日米のビルボードが、2016年の年間チャートを公開しました。
日本時間の昨日発表されたアメリカのチャートはこちら。
全チャートは下記に。
・Charts - Year End | Billboard
そして日本についてはアメリカに先駆けて公開されています。今日はこのビルボードジャパンのシングルチャート(HOT100)について言及してみます。
シングルチャートを制したのは、AKB48「翼はいらない」でした。2位のRADWIMPS「前前前世」、3位の星野源「恋」に僅差まで迫られながらも、多大なシングルCDセールスが大きく功を奏した形です。
「翼はいらない」合計ポイント178788.50に肉薄したのが、今年度下期にリリースされたRADWIMPS「前前前世」の176963.20と、172332.81ポイントを上げた星野源「恋」だ。
・【ビルボードジャパン年間チャート 2016】様々な話題があった2016年の音楽シーンをチャートで振り返る | Special | Billboard JAPANより
「翼はいらない」について、記事では『CDセールスの数字のみが喧伝されがちなAKB48だが、セールスが牽引する形で他指標でも上げている』としていますがそれでも『ルックアップ49位、Twitter89位』というのは寂しい限り。近いうちにCHART insightの年間チャート版が登場すると思いますが、下記年間トップ10にランクインしたピコ太郎「ペンパイナッポーアッポーペン」や、AKBグループのライバルのひとつとしてデビューしながらその攻めている歌詞などが評価を集めシングルCDセールス以上に世間に浸透した欅坂46「サイレントマジョリティー」に比べて、「翼はいらない」の認知度は決して高いとはいえないというのが私見です。
・同 年間シングルCDセールスチャートはこちら
敢えてシングルCDセールスチャートを記載したのは、【(年間シングルチャートの順位)>(シングルCDセールスチャート)の順位】が成立する曲は社会への認知度・浸透度が高い、という仮説を立てたゆえ。「翼はいらない」は”>”とはなりません(両チャートを制しているゆえ当たり前ではあるのですが)。また、先週金曜の『ミュージックステーション』(テレビ朝日系 金曜20時)で発表された今年の1曲ランキングに「前前前世」「恋」「ペンパイナッポーアッポーペン」「サイレントマジョリティー」が登場していながら「翼はいらない」がトップ10に入らなかったこともあって(詳細はミュージックステーション【今年の1曲ランキング】が示した”リアルなヒット曲”(12月5日付)に掲載)、個人的には「翼はいらない」の首位に懐疑的な部分は否めないのです。無論、チャートがフェアに行われていると判っていても。
ゆえに昨日このようなことをツイートしました。
僅差での勝利とはいえ、シングルCDセールスが抜きん出ていて他指標が伴わない作品が上位に来ても、その曲が「恋」などに比べて世間での認知度は低いと考えます。
— Kei / BreastKonaka (@Kei_radio) 2016年12月8日
個人的には次のチャートポリシー変更時に、シングルCD指標の比率は下げても良いのではと思いますね https://t.co/KYS3F1fTsW
ビルボードは必ずしも、オリコンを踏襲しているわけではないと思います。アメリカでは数年に一度ポリシー変更を実施し、新指標を追加したり指標毎の比率を変更、日本でも数年に一度変更します。
— Kei / BreastKonaka (@Kei_radio) 2016年12月8日
来年中に定額制音楽配信サービスの再生数が追加され、シングルCDセールスの比重が減ると確信しています https://t.co/iaaaOLHIMh
そう書いた矢先、ツイートをやり取りさせていただいた方から紹介してくださったのが、ビルボードジャパンのチャートポリシー変更でした。自分がきちんと調べていなかった恥ずかしさは正直ありますが、予想以上のスピードで変革するビルボードジャパンの対応は見事としかいいようがなく、恥ずかしさ以上に嬉しくなってしまいました。
Billboard JAPANの総合ソング・チャート【Billboard JAPAN HOT 100】に、GfK Japan(ジーエフケー ジャパン)が提供する音楽聴き放題(ストリーミング)の配信実績の合算がスタートした。ストリーミングの販売実績を含めた総合ソング・チャートが発表されるのは日本で初めての試みであり、時代にあわせてチャートをリニューアルし続けてきたBillboardにとって1つの到達点と言える。
GfKジャパンが提供する定額制音楽配信サービスのデータはApple Music、AWAそしてLINE MUSICという、日本で徐々に浸透しているサービス。今後はSpotifyも入ってくるかもしれません。アメリカではストリーミング(定額制音楽配信サービスおよび動画再生)が主要指標の一つとなっていますが、日本でこれまで定額制音楽配信サービスの部分を担ってきたのがプチリリの歌詞表示回数に基づく推定のみでしかなかったため、ポリシー変更によって、よりダイレクトに世間のヒットを反映する形になるでしょう。記事の最後にある【Billboard JAPAN HOT100とは】に、チャートを構成する各指標が掲載されていますので是非ご確認ください。
今回のチャートポリシー変更により、ビルボードジャパンにもっと注目が集まって欲しいと思います。個人的にはシングルCDセールスの比重はもう少し下げてもいいのではないかとは考えるのですが、とはいえアイドル等にとってはファン共々、CDを所有することに価値があるわけですからそれはしばらくやめないでしょうし、レコード会社にとっても売上が他のミュージシャンの育成等に回せるわけで、シングルCDセールス(チャート)が100%悪ではないとは思います。ならば、アイドル等シングルCDセールスの比重が強い歌手の皆さんには、シングルCDセールス以外の指標を伸ばし社会的ヒットを作り上げることに尽力していただきたいと思うのです。「サイレントマジョリティー」然り、シングルCDセールスポイント未加算ながら年間23位にランクイン、Mステ”今年の1曲”チャートでもトップ10入りしたAKB48「365日の紙飛行機」のような好例があり、それらはメディアやカラオケなどで今後長きに渡り親しまれていくわけですし、人々の記憶により深く刻まれていくのですから。また、定額制音楽配信サービスの拡充により、いよいよジャニーズ事務所のネットアンフレンドリーな姿勢が時代遅れのレッテルを貼られてしまうように思います。日本では仕方ないよねで済むかもしれませんが(ただその馴れ合いと言えなくもない姿勢は個人的に好きではありません)、事情を知らない海外から見たらおかしいと思うのは当然のことです。
最後に、ビルボードジャパンのチャートポリシーの変更はもっと強く謳われないと、チャートが社会的ヒットの鑑になり得ることやチャート自体の認知度は上がらないでしょう。ビルボードジャパンの企業努力をより強めることを切に願います。