完全復活。
最新の全英アルバムチャートを制したのはクレイグ・デイヴィッド『Following My Intuition』。全英1位はデビューアルバムの『Born To Do It』(2000)以来、なんと16年ぶりとなり、クレイグはこの報を受け『信じられない。2つの世代が繋がったのが見える。1999年から僕と一緒だった人達と最近僕を発見した人達だ。両方が同じミュージックで繋がっている。最高の気分だよ』と述べています(クレイグ・デイヴィッド、16年ぶりの全英アルバム・チャート1位 | Craig David | BARKS音楽ニュース(10月9日付)より)。この16年ぶりの1位についてはダンスボーカルユニットDa-iCEの一員でソングライターでもある工藤大輝さんもブログで言及。細かいことを言うならば”16年ぶりにアルバムを最近リリース”ではなく”アルバムリリースは6年半ぶりでありアルバムが1位になったのは16年ぶり”とのことですが...とはいえ、工藤さんが言及している音楽ジャンル、2ステップがこのタイミングで再燃しているのは間違いない事実だと自分も確信しています。
ちなみに2ステップの説明については下記に詳しく。
代表する作品としては、クレイグ自身による16年前の全英1位アルバムに収められた「Fill Me In」(全英1位)だったり、
クレイグが世に出るきっかけとなった、アートフル・ドジャーとの「Re-Rewind (The Crowd Say Bo Selecta)」(1999 全英2位)だったり。
それが16年の時を経て、クレイグ自身が2ステップに回帰し、「One More Time」(全英30位)だったり、
もしくは「Fill Me In」と、Jack Ü「Where Are You Now?」をマッシュアップした「16」(全英79位)があったり。
なんというかもう、ただただ痛快なんですよね。
クレイグ再浮上のきっかけは、アルバムからの最初のシングル「When the Bassline Drops (with Big Narstie)」が全英10位のヒットを記録したからだと言えますが、
おそらくこの曲を聴いて”2ステップが再燃する!”と予想した嗅覚鋭い音楽家は少なくなかったのでしょう。最近そのような楽曲が目立つように思います。
たとえば先述した工藤大輝さんが良い曲だとしてブログで紹介しているSHINee「Prism」。
今月リリースされたばかりのアルバム『1 of 1』の冒頭を飾るのが2ステップというのが挑戦的。流行への敏感さを訴求するのみならず、どんな音楽性をも取り込んでいく貪欲さも示すようで、実に格好いいですね。ちなみにソングライターのひとりであるジャミール・チャマスが所属するオレンジ・ファクトリーの柔軟性もまた見事なんですよね。ジャミールについては以前言及しています。
それから、水曜日のカンパネラ「ツチノコ」もちょっと薄めの2ステップ。
歌詞におけるケンモチヒデフミさんの言葉遣いも、コムアイさんのパフォーマンスも独特過ぎて、最初は正直距離を置いてしまったのですが(申し訳ありません)、最新のトレンドを取り込むのもまた先鋭的といえるかも。
さらには、もしかすると平井堅「Plus One」も極々薄めながら2ステップ使いなのかなとふと...いや強引なのは承知の上で。
この曲自体は90年代後半の音数少なめなR&Bが元になっているものの、2ステップを施したリミックスが容易に想像出来る気がするのです。尤も彼は2001年、ドラマ主題歌に2ステップを大胆に取り入れた「KISS OF LIFE」を提供しており音楽への嗅覚は鋭いはず。次のシングルあたりで2ステップ取り入れてくれるのではないかと期待しています。
今年全世界を席巻したレゲエテイストを取り入れた邦楽が桑田佳祐「ヨシ子さん」くらいしかなかったのが寂しい限り。ならば既に再燃しつつある2ステップが日本でも完全(再)燃焼してほしいなあと願っています。