柔軟ですね。

 

シャロン・ジョーンズ&ザ・ダップ・キングスのアルバムはフィジカルでの取り寄せが難しく、個人的には終ぞ年内の購入を断念してしまった(キャンセルせざるを得なかった)のですが、フィジカルにこだわらなければデジタルダウンロード等で手に入るので気に入った方は是非。クリスマスアルバムについては下記でもチェック出来ます。

 

シャロンの歌声と共に、素敵なクリスマスをお過ごしください。

米シングルチャート、「Starboy」は未だ2位のまま

ビルボードシングルチャートを定点観測。日本時間の火曜早朝に発表された、12月31日付最新チャート。初登場が2曲ランクインという中、上位5強は凪状態。レイ・シュリマー feat. グッチ・メイン「Black Beatles」に阻まれ、ザ・ウィークエンド feat. ダフト・パンク「Starboy」は今週も2位止まりでした。最新チャートについての詳細は下記をご参照ください(トップ10カウントダウン動画もあります)。

個人的にこの数週のうちに「Starboy」が「Black…」を逆転すると踏んでいたので予想が外れて大変申し訳無い思いなのですが、「Black…」がラジオエアプレイでまだ上昇中なのに対し、「Starboy」は全ての指標(デジタルダウンロード、ストリーミングおよびラジオエアプレイ)で下降に転化、もはや首位奪取は難しいと言えるでしょう。

この「Starboy」、首位を一度も達成出来ないながらも通算8週目の2位を記録することに。実はこれまでの歴史の中で、「Starboy」(さらにはエド・シーラン「Thinking Out Loud」も同様に8週)以上に2位に長期エントリーした楽曲があります。

・通算9週:シャナイア・トゥエイン「You're Still The One」(1998)

・通算9週:ドナ・ルイス「I Love You Always Forever」(1996)

・通算10週:ミッシー・エリオット「Work It」(2003)

・通算10週:フォリナー「Waiting For A Girl Like You」(1981-1982)

1位を逃したという意味ではある種不名誉な記録かもしれません。上位が凪の状態であると考えれば、もしかしたら「Starboy」はこれらを追い抜く可能性もあるでしょうが、果たして。

その記録を達成する上でライバルになるかもしれない?のが今週3位のザ・チェインスモーカーズ feat. ホールジー「Closer」ですが、遂にこちらも勢いに陰りが。ラジオエアプレイの連続1位が11週で途絶えてしまったのです。代わって同部門で首位に到達したのはマルーン5 feat. ケンドリック・ラマー「Don't Wanna Know」(総合10位)。「Closer」もそろそろ息切れかもしれません。

 

そんな上位5強に来週風穴を開けんとするのが初登場でランクインした2曲。6位のゼイン&テイラー・スウィフト「I Don't Wanna Live Forever (Fifty Shades Darker)」は先週も紹介しましたが映画『Fifty Shades Darker (原題)』サウンドトラックからの先行曲。映画公開、サウンドトラック共に来年2月10日を予定しており、映画公開が近づくにつれさらなる盛り上がりも期待出来る楽曲(実際この曲は定額制音楽配信サービスのうちSpotifyのみ遅れての公開(12月16日より)としており、Spotifyでのカウントは次週付のチャートに反映…チャート上昇のための戦略ならば非常に巧いなと)。

この曲でテイラーは20曲目のトップ10入りを達成し、女性ソロ歌手ではマドンナ(38曲)。リアーナ(29曲)、マライア・キャリー(27曲)、ジャネット・ジャクソン(27曲)、ホイットニー・ヒューストン(23曲)に次ぐ記録を樹立。近い将来、リアーナと共にマドンナの記録を抜くかどうかのデッドヒートを繰り広げるものと予想されます。ちなみにトップ100でみれば70曲目のチャートインとなり、女性歌手ではニッキー・ミナージュと並びました(ちなみにこちらのトップはアレサ・フランクリンの73曲)。

 

そして7位に、こちらも初登場を果たしたのはJ・コール「Deja Vu」。6位同様こちらもミュージックビデオがないのが残念、ですので定額制音楽配信サービス等でご確認ください。

リリースしたばかりのアルバム『4 Your Eyez Only』が最新のアルバムチャートを制し、しかもその数字(セールスに単曲のダウンロードやストリーミングを足した合計)が492,000ユニットと今年3位の記録を達成。そのため収録された全10曲がシングルチャート100位以内にエントリーを果たし、その最高位が「Deja Vu」となった次第。J・コールのシングルの最高位はこれまで、「Work Out」(2011)の13位が最高であり、自身最高位を更新した形となっています。また、米の定額制音楽配信サービスTIDALにて発表されたドキュメンタリー『Eyez』で使用されながらオリジナルアルバムには未収録だった「Everybody Dies」および「False Prophets」もシングルトップ100にランクインしています。アルバムや『Eyez』については下記bmrに詳しく掲載されていますのでそちらを是非。


次週、ゼイン&テイラー・スウィフト、そしてJ・コールが台風の目になり得るかどうかに注目しましょう。

Kan Sano新作の優雅さに惹かれる

中毒性が極めて高く、聴くほどにハマっています。

・Kan Sano feat. 七尾旅人「C'est la vie」(2016)

mabanua、関口シンゴ、Shingo Suzuki(以上敬称略)等、上質なミュージシャンが多く在籍するorigami PRODUCTIONSに所属するKan Sanoさん。今月7日にリリースしたサードアルバム『k is s』からの先行曲となるこの曲が、最新12月18日付の『J-WAVE TOKIO HOT 100』(J-WAVE 日曜13時)で12位に達し、またエフエム青森『ラジモット!』(月-木曜16時55分 金曜16時)でも今月のヘビーローテーションに選ばれており、おそらくラジオでこの曲を耳にした方は多くいらっしゃることでしょう。

この曲の素敵なところは、R&B(やヒップホップ)をベースにしながら重くなり過ぎず、軽快且つ優雅であるゆえ聴く者に心地よい余韻を残していく点。客演で参加する七尾旅人さんの、ハナレグミさんから少しアクを抜いたような声がより軽快さを増している(それでいて説得力ある)ように思います。そういえば、七尾さんとこういう音楽ジャンルとの相性の好さは、やけのはらさんとの「Rollin' Rollin'」(2009)でも感じたなあと。

 

アルバム『k is s』はApple Musicでも聴取可能(→こちら)。これからフルで聴いてみようと思いますが、個人的には「Can't Stay Away」という曲にMaylee Toddがフィーチャーされていることに驚き、嬉しくなりました。彼女も以前、レトロソウルを醸した「Baby's Got It」がJ-WAVEチャートでトップ10入りした方。

しばらく名前を聞いていなかったのですが、このタイミングで、しかもKan Sanoさん作に参加ということに、Sanoさんのセンスの好さを実感した次第です。

 

それにしても、Sanoさんおよび先述したorigami PRODUCTIONS所属の方々が藤原さくらさんのワンマンツアーに参加しているのは恥ずかしながら知りませんでした。既にツアーは終了しているのですが、彼らがどのような音を鳴らし、そして藤原さんとの相性がどうだったのか、気になって仕方ありません。

果てしない白の地平に似合う曲

自分は土曜のみ休みなのですが、今月はその土曜におそらく友人知人の誰とも会うことなく過ぎていきそうです。あと一週間でクリスマス・イブを迎え(しかも今年は土曜)、大袈裟ながら更に凍てつきかねない気持ちを少しでも和らげようと独りドライブした際に流れてきた曲が染みて来ました。

アリーヤ「At Your Best (You Are Love)」(1994)

果てしなく続く白の地平と同じように、どこまでも透き通る声…陳腐な表現ですがジーンとくるものがありました。彼女が亡くなって15年が経過していますが(生きていたら今年37歳。逆算すれば「At Your Best…」は15歳以前に録音されたということに…!)、この曲のエバーグリーン感は凄まじいなあと実感です。

 

この、広大な冬の平原に似合う曲は以前取り上げたことがあります。宇多田ヒカルさんのカバー集に収録された、大橋トリオさんによる「Stay Gold」がそれで、一昨年の私的邦楽年間ベストも選曲した次第(詳細は2014 JP Songs Best(2014年12月31日付)に掲載)。その際、『寒さなどで独りの寂しさを感じやすくなる季節にこの曲を聴くとやわらかな自信が芽生えるというか、上手く言えないけどそんな感覚を抱く』と書いたのですが…今回もまさにそんな感覚を抱いたわけで。自分、成長していないんだなあと苦笑いです。

逃げ恥に、”逃げたりしない”と歌う人

3日後の最終回を前にさらなる盛り上がりを見せるのがドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系 火曜22時)、通称”逃げ恥”。視聴率は上昇を続け、そして『第9話(12月6日放送分)の総合視聴率(リアルタイムとタイムシフト視聴率の合計)が30.0%を獲得』(ムズキュン炸裂、また最高視聴率を記録 最終回を前に“逃げ恥ロス”続出か! - ウレぴあ総研(12月16日付)より)と大台を記録。タイムシフト視聴率および総合視聴率はつい最近始まったばかりの新たな概念であり過去の作品とは比較出来ないものの、主題歌である星野源「恋」が12月19日付のビルボードジャパンシングルチャート(HOT 100)で首位に返り咲き(【ビルボード】星野源「恋」、21.7万枚セールスの関ジャニを抑え、5冠で4度目のJAPAN HOT100総合首位獲得 | Daily News | Billboard JAPAN(12月14日付)より)、また”恋ダンス”のムーブメントもあり、ドラマが多角的にヒットしていると言えるでしょう。

 

さて、第10話の冒頭、星野源さん演じる平匡さんがある状況から一時(走って)逃げていたのですが、さすがにいくらタイトルが『逃げるは恥だが…』でもそこは逃げちゃだめだ!と思った自分がふと浮かんだ曲がありまして。

・To Be Continued「逃げたりしない」(1994)

タイトルとサビ始まりのインパクト、そしてたしか『夜もヒッパレ一生けんめい』(1994-1995 日本テレビ系)の中で中山秀征さんが歌い、いい意味で胡散臭さを残していたことも胸に大きく焼き付いているこの曲なのですが、歌っているTo Be Continued、通称”トゥビコン”のボーカル岡田浩暉さんが今回”逃げ恥”に出演していることもあって(石田ゆり子さん演じる百合の大学時代のゼミの同期、田島役)、思い出してしまった次第。しかもちょっとキザな役どころが余計にこの曲のイメージピッタリなんですよね。

もしかして”逃げ恥”のスタッフは、「逃げたりしない」の曲を知っていて岡田さんをキャスティングしたのか…だとしたら個人的にめちゃめちゃツボなのです。

アメリカのクリスマスソングチャートを掘り下げてみる

クリスマスまで10日を切りました。さほどクリスマスに興味のない方でも、ディスプレイやイルミネーションのクリスマス~年末モードに一度は見惚れたということはあるのではないでしょうか。かくいう自分は、ゴスペルを歌ったことを機にクリスマスの楽しさなどが(宗教観とは別に)芽生えた次第です。

 

さて、このブログでも以前紹介した、米ビルボードのクリスマスソングスチャート、”Holiday 100”。12月集計分のみに基づく期間限定チャートです。

長く親しまれている曲がチャートに登場する(ただし当然ながら、日本で認知度の高い曲が必ずしも上位であるとは限らない)こともあり、使用されている歌手の宣材写真は白黒のものが目立ちます。とはいえ宣材写真を選ぶ米ビルボードのさじ加減一つですし、エルヴィス・プレスリーはカラーなのですが。

このチャートで最新12月24日付チャートを制したマライア・キャリー「All I Want For Christmas Is You」は(総合)シングルチャートでも17位にランクイン。今後の盛り上がりによっては、これまでの最高11位を超え初のトップ10入りということもあるかもしれません。

 

クリスマスソングスチャートは開始から10年も経っておらず日が浅いこともあってか、現在トップ100入りしている曲に限ってみるとこれまで首位獲得曲はわずか5つしかありません。

マライア・キャリー「All I Want For Christmas Is You」(最新12月24日付1位)

・ペンタトニックス「Mary, Did You Know?」(最新9位)

ジャスティン・ビーバー「Mistletoe」(最新25位)

アリアナ・グランデ「Santa Tell Me」(現在28位)

・ペンタトニックス「Little Drummer Boy」(現在93位)

短期間に2つものクリスマスアルバムをリリースしたペンタトニックス、そしてアイドル時代のジャスティンとアリアナ…ペンタトニックス「Mary…」を除けば最高位と現在の位置に大きな差があるためまだまだ定番化しているとは言えないかもしれません。そう考えれば「Mary…」も頑張ってはいるのですが、長きに渡りクリスマスを彩ってきたワム!ビング・クロスビーナット・キング・コールやエルヴィスにまでも首位の座を明け渡さないマライアの強さはとてつもないですね。

”漢字一文字の曲”流行り?に乗っかって

昨日も触れましたが、今週月曜日に”今年の漢字一文字”が発表されました。それにちなみ、前日の『わがまま WAVE It's Cool!』(FMアップルウェーブ 日曜17時)で”漢字一文字の曲”という音楽特集をお送りしたところ、今まで以上のリクエストをいただきました。本当にありがとうございます。

さて、担当番組の一つ前に放送されている『J-WAVE TOKIO HOT 100』(J-WAVE 日曜13時)、12月11日付チャートではトップ10に漢字一文字の曲が3つもランクインしており、漢字一文字の曲がブームなのかもと実感しています。10位に宇多田ヒカル「道」、5位にRADWIMPS「光」、そして4位が星野源「恋」…いずれも今年を代表する歌手による作品ですが、漢字一文字の曲名というところにも共通点があるのですね。

 

ちなみに『わがまま…』ではどうしてもかけたかった曲があり、流させていただきました。それが「爪」という曲。オリジナルはペギー葉山さんによるもの。

昭和32年、平岡精二のリサイタルで初演』された『奥深い愛の別れの歌』と、ペギー葉山さんのホームページに掲載(ちなみに曲名はひらがな表記、なのですが)。その後、シャンソンや歌謡曲の名手がこの曲を取り上げており、たとえばちあきなおみさんによるバージョンは優しさや気品溢れる逸品となっています。こちらもひらがな表記。

そして、「黒い花びら」で第1回日本レコード大賞を受賞した水原弘さんによる「爪」。男性が歌い上げてもしっくりきますね。

 

で、今回番組で取り上げたのは、ピーターさんによる「爪」でした。カバーアルバム『私が愛した女たち』でも聴取可能ですが、今回ご紹介したのは『私が…』同様、2009年にリリースされたベストアルバム、『GOLDEN☆BEST ピーター(オリジナルを歌う+スタンダードを歌う)』に収められた、1970年代録音のバージョン。

このバージョンの凄いところは、艶めかしさ、そして最後の”爪を噛むのは よくないわ”がリフレインされることで増幅される、実は内に秘めていた悔しさや怨念みたいな感情の表出でしょうか。カバー当時10代後半から20代と想像され、その若さがいい意味で曲に現れたように思います。

 

とはいえ、ちょっとリバーブ強めなので初めて聴いた際に驚いてしまったものです…。