イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

緊急雇用対応事業終了による地方活性化ラジオ番組の終焉について

先月のことになりますが、エフエム青森で放送された、おいらせ町の情報発信番組『OH!いらっせ♪〜ぐるっとイイとこラジオ』(3月まで毎週水曜12時)が終了しました。1年8ヶ月に渡る同番組の終了をもって、青森県の県域放送ラジオ局から、緊急雇用対応事業に伴うラジオ番組が姿を消したことになります。これまで思い出せる限りでは、同事業において外ヶ浜町大鰐町野辺地町五所川原市青森市および青森市駅前(アウガより生放送)などの番組が放送されていましたいました(全てエフエム青森にて放送)。またRABラジオ(青森放送)では、青森県による事業として6次産業を支援する番組が昨年3月まで放送されていました。

 

緊急雇用対応事業とは、下記の一部のことを指します。

地域の雇用失業情勢が厳しい中で、離職した失業者等の雇用機会を創出するため、各都道府県に基金を造成し、地域の実情や創意工夫に基づき、雇用の受け皿を創り出す事業を行っています。

雇用創出の基金による事業 |厚生労働省より

この事業自体は東日本大震災以前から存在していたのですが、東日本大震災の発生を経て『平成23年度第3次補正予算において震災等緊急雇用対応事業を創設』しています(東日本大震災に対応した雇用創出基金事業(震災等緊急雇用対応事業)の実施期間の延長等より。リンク先はPDF)。概要はリンク先に記載されているのでご確認いただきたいのですが、東日本大震災から日が経つにつれ対象となる県が縮小、さらに今年度末までの事業においては『平成26年度末までに事業開始 』が補助の条件であることを踏まえれば、少なくとも先月末までに雇用を募集しない限り番組は今年度スタートせずに緊急雇用対応事業の対象にはならないわけで。青森県のラジオ局の新しいタイムテーブルに同事業を基とする番組の表記がなく、また緊急雇用対応事業に伴う雇用の募集がなかったことを踏まえれば、事業に伴うラジオ番組はおいらせ町分をもって終了したと言っていいでしょう。

 

 

あくまで個人的なことを書くならば、この事業が縁で県域放送局での番組制作に携わることが出来、ラジオについてより深く学ぶことが出来ました。当然ながらプロデューサーやアドバイザーの存在がないことには成し得ないことではありましたが、それでも通常のラジオ番組と遜色のないものが制作出来たものと自負しています。とはいえ、一番組(それも20~30分尺の録音番組)に3~4名のスタッフを配置することは現在のローカル局の録音番組ではありえないことであり、人数が多い分言い訳はできない、きちんとしたものを作らないといけないというプレッシャーはありました。なにせリスナーからすれば、緊急雇用対応事業の番組であるか否かは関係なく(表立って分からないわけで)、あくまで”その局の番組”であるわけですから、遜色ないものを作るのは当然でしょう。貴重な機会をいただけたことに感謝しています。

その上で、ラジオの現場を知ったこと、様々な現実に触れたことを踏まえ、経験や体験を”県域放送局がより好くなる方へ”フィードバック出来たらと勝手ながら考えています。このブログでしばしば掲載しているラジオに関するエントリーはその考えに基づくものですが、ここで今一度、より好い緊急雇用対応事業関連番組や局の他の番組の作り方などについて記載してみます。

 

 

① 最低でも一人はラジオに精通した方を喋り手に起用する

雇用について。たとえば外ヶ浜町では元エフエムアップルウェーブの稲葉みどりさん(現在はエフエム青森の録音番組のパーソナリティ。この春で生放送番組を降板した理由がいまいちよくわからないのですが…)、大鰐町では同じく元エフエムアップルウェーブの鈴木真由美さんが起用され、ラジオ未経験の他のパーソナリティを引っ張っていました。彼女たちの存在はきちんとした芯となり、起承転結をよりはっきりさせることが出来たことから聴き応えありました。一方で今春終了したおいらせ町の番組は喋り手三名がいずれも未経験者(のはず)で、それも全員女性だったため女子会トークから抜け出せないまま。残念ながら成長の跡が見られなかったなあという印象は拭えませんでした(うち一人のパーソナリティの声があまりにこもり過ぎていて、悪い意味で印象に残ってしまう点も)。きちんとした芯があるかないかで情報の伝わり方は大きく変わるはずで、それゆえラジオ慣れしている方の存在は必要だと考えます。

 

② 通信面で質の良いものに関しては局側にフィードバックする

番組の発信方法について。以前からブログで書いているのですが、エフエム青森では唯一の生ワイド番組『ラジmott!』においてTwitterとブログを活用(最近Twitterの内容をブログに転載する方法を採り始めたことで、逆にブログの特性を活かした長文コンテンツは殆ど無いように思われます)、一方でRABラジオではSNS、ブログ共に未だ未開設の状況です。人員が通信にまで手が回らない問題というのも大きいでしょうし、社員がSNSを活用することを何かしらの理由でよしとしないところもあるかもしれません。

が、更新のしやすさや、何よりリスナーとのやりとりがよりダイレクトに出来るという点では、SNSが最も好い手段ではないでしょうか。ブログは双方向的ではないにせよ、コメント欄を活用出来ます。そういう点においては、これまでの番組では(特にエフエム青森では)SNSへの規制がないこともあってか、緊急雇用対応事業に伴う番組ではTwitterFacebookでの展開が行われてきましたしブログも大きな遅れがなく更新されていました。

人員の数的な差という物理的な理由を挙げられてしまってはそれまでですが、少なくともSNSの活用は即時性、および双方向性を確立できる点において必要なことではないでしょうか。放送後記については原稿(台本)の一部を替え、取材写真と合わせて載せるというだけでもよく、台本を書くだけの文章力を持ち合わせているのであればそこまで苦労はないはずです。それを各局の生ワイド番組にも落としこんでほしいと思います。

なお、緊急雇用対応事業に伴うエフエム青森の番組ブログについては検索すると辿り付く場合が多いです。RABラジオについては番組サイトがブログやSNSでないことから消えています。

 

③ 頑張れば放送業界で働ける(正社員になれる)というモチベーションを与える 

雇用の”その後”について。たとえば先述した稲葉みどりさんは外ヶ浜町の番組の後にエフエム青森の専属パーソナリティとなりました。また、青森市の番組を担当した宮川香織さんは現在、NHK青森放送局のキャスターを務めています(おそらく契約社員であり、今期が最終シーズンかと思われます)。

原稿書きや取材経験、ミキシング技術等を習得すること、そして番組で実績を積むことで、番組終了後もラジオ業界においてそれら技術を活かすことが出来るはずです。しかしながらその後も残る方は決して多いとはいえず、それも正社員となったという話を耳にしたことがありません。無論これはラジオ業界そのものが潤っていないこと(地方タレントがラジオ業界のみで活動したとしても”食っていけない”と業界関係者に言われています)、また就職したくともそもそも人材募集自体がないこともあるのでしょう。とはいえ勿体無いと思うのです。

無論、緊急雇用対応事業の特性上、その後も局に残り続ける事ができるという確約はありませんが、折角技術力を高めることが出来、中にはラジオ人としてのポテンシャルが極めて高い方(高くなった方)もいらっしゃるでしょうから、その人を雇い続けるということは出来なくはないはずです。そういった将来の確約というモチベーションが、同事業で制作するラジオ番組の質をより高め、互いが切磋琢磨しあう環境となり得ると思うのですが。

 

地方自治体は番組の効果を確認し、内容の好いものは継続も視野に入れる

地方自治体のスタンスについて。費用対効果というものは測りにくいものだとは思います。が、取材してオンエアされた店舗やイベントに反響を伺うことは出来るはずです。伺ってみてラジオの影響が(ほとんど)なかったのであれば番組の改善以前に継続しないということで問題ないでしょうが、番組の影響が少なからずあり、ラジオ制作との費用対効果を測った上でラジオ番組の必要性を感じることが出来たのならば、緊急雇用対応事業の予算ではなく地方自治体の予算としてラジオ番組制作費を用意しても好いのではないでしょうか。つまりは地方自治体がスポンサーとなる、ということです。単に放送したというだけではなく、放送のその後について度重なる検証をして継続も視野に判断する姿勢を採ってほしいと思います。

 

地方自治体は各クール(出来れば春もしくは秋改編)のはじまりに合わせて放送を開始する。他方、放送局は縦(ワイド番組)や横(帯)の流れを分断しない編成を行う

放送枠について。 これはこのブログで何度も記載しており繰り返しにはなるのですが、たとえばおいらせ町の番組は平日帯番組の水曜放送分を削ったところに枠を用意、2年前の5月にスタートした青森市駅前の番組(アウガより生放送)については、その前の月にスタートした『face』の、当時存在した16時台を削ったところに開始させたため、『face』の16時台は5月以降しばらく聴くことが出来なくなるという状態に。他にも通常放送の番組が、春および秋改編(エフエム青森ならば4/1もしくは10/1)以外のタイミングで突如終了し緊急雇用対応事業の番組に差し替わるケースが散見されました。

このケース、地方自治体も局についても損なんですよね。いくら緊急雇用対応事業と名乗っていない番組であり制作側もそれを意識せずに作っているとしても、特に耳の肥えたリスナーからすれば緊急雇用対応事業のそれと察することが出来、その番組の登場によりお気に入りの番組が”消された”とあれば恨みに似た感情が生じてもおかしくありません。無論、なんら予告もなく突如打ち切らせた局側へも同様の感情を抱きかねず、局への信頼感は消えてしまいます。帯番組についても、水曜だけ穴が空く編成は、特にラジオを時計代わりにしている方からすれば他曜日と異なる編成は疑問になりかねません。

おそらくは地方自治体側が、番組スタートのタイミングを改編期に合わせて設定していないことが原因でしょうが、仮に4月を準備期間として5月スタートとするのであれば、4月はいつ差し替わっても問題ないような特別番組を放送するのが好いでしょう。また、枠についても帯番組はなるべく穴を開けない形にして、リスナーに違和感を抱かせない編成を心がけてほしいと思います。

 

 

以上、長文になってしまいましたが、今後何かしらの形に活きてゆけば幸いです。