根雪とは『冬の期間中に積もった雪が、長期間消えずに残っている状態』を指し、『気象庁の統計では「長期積雪」』といいます(『』内は気象庁|予報用語 季節現象より)。この長期積雪も統計されており、青森県における長期積雪の初日平年値は12月10日(仙台管区気象台 | 積雪・長期積雪の初終日の平年値より)。青森県は広いため場所によって差がありますし八戸等は雪があまり積もらないのですがとにかく、長い冬がはじまったといえます。
さて、冬になると浮かんでくる曲のひとつに、中島美嘉さんの「雪の華」があるのではないでしょうか。それも、冬の始まりをイメージする曲として。
しかしながらこの曲の詞世界、青森にはあまり当てはまらないように思うのです。
というのも。
1番サビ冒頭、”今年、最初の雪の華”というフレーズが引っかかるのです。1番Bメロで冬の始まりを匂わせていることから、”雪の華”は初雪のことを指すのでしょう。しかし冬シーズンではなく”今年、最初の”雪となると(字面通りに解釈すると)、青森では1月入って間もなく、あわよくば年が変わってすぐとなり、その段階では最早雪は珍しくもなんともないのです。ちなみに雪の華を眺めているのは”この瞬間(とき)”であり、回想しているわけではありません。
この冬は既に、福岡や松山でも初雪が降りました。松山は平年より15日早い12月6日(冬の便り続々 氷点下は今季最多に(日直予報士) - 日本気象協会 tenki.jp(12月6日付)参照)。となると瀬戸内海に近い松山では根雪とならずとも12月下旬には雪が降るわけで、青森同様、”今年、最初の”が1月以降、冬に入って何番目かの雪、と考えていいでしょう。
この「雪の華」におけるシチュエーションを踏まえるに、日本においては12月中には雪が降らず1月以降に初雪がやってくる”という場所の曲だと考えられます。沖縄だと観測史上初めて記録されたのが2016年(沖縄本島で「雪」 観測史上初めて|日テレNEWS24(2016年1月25日付)参照)であり現実的ではないため、太平洋に近い3都市圏で初雪の平年値を調べてみると。
・東京:1月3日(東京管区気象台 -東京の初雪について(平成28年1月12日)参照(※PDF))
・名古屋:12月20日(愛知県の気象・地震概況 平成28年12月(簡易版)参照)
・大阪:12月22日(大阪管区気象台 近畿地方の平年の天候)参照)
というわけで、「雪の華」は東京視点で書かれた曲と言えるのではないか...というのが私見です。
これを踏まえた上で、では「雪の華」が全国(の雪が降る)各地に当てはまるようになるにはどうすれば...とおせっかいを承知で考えてみました。つまりは”今年、最初の”の”今年”を、冬シーズン最初という言葉に置き換えてみるのはどうか?と。サビ入りの大事な3音ゆえ”冬シーズン”という言葉はさすがに無理があります。ならば”今季”や”今冬(とう、を1音とみなす)”ではどうかと思ったのですが、2音目が”ん”なのは歌ってみて格好悪いこと極まりなく。せめて”冬季”かなと思うものの、サビへのステップとなる3音のうち最初の2音は共に力強い言葉(今年の”こ”と”と”)が用意されているゆえ、冬季の”と”と”う”の場合2音目がどうしても弱くなりバランスが崩れます。そう考えると、東京限定に視点を矮小化したとしても、サビ入りの3音を”今年”としたほうがすんなりくるなあと。ゆえに、ちょっとしたジレンマ?を感じています。
中島美嘉さん、今度の日曜に弘前でコンサートを開催します。冬ですし代表曲ゆえ「雪の華」を披露してくれる可能性は高いでしょうが、彼女に、そして制作者に”どの場所視点の曲なんですか?”と問うてみたいところです。無論、そんな邪推や揚げ足取りせず純粋に曲の好さに浸ってください...と言われればそれまでですが。