イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

『重版出来!』を視聴率の面だけで失敗だと決めつけた記事を強く疑問視する

自分の中で、この記事を読んでからというもの、記事の出元に対する信頼が急落しました。少し前のものですが取り上げないと気持ちがすっきりしないので敢えて。

見出しの”悪意”たるや。

メディアにとっては利益を上げるための最大の要素は”数字を上げること”でしょう。その数字(新聞社ならば部数、テレビならば視聴率)が思うような成果を上げられなかったならばたしかに期待した分...と思われても仕方ありません。特に今回槍玉に挙げられた『重版出来!』(TBS系)については、重版がかかることが重要としてそこに至るまでの奔走を描き数字(部数)が重要という側面があったため、余計にそう思われるかもしれません。尤も物語は、”作品の質を上げることで最終的には数字も伸びその結果重版がかかる”という信念が貫き通されていますが。とはいえ、”期待はずれ”という文言は、記者が視聴率という数字にばかりこだわることを如実に示すのみならず、その悪意ある記事の掲載を許可した者も問題であり、新聞社の社としての人間性を疑うに十分な見出しだと思えてなりません。

 

数字的にはたしかに好いとはいえなかった『重版出来!』ですが、自分はここ最近の連続ドラマの中でもベスト級の作品だと思っていますし、Twitterでは毎回放送が終わる度にトレンドのトップに”重版出来”が登場することから、数字の低さと人気は比例しないのではと考えていました。放送終了後、その考えが正しかったことを裏付ける情報が登場し、多くの方が同じ思いを抱いていたのだと深く安堵した次第。

重版出来!』は民放発の春の連続ドラマの中で平均視聴率では10位だったものの、データニュース社調査による満足度・見たい率では1位、録画数では4位を記録。特に満足度においては『初回から最終回まで全話見た人の比率が高く、しかもその人々の満足度は4.4以上が頻発している。ドラマの平均点は3.6~3.7ぐらいゆえ、4.4は極端に高い数字』(記事より)と、筆者も驚くほどの数値を叩き出しました。実は真裏で放送された『僕のヤバい妻』(フジテレビ系)も『重版出来!』とほぼ同じ動きをしており、この2つのドラマが”質では突出してながら数字(視聴率)は伴っていない”ということがよく解ります。となると、数字は単なる一指標でしかないと断言してもよいのではないでしょうか。

(ちなみに記事については、一部納得出来ないところもあります。特に、いわゆる職場ドラマが感銘を与え続けた理由として挙げていた『仕事への意識の高い高学歴・高所得層の心を捕まえていた』という点。高所得者というところにひどく引っかかりました。)

 

いや、実は『重版出来!』は視聴率の面でも、失敗したとは言い難いのでは...とも思うのです。

――「料理は真心だ」は、その後も劇中で結構出てきたキーの言葉でしたよね。7月にはまた新しいドラマが始まりますが、期待はいかがですか。

(中略)

火曜22時は武井咲さんと滝沢秀明さんの『せいせいするほど、愛してる』ですが、この枠もだいぶ定着してきたと思いますので、7月も期待したいですね。

重版出来!』の平均視聴率は8.02%。2014年4月に火曜22時枠のドラマが新設されて以降、同枠における平均視聴率では歴代3位の数字なのです。以前、同枠の『ダメな私に恋してください』(TBS系)が視聴率低迷としてバッシングされた際、その記事に違和感を覚え同枠視聴率を調べたことがあります。それが下記エントリー。

たしかに、数字自体は高いとはいえませんし、またNHKが同時間帯に放送していた連続ドラマ枠をこの春から金曜22時台に移行したことで同時間帯での連続ドラマのバッティング数が減ったことを踏まえれば、もう少し高くなってもおかしくはなかったかもしれません。いや、もしかしたら火曜22時台のドラマ枠の潜在視聴率は合わせて15~20%弱では?と考えると、必ずしもこの時間帯に連続ドラマ枠を設けること自体正しくないのかもしれません。が、連続ドラマの発信を続けるTBS側が『だいぶ定着』というのであれば、今回の『重版出来!』は局にとってまずまず成功していたのではと考えるのが自然なことではないかと。単に目先の数字だけで失敗と決めつけるのは早計なのです。

 

重版出来!』は、局側も一定の成功と考え、そして高い満足度を誇っていることも証明されたように思います。また漫画家の皆様方のツイート等を見る限り、ドラマで描かれた漫画雑誌の環境が結構リアルであったことも解りました。原作漫画が続いていることを踏まえれば、個人的には第2弾を用意して欲しいと切に願います。仮に数字の面で局側が及び腰になっているとしたならば、過去に第1弾がそこまで数字を獲れなかったものの第2弾やスペシャルドラマを放送したところ数字が跳ね上がった作品群を参考にしていただきたいものです。

(たとえば、『白線流し』(フジテレビ系)の連続ドラマ平均10.9%→スペシャル第1弾19.3%(その後も第5弾まで放送しいずれも14%強を記録)。または『古畑任三郎』(フジテレビ系)の連続ドラマ第1弾平均14.2%→第2弾平均25.3%、などが挙げられます。)

第2弾を切望する声は非常に多いです。TBS側にはその意を汲んでいただきたいと強く希望します。