イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ペンタトニックスに取り入れて欲しかったマイケルの名曲

今週はジャクソン家の話題が続きます。ジャネット・ジャクソンによる久々の新曲公開(ジャネット新曲公開、そして影響源と思しき曲達(6月23日付)にて記載。そして同曲は日本でもiTunes Storeにて配信がスタート)に続いて、兄マイケルについて。

 

Daft Punk (邦題:ダフト・パンク・メドレー)」にて今年グラミー賞(Best Instrumental Arrangement)を受賞したアカペラグループ、ペンタトニックスがマイケルの数多ある名曲を紡いだ作品を公開しました。

公開は3日前、そして今日がマイケルの命日にあたります。

素晴らしいカバーであることに間違いなく、ノーカット(長回し)のため失敗が許されないにも関わらずここまで表現豊かにこなすのは流石の一言。それと、画面右下の”おにぎりくん”が気になったり。

 

ただ...と否定的な表現を用いるのは彼らに失礼なのを承知で書くならば。ペンタトニックスの日本公式Twitterアカウントでは、『マイケル・ジャクソンの栄光の楽曲を、驚異のアカペラでメドレーカバー!』とつぶやいているのですが、ここで用いられているのは1995年リリースの『HIStory: Past, Present and Future, Book I』までの作品であり、しかも同アルバムからは1曲のみが短いフレーズで用いられるのみ。ゆえに、『HIStory...』以降の作品群はほぼ用いられていないわけで、そこに強く引っ掛かってしまいました。

 

「Evolution of MichaelJackson」に用いられた曲は以下の通り。

ジャクソン5時代:

「I Want You Back」~「ABC」~「I’ll Be There」

・ソロ:

「Ben」

ジャクソン5~ジャクソンズ時代:

「Dancing Machine」~「Shake Your Body (Down To The Ground)」

・以下はソロとして。『Off The Wall』より:

「Don’t Stop 'Till You Get Enough」~「Rock With You」

・『Thriller』より:

「Billie Jean」~「Beat It」~「Wanna Be Startin’ Somethin'」~「Human Nature」~「Thriller」

・『Bad』より:

「I Just Can’t Stop Loving You」

・再び『Thriller』より:

「P.Y.T.(Pretty Young Thing)」

・再び『Bad』より:

「Bad」~「The Way You Make Me Feel」~「Man In the Mirror」~「Dirty Diana」~「Smooth Criminal」

・『Dangerous』より:

「Black Or White」~「Remember The Time」~「Heal The World」

・『HIStory: Past, Present and Future, Book I』より:

「You Are Not Alone」

・再び『Dangerous』より:

「Will You Be There」~「Heal The World」(再び)

R・ケリーが得意とする神聖なバラード、「You Are Not Alone」はワンセンテンスのみの引用。同じアルバムから先行シングルとしてリリースされた妹ジャネットとの「Scream」は、全米最高5位を記録しながら使用されませんでした。そして生前最後のオリジナルアルバムとなった『Invincible』(2000)からの曲は、全米最高10位となったロドニー・ジャーキンス作の「You Rock My World」も未使用、という状況に。

「Evolution Of Michael Jackson(マイケル・ジャクソンの進化)」と題された作品で彼の後期の作品群がほぼ使われなかったという事実には正直引っ掛かってしまいました。マイケル側に使用を認められなかったとは考えにくいため(もしそうならばこのメドレー自体あり得なかったでしょう)、もしかしたら後期のマイケルは進化ではなく成熟期なんだ、とペンタトニックス側が捉えたのかもしれません。またはチャート成績において後期の作品群が以前ほどの成功を収めていなかったために見送ったのかもしれません。が、仮にですが、後期の曲が単に魅力的ではないので見送ったのだとしたら、(無論これはネガティブ過ぎる私見ですが)非常に残念です。

 

これは個人的な思い入れが強く反映されていると言われればそれまでですが、ペンタトニックスにはこの美しいバラードを織り込んで欲しかったと思っています。『Invincible』からのシングル、「Butterflies」です。

全米最高14位。大ヒットには至っていないように見えますが、実はこの曲、シングルCDでのリリースはなく、あくまでアメリカのラジオ向けのシングルでした(同曲のWikipediaより)。そう考えると、エアプレイだけで14位まで上昇したというのは曲の美しさ、そして曲をより繊細に、そして流麗に表現するマイケルの歌ヂカラゆえ、と言っても過言ではないでしょう。

同曲のプロデューサーはマイケル自身、そしてアンドレ・ハリス。そしてアンドレと共にソングライトを手掛けたのはフロエトリーのマーシャ・アンブロージアス。後にフロエトリーのアルバムにてセルフカバーされています。

フロエトリーはシンガーのマーシャと、ラッパーのフロエシストによる女性二人組。2006年末に突然の解散、不仲だと噂されていたのですが、昨年末に突如の共演を果たし(8年ぶりにナタリーと共演したマーシャ、フロエトリー復活に前向き | bmr(2014年12月30日付))、そして現在はリユニオンツアーの真っ最中なのです。現地時間の6月24日はカリフォルニア州アナハイムにてコンサート。

そしてこのツアーでは「Butterflies」を披露。観客が撮影した動画がアップされていました。

音は悪いですが...マーシャの声の伸びやかさは素晴らしいの一言。CDよりもさらに美しくなっているように思います。そしてこのパフォーマンス、ラストには嬉しいサプライズが! これは間違いなく、マイケルへのトリビュートですね。

 

ペンタトニックスもフロエトリーも、それぞれ異なったアプローチでマイケルをトリビュートしており、あらためてマイケルの遺した名曲群に触れる機会をいただくことが出来たことに感謝すると共に、フロエトリーが生んだ美しい「Butterflies」という名曲を、いつかペンタトニックスがカバーしてほしいと切に願うばかりです。