先月下旬にリリースされた米映画『Think Like A Man Too』のサントラが、メアリー・J・ブライジ(Mary J. Blige)の実質的なオリジナルアルバムと聞いて驚いた方は少なくないでしょう。そのアルバムの1曲目が「A Night To Remember」。シャラマー(Shalamar)のカバーです。
ヴォーカルに余裕すらみられるカバー。格好いいです姐さん。ちなみにオリジナルはコチラ。
メアリーといえば、最近ではディスクロージャー(Discrosure)の「F For You」に客演参加したり、そのディスクロージャー作に登場しているサム・スミス(Sam Smith)の「Stay With Me」のスタジオライブにデュエット相手として招かれたりと、八面六臂の活躍を見せていて、R&Bの枠を超えてアメリカで信頼されるミュージシャンとしての地位に至っているんだなあと実感。もしくはレーベルが有望な才能を売り出すべくタッグを組ませて知名度を上げるということもあるでしょうが、それも信頼があるからこそなんでしょう。
さて、メアリーはオリジナルアルバムを出すごとにカバー曲を少なくとも1曲は用意しています。加えて、企画盤(ライブ盤・バラード集等)やトリビュート(その揺るぎない信頼ゆえ招かれることが多いのでしょう)、サントラでもカバー曲を担当しており、少なくとも20曲以上存在します。ではその中から、「A Night To Remember」的なダンスクラシックスを列挙してみましょう。
・Mary J. Blige「Never Too Much」(from『So Amazing : An All Star Tribute To Luther Vandross』)
オリジナル:ルーサー・ヴァンドロス(Luther Vandross)
良質トリビュート盤の冒頭を飾る、ジャム&ルイス(Jam & Lewis)プロデュース作品。オリジナルではきらびやかなアレンジにヴォーカルが軽妙かつ流麗に乗っかるのに対し、メアリー版はピアノを中心とした生音がはっきり立っているという心地よさがありますね。
・Mary J. Blige feat. Will Smith「Got To Be Real」(from Soundtrack『SharkTale』)
オリジナル:シェリル・リン(Cheryl Lynn)
あまりにも有名なダンスクラシックスを、映画に(声で)出演するウィル・スミス(Will Smith)を招いてカバー。新たなメロディが加えられてるのでサンプリング的な要素が高めかと。その意味では、サンプリングか偶然かはともかくとしてドリカムの「決戦は金曜日」のアプローチを思い出し、今更ながらいい作品だったなあと振り返ったり。
・George Michael & Mary J. Blige「As」(from『Mary』& George Michael's『Ladies & Gentlemen : The Best Of George Michael』)
オリジナル:スティーヴィー・ワンダー(Stevie Wonder)
そういえばありましたね、複数のジョージ&メアリーが登場するミュージックビデオ。「As」をデュエットで再解釈するという方法論も面白いと思いつつ、深く広い意味での愛の歌でメアリーをパートナーに招いたジョージの先見の明には驚かされます。今のメアリーがジャンルを超え、アメリカを代表する歌い手になった、そのターニングポイントになったのかなあと。大げさかもしれませんが。
ちなみにメアリーはその後、「Overjoyed」、「Someday At Christmas」と、スティービーの曲をカバーしています。
・Mary J. Blige「Let No Man Put Asunder」(from『Mary』)
オリジナル:ファースト・チョイス(First Choice)
オケはシンプルながらメアリーのゴリゴリとした熱気で最後まで持っていくたくましい曲。彼女が自らの内面や傷をさらけ出した(目の下にある傷を初めて見せたジャケットも話題となった)『Mary』のラストを飾る一曲となっています。
彼女のカバー曲を集めてみると、実のところミディアム~スロウが多く、ダンスクラシックスはさほど多くなかったのに加え、近年はU2「One」やレッド・ツェッペリン(Led Zeppelin)「Stairway To Heaven」といったロックにも挑んでいるのですが、彼女の声質がより活き、より格好良く映えるのは今回列挙したダンスクラシックスなんじゃないかと思ったりしています。ぜひ一度生で歌声の洪水に浸ってみたいものです。