イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

星野源と藤井隆と多様性とエイリアンズと

今年の漢字一文字が【金】に決まった今週月曜日。前日の『わがままWAVE It's Cool!』(FMアップルウェーブ 日曜17時)でDJ陣が実はこの【金】を予想していたので、月曜日はとても驚いたものです。とはいえ、PPAPの服装に絡めてというのは予想だにしなかったですし、パラリンピックでは金メダルゼロだったんですよね…パラリンピックの選手の皆さんの頑張りは素晴らしかったですが、金メダルゼロだと認識している方がどのくらいいるのか、気になってしまいます。

さて、今年自分が社会を見渡してみて考えた今年の漢字一文字は、ネガティブなものばかり浮かんでしまうので割愛しますが、その一つを敢えて晒すならば【単】でしょうか。アメリカの次期大統領、トランプ氏および共和党の政策が白人以外の多様な人種や移民を排除するだろうやり方は”単一民族偏重”であり、彼らの考えは酷い物言いですが”単細胞”だと思うのです。その真逆である”多様性”…それこそリオデジャネイロオリンピックパラリンピックのテーマとなった考え方が踏みにじられそうで、今後の世界情勢に恐怖を抱いているというのが、大袈裟かもしれませんが正直な思いです。

 

 

そんな2016年にあって、単細胞ならぬ、多様性を謳う曲が大ヒットしたのは、本当に喜ばしい出来事でした。

2016年度ビルボードジャパン年間シングルチャートで3位を記録。ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系 火曜22時)やドラマ内でも見られる”恋ダンス”もブームとなっており…というのは多くの方が知るところでしょう。

さて、そんな「恋」の歌詞における、音楽ジャーナリスト高橋芳朗さんの解説が個人的にはとても腑に落ちたのです。この曲が”多様性”を謳っていることが発見でした。

ドラマでも、個人的に特に深く感心したのが、古田新太さん演じるゲイの同僚に対して、”ゲイ”に抱きがちな凝り固まったイメージを持ち合わせていたことに気づいて反省する星野源さん演じる平匡さんの対応。それを観た瞬間、この作品が様々な立場の人の生き方を丁寧に、そして肯定して描いていることを実感したのですが、「恋」にもそのテーマが通底していて嬉しくなったものです。

 

その星野源さんと、『逃げ恥』および『真田丸』(NHK総合 日曜20時)で共演している藤井隆さんが、12月12日深夜の『星野源オールナイトニッポン』(ニッポン放送 月曜25時)でカラオケパーティーを開催。その際に披露したのがなんと、キリンジ「エイリアンズ」だったのです。

放送の模様は下記で聴くことが出来ます。

(引用させていただいたツイート主であるみやーんさんはラジオ等の文字起こし職人。先に引用した『ジェーン・スー 相談は踊る』(TBSラジオ 月-金曜11時)も手掛けています。また上記ツイートのリンク先はradikoニッポン放送タイムシフト聴取先となっており、放送後1週間限定で聴取可能です。radikoプレミアム未加入の場合、お住いの地域の放送局で『…オールナイトニッポン』が流れていれば、一週間限定で無料にて聴取することが出来ます。)

 

実はこの曲、様々な解釈が出来るのです。そしてその解釈から生まれた多様な愛の形こそ ”多様性”と言えるでしょう。たとえばこのようなものが。

キリンジのエイリアンズの歌詞は最高だ | yonosuke不如意音楽室

 (勝手ながら掲載させていただきました。問題があれば削除させていただきます。)

 

「エイリアンズ」の歌詞はこちらに。自分はこの歌詞から、先述したLGBTの恋愛を想起したことがあります。男が”ダーリン”と呼ぶ様子や、そして”該当に沿って歩けば (中略) 新世界のようさ”というフレーズが堂々とデート出来ない主人公たちの解放された思いを示しているようで…さすがに安易な発想と言われるのは必至で、でもそういう考えもアリだと思えるくらい。懐の深い歌詞だと言えるでしょう。実際にこの曲に背中を押されたり勇気をもらった人も少なくないのではないかと考えます。

 

このキリンジ「エイリアンズ」を番組で披露した星野源さんと藤井隆さん。星野さんは「恋」で多様性を謳い、また藤井さんは、風営法でクラブが厳しく取り締まられていた時期にそのしがらみからの開放を求めるムーブメントのアンセムになった(と聞く)、tofubeats「ディスコの神様」のボーカルを務めていました。「ディスコの神様」が夜遊びの多様性を求める象徴になっていた…というのは言い過ぎでしょうか。

 

多様性という考えが急激に窮地に立たされそうな時代の中で、多様性讃歌の生みの親であるふたりが、多様性を謳う愛の歌を紡いだこと、そしてその瞬間に立ち会えたことは、本当に感動的な出来事だと思うのです。

米シングルチャート、フィフス・ハーモニーのカミラ・カベロが珍しい記録を樹立

ビルボードシングルチャートを定点観測。日本時間の火曜早朝に発表された、12月24日付最新チャート。アルバムチャートで今週2位と俄然好調なザ・ウィークエンド『Starboy』からのタイトルトラックを、今週もレイ・シュリマー feat. グッチ・メイン「Black Beatles」が抑えた格好となりました。

最新チャートについての詳細は下記をご参照ください(トップ10カウントダウン動画もあります)。

「Black...」と「Starboy」、今週も各指標を比較してみます。

・「Black Beatles

 ...デジタルダウンロード 70,000(16%↓)

  ストリーミング 38,000,000(10%↓)

  ラジオエアプレイ 87,000,000(19%↑)

・「Starboy」

 ...デジタルダウンロード 60,000(13%↑)

  ストリーミング 30,700,000(8%↓)

  ラジオエアプレイ 120,000,000(4%↓)

 ( ()内は前週比)

正直なところ、かなり接戦だったように思います。ゆえに、仮にアルバム『Starboy』が1週リリースを遅らせ、12月24日付アルバムチャートで初登場を果たしたならば、「Starboy」が「Black...」を凌駕した可能性があったのではないかと。たらればの話ではあるのですが。

 

ちなみにその12月24日付アルバムチャートは実に面白いことになっていて、初登場を含む上位5作品がいずれも10万ユニット超えを果たしています。特に1位の作品は個人的に嬉しい驚きであり、勢いで以下のツイートを。

詳細はツイート内、米ビルボードのリンク先をご確認ください。なお、ツイートした”ザ・ウィーケンド”は、”ザ・ウィークエンド”の誤りでした。訂正してお詫びします。

 

 

シングルチャートに話を戻すと、凪の状態が続く中にあって、今週新たにトップ10入りを果たしたのはこちらの曲。ミュージックビデオ公開がチャート上昇につながった形です。

マシンガン・ケリー feat. カミラ・カベロ「Bad Things」(17→10位)

どこかで聴き覚えのあるフレーズが...と思ったら、カミラ・カベロ&マシン・ガン・ケリー、「Bad Things」をパフォーマンス! | Hollywood News - ハリウッドニュース(12月4日付)でも言及されている通り、ファストボール「Out Of My Head」(1998 全米最高20位)を下敷きに。面白いのは曲のコード進行がオリジナル以上にクラシックの「カノン」を彷彿させる点。マキタスポーツさんが提唱する”カノン進行”は日本でもウケる気がします(”カノン進行”についてはマキタスポーツさんに聞く! ヒットするJ-POPにはルールがある「カノン進行」「サビは前」「転調多用」|「マイナビウーマン」(2013年8月20日付)に掲載)。男性ラッパーと女性シンガーの組み合わせはネリー&ケリー・ローランド「Dilemma」(→YouTube)を彷彿させることから、ラジオで流したらウケる気がします。

 

マシンガン・ケリーのこれまでのチャート最高位は、ワカ・フロッカ・フレイムを客演に招いた「Wild Boy」(2011 →YouTube)の98位。一方、カミラ・カベロはフィフス・ハーモニーの一員であり、グループとしてはタイ・ダラー・サインを招いた「Work From Home」(→YouTube)が今年最高4位を記録。またソロではショーン・メンデスにフィーチャーされた「I Know What You Did Last Summer」(→YouTube)の20位(今年1月)が最高でしたので今回ソロで初のトップ10入りとなり、グループでもソロでも同じ年に初のトップ10入りを果たすという非常に珍しい記録を樹立しています。

 

 

さて来週12月31日付チャートでは台風の目が登場、と米ビルボードがアナウンスしています。その曲とはゼインとテイラー・スウィフトが共演した「I Don't Wanna Live Forever」(→iTunes Store)。プロデューサーは、テイラーのシングル「Out Of The Woods」(2014 最高18位 →YouTube)も手掛けた、ファン.のジャック・アントノフ。映画『Fifty Shades Darker (原題)』のサウンドトラックからの先行曲として先週金曜に発売されており、映画自体は前作『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』の流れを組むメロドラマ的な模様。予告編は下記に。

前作のサウンドトラックからは、エリー・ゴールディング「Love Me Like You Do」(→YouTube)、ザ・ウィークエンド「Earned It (Fifty Shades of Grey)」(→YouTube)が共に最高3位を記録。特にザ・ウィークエンドにとっては、その直前にアリアナ・グランデとの「Love Me Harder」(→YouTube)で米シングルチャート初のトップ10入り(最高7位)を果たしたことと「Earned It…」のヒットが今に至る大ブレイクのきっかけになったと考えられることから、今回の映画のサウンドトラックも大注目といえるでしょう。

w-inds.の次のシングルが痛快過ぎる

w-inds.が来年1月11日にリリースするシングル「We Don't Need To Talk Anymore」がとにかく格好いいのです。

橘慶太さんは曲についてコメント(ツイート)しています。

歌い出しは12週連続で米ビルボードを制したザ・チェインスモーカーズ feat. ホールジー「Closer」(→YouTube)を彷彿とさせ(同曲の公開は7月でした)、他にも「Sorry」「Let Me Love You」「Cold Water」等ジャスティン・ビーバー絡みの作品も想起させるのですが、単にその流行りに乗っかっているだけではないのがミソ。BPMを上げたり、またはトロピカルハウス~EDMの流れにあってサビ(♪More~の連続の部分)にボーカルを挿入するところに、流行を邦楽に巧く咀嚼していると実感します。

トロピカルハウス~EDMも、また同じく今年アメリカを席巻したレゲエテイストのR&Bも、邦楽での落とし込みをほとんど耳にしなかったゆえ、「We Don't...」の登場は嬉しいですし、なによりメンバーの橘慶太さんによるソングライティング&プロデュースというのが実に痛快ですね。

 

ちなみにその橘さんが賞賛している作品が、三浦大知「Look what you did」。JACK Ü「Where Are Ü Now」(→YouTube)以降の流れをUTAさんと三浦さんが巧く踏襲したダンスチューン。

同じ事務所同士で仲間でありライバルが存在することで、双方が音楽性を高め合い切磋琢磨出来るという環境は実に素晴らしいのではないでしょうか。

以前、ヴィジョンファクトリーの実力と、そして決して使ってはいけない”干される”という言葉(2015年1月14日付)で書きましたが、たとえば『ミュージックステーション』(テレビ朝日系 金曜20時)などが、様々なしがらみを自ずと乗り越え、実力の高いw-inds.をきちんと出演させてほしい...というのが来年の私の願いです。

日本に”多様性”の考えを根付かせるには

先週金曜の成宮寛貴さんの引退の件以降、いろんな考えが浮かんで仕方ありません。

ツイートに自身の考えを幾度となく刻んだのですが、その中でたどり着いた結論は【日本に”多様性”という考えは根付かないのではないか】という悔しさでした。彼の薬物面での疑惑が晴れたとしても(実際は自身が用意したキットによるものゆえ100%断言出来ないのではという思いは正直あります)、彼が言及されたくないプライバシーを嘲笑目的で踏みにじられたわけです。仮に彼がマイノリティだったとして一体何の問題があるのでしょう? そんな社会に多様性の醸成どころか萌芽すらあり得ません。

”多様性”は今年のリオデジャネイロオリンピック、そしてパラリンピックのテーマでした。しかしオリンピックの成功後は日本選手の活躍ばかりが報じられ、またその意義そのものが”多様性”の尊重といえるパラリンピックの報道時間がオリンピックに比べて如実に少なく(祝賀パレードでのパラリンピアンの報道割愛という、あまりに酷い行為もあったと聞きます)、”多様性”について報じ論じるところがほぼなかったように見受けられます。しかも開催前は開催自体危ういのではという報道が散見され、都合よく、またマイナス面を過度に吹聴しながら成功裏に終わった後はその報道を反省しない(出来ない)というのがメディアなのだということを痛感します。

 

マイノリティには様々な種類があります。障害の有無、恋愛対象(異性愛と同性愛、等)という数の大小のみならず、自分の考えに対して他者(の考え)もマイノリティだといえるかもしれません。自分の考えになんら疑いの余地がないと思うとき、そんな正しい自分に対する相手の部分を欠陥だと思うとき、人は他者を受け入れなくなり嘲笑すらしてしまう...その流れの果てにあるものが虐めだと考えています。虐めは、個人が抱く自分勝手な優劣を、集団化することでそれが社会的に正しいと思い込むことにより歯止めが効かなくなるという最悪の原理。数的な集団化に代わって大きな力がその役割を担う場合もあり、それがメディアであることも少なくありません。

 

そういう悪しきメディアの側面が、今回成宮さんを苦しめたことは想像に難くありません。”引退はおかしい”というご意見番的芸能人の声も散見されますが、芸能人ほど神経が図太くないとやっていけないのだろうなと思って悲しくなります。ご意見番の声だって、他者の立場になろうとしないものの象徴ではないでしょうか。

 

 

虐めに加担する人には是非、昨日の『めちゃめちゃイケてる!』の放送を観て欲しいと切に願います。いや、自分のやっていることが虐めと気付かない人も少なくないだろうことを踏まえれば、是非とも多くの人に観ていただきたいものです。かくいう自分自身、フジテレビ系圏外の地域在住でリアルタイムで観ることが出来てはいないゆえ、推薦しても説得力がないかもしれませんが、SNS等での評判をみれば内容の好さは伝わってくるというものです。今回の主役のひとり、キングコング西野亮廣さんのプロローグ(ブログ)を観てから本編を観ていただければ、尚の事理解は深まるでしょう。

 

番組の最後、ナレーションで語られたのは【好きにならなくとも相手のことを理解しようとする、それこそが大切なのでは】という問いかけでした。西野さんとナインティナイン岡村隆史さんが犬猿の仲になった原因である”本人に直接確かず、疑念を疑念のままにしておくこと”の払拭も必要ですし(そしてその原因に第三者が関わる場合、当事者に謝罪しないといけないと考えます。この場合、逃げるは恥だし卑怯なり、です)、それも含め、何もかも相手が悪いなどと決めつけず一瞬でも相手を嫌う自分自身を振り返れば、相手の立場を想像してみれば見えてくるものがあるはずです(今回の『めちゃイケ』ではその振り返りがお面の使用という形でしたが)。そうすれば相手に対し、共感や諸手を挙げて賛同とまでいかなくとも、まずは解ることが出来る、そして同時に自分にはない考えや立場の人なぜ罵倒するのかの理由がいかにあやふやであり、罵倒する自分自身のいやらしさにも気付くはずです。

理解出来ないことだってあるかもしれません。でも、理解しようとするという姿勢だけでも相手にとっては十分嬉しいはず。問題なのは理解しようとしないという姿勢なのです。仮に理解しようとしないのであれば、蔑視感情を表に出さないで欲しいと思います。

 

 

最後に、こういう心理実験的なものを、笑いを交えながらきちんと考えさせる作品に仕上げたフジテレビバラエティ班の実力はまだまだあると思います。

そして成宮さんには、これまで幾多もの素晴らしい作品を提供してくださったことを心より感謝申し上げます。引退は非常に悔しいですが、今後新しい場所で活躍することを心から願っています。

放送局は辞めたアナウンサーへ冷たすぎるのではないか

木曜の夕方から下記エントリーへのアクセスが急増していました。

理由を探るうちに、木曜放送のエフエム青森『ラジモット!』にて里村アナウンサーが平山早苗アナウンサーの訃報に接したことが原因だと判明しました。当日は仕事で聴くことが出来ず、またエフエム青森radiko未加入のためタイムシフト聴取で確認することも出来ませんが、接していただいたことに安心感を抱いたのは事実です。

 

Twitterにて、今回の死去に伴い、局が新聞社の死亡広告欄に掲載したとの話をいただきました。たしかに代表取締役社長名義での掲載を確認出来たのですが、そこには”弊社元放送部専任部長”の文字が。”元”ということは既に退社されたということなのかと勘繰ってしまいましたが真相は判りません。匿名掲示板にて”元”となる根拠は一応確認出来ましたが。

 

とはいえ…仮に”元”が原因で、今に至るまでネットにおいて”接しない”状況が続いているのだとしたら...さすがに看過出来ません。接しないことがマナーだという局の意向だとしたら、ではなぜ放送ではOKで通信ではNGかと思ってしまいます。下記は今朝の段階。

エフエム青森ホームページトップ(追悼の意等の記載なし)

f:id:face_urbansoul:20161210074223p:plain

・『ラジモット!』(局唯一の生ワイド番組)ブログ

 (”つぶやき”は番組Twitterアカウントのツイートの転載)

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『ラジモット!』Twitterアカウントはこちら。1週間ぶりに再開したツイートにおいて、昨日は里村アナウンサーも参加していましたが、平山アナウンサーへの言及はありませんでした。

 

そしてなによりも辛いのは、パーソナリティ一覧から平山早苗アナウンサーのプロフィールが消えてしまったということ。

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無論、いつかは消されるということは解っていますが、ホームページで追悼の意を示さないままの外し方には違和感が拭えません。エフエム青森は、ホームページの古臭さやradiko未加入等、未だネットへの(言い換えればリスナーに対して)アンフレンドリーな状況が続いていますが、通信での報告は不要と考えるならば非常に失礼なやり方だと思います。

 

 

で、今回の(特に最後のパーソナリティ一覧からの消去の)件においてあらためて痛感したのは、エフエム青森に限らず放送局全体が退職したアナウンサーに冷たいのではないかということ。プロフィール一覧からの消去は自然だと割り切ったとしても、たとえば退職する本人が退職直前にアナウンサーブログ等で感謝の意を示したところで、退職日の翌日にはバッサリまるごと消されてしまうというのはさすがに心がないと思ってしまいます。また、これは退職後の話ではありますが、青森朝日放送において対馬アナウンサーから元アナウンサー(現在フリー)の加田晶子さんに対する弄りが目に余るものがあり、ここで苦言を呈した次第。

そういえば、青森テレビ不定期配信するポッドキャスト【podATV】でも退職したアナウンサーへの弄りが目立ちます。愛あるものもあるかもしれませんが、そうではないものも多い印象があり素直に笑えないのは自分だけでしょうか。

podATV│ATV青森テレビ

 

さらに、退職時のみならず入社時から既に冷遇されているという話も。最近では、局のアナウンサーになったところで収入面が確約されたわけではなく、複数年の契約社員として入社し契約満了時に退社を余儀なくされるというケースも多いと聞きます。一例としてこういう記事が。

NHKは元から契約期間が決まっているとは聞きますし、民放局については3年、早ければ2年でということも。アナウンサーとしての芽が出なければ仕方のないことかもしれませんが、明日が見えない契約社員という形ではモチベーションが上がらないでしょうし、そして同時に、そういう芽が出ないかもしれない人材を雇うに至った人事の問題だって実はあるはずですよね。

 

これらは全て若手アナウンサーに対してのものですが、今回のエフエム青森のようにベテランの現役アナウンサーに対してまでも冷遇措置を採るのであるならば、局による程度の差異はあれども放送局全体の冷酷さを改善させることこそ重要なのかもしれません。

ビルボードジャパン年間シングルチャート首位への違和感と、チャートポリシーの変更

日米のビルボードが、2016年の年間チャートを公開しました。

日本時間の昨日発表されたアメリカのチャートはこちら。

全チャートは下記に。

Charts - Year End | Billboard

 

そして日本についてはアメリカに先駆けて公開されています。今日はこのビルボードジャパンのシングルチャート(HOT100)について言及してみます。

シングルチャートを制したのは、AKB48「翼はいらない」でした。2位のRADWIMPS前前前世」、3位の星野源「恋」に僅差まで迫られながらも、多大なシングルCDセールスが大きく功を奏した形です。

「翼はいらない」合計ポイント178788.50に肉薄したのが、今年度下期にリリースされたRADWIMPS前前前世」の176963.20と、172332.81ポイントを上げた星野源「恋」だ。

【ビルボードジャパン年間チャート 2016】様々な話題があった2016年の音楽シーンをチャートで振り返る | Special | Billboard JAPANより

「翼はいらない」について、記事では『CDセールスの数字のみが喧伝されがちなAKB48だが、セールスが牽引する形で他指標でも上げている』としていますがそれでも『ルックアップ49位、Twitter89位』というのは寂しい限り。近いうちにCHART insightの年間チャート版が登場すると思いますが、下記年間トップ10にランクインしたピコ太郎「ペンパイナッポーアッポーペン」や、AKBグループのライバルのひとつとしてデビューしながらその攻めている歌詞などが評価を集めシングルCDセールス以上に世間に浸透した欅坂46サイレントマジョリティー」に比べて、「翼はいらない」の認知度は決して高いとはいえないというのが私見です。

 

ビルボードジャパン2016年年間シングルチャートはこちら

・同 年間シングルCDセールスチャートはこちら

 

敢えてシングルCDセールスチャートを記載したのは、【(年間シングルチャートの順位)>(シングルCDセールスチャート)の順位】が成立する曲は社会への認知度・浸透度が高い、という仮説を立てたゆえ。「翼はいらない」は”>”とはなりません(両チャートを制しているゆえ当たり前ではあるのですが)。また、先週金曜の『ミュージックステーション』(テレビ朝日系 金曜20時)で発表された今年の1曲ランキングに「前前前世」「恋」「ペンパイナッポーアッポーペン」「サイレントマジョリティー」が登場していながら「翼はいらない」がトップ10に入らなかったこともあって(詳細はミュージックステーション【今年の1曲ランキング】が示した”リアルなヒット曲”(12月5日付)に掲載)、個人的には「翼はいらない」の首位に懐疑的な部分は否めないのです。無論、チャートがフェアに行われていると判っていても。

ゆえに昨日このようなことをツイートしました。

そう書いた矢先、ツイートをやり取りさせていただいた方から紹介してくださったのが、ビルボードジャパンのチャートポリシー変更でした。自分がきちんと調べていなかった恥ずかしさは正直ありますが、予想以上のスピードで変革するビルボードジャパンの対応は見事としかいいようがなく、恥ずかしさ以上に嬉しくなってしまいました。

Billboard JAPANの総合ソング・チャート【Billboard JAPAN HOT 100】に、GfK Japan(ジーエフケー ジャパン)が提供する音楽聴き放題(ストリーミング)の配信実績の合算がスタートした。ストリーミングの販売実績を含めた総合ソング・チャートが発表されるのは日本で初めての試みであり、時代にあわせてチャートをリニューアルし続けてきたBillboardにとって1つの到達点と言える。

GfKジャパンが提供する定額制音楽配信サービスのデータはApple Music、AWAそしてLINE MUSICという、日本で徐々に浸透しているサービス。今後はSpotifyも入ってくるかもしれません。アメリカではストリーミング(定額制音楽配信サービスおよび動画再生)が主要指標の一つとなっていますが、日本でこれまで定額制音楽配信サービスの部分を担ってきたのがプチリリの歌詞表示回数に基づく推定のみでしかなかったため、ポリシー変更によって、よりダイレクトに世間のヒットを反映する形になるでしょう。記事の最後にある【Billboard JAPAN HOT100とは】に、チャートを構成する各指標が掲載されていますので是非ご確認ください。

 

 

今回のチャートポリシー変更により、ビルボードジャパンにもっと注目が集まって欲しいと思います。個人的にはシングルCDセールスの比重はもう少し下げてもいいのではないかとは考えるのですが、とはいえアイドル等にとってはファン共々、CDを所有することに価値があるわけですからそれはしばらくやめないでしょうし、レコード会社にとっても売上が他のミュージシャンの育成等に回せるわけで、シングルCDセールス(チャート)が100%悪ではないとは思います。ならば、アイドル等シングルCDセールスの比重が強い歌手の皆さんには、シングルCDセールス以外の指標を伸ばし社会的ヒットを作り上げることに尽力していただきたいと思うのです。「サイレントマジョリティー」然り、シングルCDセールスポイント未加算ながら年間23位にランクイン、Mステ”今年の1曲”チャートでもトップ10入りしたAKB48365日の紙飛行機」のような好例があり、それらはメディアやカラオケなどで今後長きに渡り親しまれていくわけですし、人々の記憶により深く刻まれていくのですから。また、定額制音楽配信サービスの拡充により、いよいよジャニーズ事務所のネットアンフレンドリーな姿勢が時代遅れのレッテルを貼られてしまうように思います。日本では仕方ないよねで済むかもしれませんが(ただその馴れ合いと言えなくもない姿勢は個人的に好きではありません)、事情を知らない海外から見たらおかしいと思うのは当然のことです。

 

 

最後に、ビルボードジャパンのチャートポリシーの変更はもっと強く謳われないと、チャートが社会的ヒットの鑑になり得ることやチャート自体の認知度は上がらないでしょう。ビルボードジャパンの企業努力をより強めることを切に願います。

ピコ太郎、RADIO FISHがYouTube総決算企画に参加

今年の世界的な流行をふんだんに取り入れた、【YouTube's 2016 rewind】が現地時間の昨日公開されました。”rewind(リワインド)”とは”巻き戻し”の意味であり、今年の総決算と言い換えてよいでしょう。

出演者も豪華ながら、日本のYouTuberやピコ太郎さん、RADIO FISHも参加。ピコ太郎さんに至っては、米ビルボード記事でのキャプチャ画面にまで登場というのだから驚きです。

この6分の大作のBGMで使われているのは今年のヒット曲ばかりですが(そして「PPAP」も効果的に挿入)、ジャスティン・ビーバーやフィフス・ハーモニー、ザ・チェインスモーカーズそしてリバイバルヒットとなったゴースト・タウン・DJ's「My Boo」を心地よくミックスしているのはなんとメジャー・レイザー。自身もジャスティン・ビーバーを迎えた「Cold Water」が大ヒットしたいわば”今年の顔”のひとり。その彼が自身の曲を封印して?この総決算企画に参加というのですから、なんて豪華なのでしょう。

 

”リワインド”には現在ヒット中のアリアナ・グランデ feat. ニッキー・ミナージュ「Side To Side」やカニエ・ウェストなど、様々なミュージック・ビデオのパロディが登場。パンダの被り物ってデザイナー「Panda」からでしょうか? こういうセンスの好さはいかにもアメリカらしいなと実感します。舞台裏も合わせてどうぞ。

 

それにしても、日本の音楽が世界の流行に加わることが出来るというのは、数年前の音楽業界では考えられなかったのではないでしょうか。”いやいやピコ太郎さんやRADIO FISHは本業お笑いだから”という声もあるかもしれませんが、もしかしたら、だからこそ音楽業界の慣例という壁をひょいと飛び越えて世界的な潮流に乗れたのではないかと。これを機に、日本の音楽業界が壁の越え方を覚え、来年は日本の優れた音楽がもっともっと世界中に羽ばたいてほしいと思いますし、日本の音楽業界が市場を拡げるなら、日本の枠にとらわれないことこそが重要ではないでしょうか。