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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

MUSIC AWARDS JAPAN 2026、Grand Ceremony全体に抱いた違和感の正体は"ドメスティック"にある

昨日開催されたMUSIC AWARDS JAPAN 2026について、受賞結果および候補一覧はこちらのページをご参照ください。

 

さて、昨年開催の第1回においては、主要6部門等を表彰するGrand Ceremonyについて以下の見方を記しました。

昨年開催分については"第0回"という見方を耳にしたことがあります。ともすればその表現は、不慣れな部分も多いゆえ大目に見てほしいという意味合いもあったのかもしれませんが、一度経験した上で今回行われた第2回は会場の変更こそあれ、厳しい物言いながら言い訳は通じ難いと考えます。

その上で私見を述べるならば、Grand Ceremony全体が冗長に映ったというのが、厳しくも正直な感想です。

 

 

まずは昨日開催のMUSIC AWARDS JAPAN 2026のうち、Grand Ceremonyの受賞結果を振り返ります。筆者は先日主要6部門の予想を行い(MUSIC AWARDS JAPAN 2026における投票行動を想起し、主要部門の予想を記す(6月12日付)参照)、合致は3部門にとどまったのですが、今回の開催により投票メンバーによる投票行動が掴めたと感じています。

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(NHK MUSICの公式Xアカウントによるポストより(→こちら)。)

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(NHK MUSICの公式Xアカウントによるポストより(→こちら)。)

 

旧譜がアーカイブ部門に移行した今回も、MUSIC AWARDS JAPANでは『音楽的に創造性、芸術性が優れていると思う楽曲/アーティスト/アルバム』を投票基準として謳っていました(『』内はABOUT VOTING | MUSIC AWARDS JAPANより)。それを踏まえた上で、5,000名と言われる(その点が幾度となく採り上げられながら業種やジェンダー等の内訳は可視化されていない)投票メンバーが採った行動から見えてくることがあります。

たとえば"連覇"。藤井風さんは『Prema』で『LOVE ALL SERVE ALL』に続き2年連続での最優秀アルバム賞を受賞。さらには『HELP EVER HURT NEVER』が旧譜部門である最優秀ロングヒットアルバム賞を受賞したことで、オリジナルアルバム3作品がいずれも受賞を果たしています。また主要部門では最優秀アーティスト賞において、Mrs. GREEN APPLEが2連覇を成し遂げています。

このような事態はドラマ性の高さにつながり、またドラマ仕立てにしやすい結果ともいえます。これは昨年復帰したサカナクションが「怪獣」で最優秀楽曲賞を受賞したこと、主要部門以外でGrand Ceremonyにて発表された最優秀ミュージックビデオ作品賞を「怪獣」が獲得し、受賞した田中裕介さん共々サカナクションも登壇したことからも見えてくるかもしれません。

 

無論このドラマ性は、海外のエンタテインメント賞でも時折みられます。たとえばアカデミー賞では長年受賞に至らなかった俳優や監督が功労賞的な意味で票を集め、受賞に至ったと思しきケースもあります。MUSIC AWARDS JAPANは未だ2回目であり投票行動を断定することはできませんが、この賞が"世界とつながり、音楽の未来を灯す。"をコンセプトに掲げているゆえ尚の事、日本的な投票行動の結果を想起した次第です。

(MUSIC AWARDS JAPANのコンセプトはABOUT | MUSIC AWARDS JAPANに掲載されています。)

 

 

さて、今回のGrand Ceremonyにおいては、主要6部門を含む12部門が発表されています。第1部が85分、第2部が80分という状況下での12部門発表は少ないというのが率直な私見であり、全体の尺を詰められたのではと思うほど時間配分に疑問を抱いています。今回のエントリー冒頭にて"冗長"と述べたのは、この点も背景にあります。

何より強く感じたのは、司会を務めた菅田将暉さんと出席した歌手とのやり取りの長さでした。ただし第1部終了直後に掲載された【記事全文】【MAJ】菅田将暉 さすがの安定感!名司会ぶりにネット絶賛「紅白の司会もやるべき」「ぜひ固定で」 - スポニチ Sponichi Annex 芸能(6月13日付)等を踏まえれば、筆者のような批判は少数意見かもしれません。

冗長と感じたのは、MUSIC AWARDS JAPAN 2026出席者への考え方が背景にあります。司会やプレゼンターが出席者に向かって"おめでとうございます"を幾度となく伝えた点からは、真の主役は受賞者/作品以上に候補入りした人々だという見方を抱いた次第。真の主役がぼやけたのは、司会と出席者のやり取りやプレゼンターのコメントにおける尺を詰めず、受賞者のコメントに割愛を求めたことが散見された点から感じています。

このような出席者の位置付けは、日本レコード大賞において優秀作品賞を全組紹介する、また日本アカデミー賞にて候補入りした俳優全組にインタビューする等の姿勢から感じていました。しかし米ではグラミー賞やアカデミー賞にてそのようなことを行いません。エントリーからノミネートに至るだけでも素晴らしいことゆえ称えたい思いは解れど、ならば受賞した真の主役こそ強くスポットを当てるべきではないでしょうか。

 

それでも、MUSIC AWARDS JAPAN 2026における日本的な演出を評価する方は多いと思われます。他方筆者は、MUSIC AWARDS JAPANがアジア版グラミー賞を目指すならばその手本となる海外のエンタテインメント賞が持つスタイリッシュさ等を意識していいのではと考えています。

 

 

さて、強い違和感を覚えたのはTOYOTAを強く推すという姿勢にもあります。無論トップパートナーであり、会場としてTOYOTA ARENA TOKYOを提供したゆえの配慮でしょうが、米津玄師「IRIS OUT」のパフォーマンス時に登場した乗り物にTOYOTAの文字が大きく刻まれ、また主要部門であるBest Global Hit from Japanのプレゼンターに前文化庁長官の都倉俊一さん共々、会長の豊田章男さんが登壇したことは最たる例でしょう。

Best Global Hit from Japanを「HYPNOTIZE」にて受賞したXGが会場にいなかったゆえ、プレゼンターである豊田さんは追加の対応を採る必要がありました。さすがに不在時の対応までは難しかっただろうとして、しかしそのあまりの不慣れさに違和感を強く抱いています。プレゼンターはエンタテインメント業界の方が担うほうがより良かったはずであり、またスポンサー企業の強い訴求は賞の公平性も疑われかねないでしょう。

 

 

Best Global Hit from Japanで前文化庁長官が登場したのは自然かもしれない一方、政治関連でいえば現在の政治や社会問題について発言する方がいなかったことは極めて残念に感じます。これは今年の米グラミー賞と真逆の動きであり、環境は違えどこの数ヶ月間で政府による急激な他国との対立、貧困化そして独裁化と形容可能な環境が整備されつつある日本の状況を勘案し、熟考を促す発言があってよかったはずです。

筆者がMUSIC AWARDS JAPAN 2026にて唯一社会問題への発信と捉えたのが、サム・スミス「My Guy」のパフォーマンスでした。歌詞から感じたのはLGBTQ+コミュニティへの連帯であり、6月がプライド月間ゆえ尚の事です。しかしながらパフォーマンス後は出席者から感動の声こそ出ていながら(ただその時間も長く感じました)、その選曲の意図に賛同する、もしくは選曲理由を尋ねる方が登場しなかったこともまた残念です。

米大統領の再選、また米やイスラエルによるイランへの軍事攻撃後は尚の事、海外のエンターテイナーが問題を指摘する声は薄れたと感じながら(特にこの1年で最大のセールスを記録したテイラー・スウィフトの沈黙といえる態度には強い違和感を覚えます)、しかしきちんと発信する方も少なくありません。日本のエンタテインメントを海外に発信する際、当事者が政治や社会問題を問われて答えられるのかを強く疑問視しています。

 

 

そして今回、特に強い違和感を感じたのが山下達郎さんによるMAJ Timeless Echo受賞でした。Grand Ceremonyで同賞の受賞者が初めて発表されましたが、その瞬間にMUSIC AWARDS JAPANの限界を痛感しています。

音楽の聴かれ方は、半世紀の間に変化してきた。サブスクリプションでの配信を解禁しないのか尋ねると、今の時点で山下は「恐らく死ぬまでやらない」と答える。

「だって、表現に携わっていない人間が自由に曲をばらまいて、そのもうけを取ってるんだもの。それはマーケットとしての勝利で、音楽的な勝利と関係ない。本来、音楽はそういうことを考えないで作らなきゃいけないのに」

 

(引用部分は6ページ目に掲載されています。)

山下達郎さんはデジタル、特にサブスクへの解禁を行わないと断言していることで知られています。上記インタビュー記事がその姿勢を示す最たるものですが、『ばらまいて、そのもうけを取ってる』等の表現からはデジタルに携わる者への蔑視姿勢も強く抱かせるに十分です。

一方でデジタル、特にサブスク時代になって世界との隔たりが減り、日本の音楽がグローバルでヒットに至る可能性が高まっています。そのことは米ビルボードが2020年秋に開始したグローバルソングチャートでの日本の音楽のトップ10ヒット一覧からも解るでしょう(下記表参照)。そしてトップ10ヒットに限らずも日本の音楽のグローバルヒットを増やすというのが、MUSIC AWARDS JAPAN創設の背景にあるはずです。

特にサブスクへの柔軟姿勢が欠かせない今の音楽業界において無礼な態度を続ける山下達郎さんですが、一方でインタビュー記事ではSpotifyを活用していることを明かしています。また「クリスマス・イブ」は一部サブスクサービスで配信されており(2025年度版 サブスクに消極的ゆえ、より大きなヒットに至れなかったと考える曲一覧(2025年12月30日付)参照)、これらの行為に対し本人は矛盾を抱かないのでしょうか。

そしてこのような姿勢が、シティポップが世界でヒットしたと言われながらそのヒット規模を増幅できなかった背景にあるものと捉えているのですが、その点も含めて日本の音楽業界が山下さんを説得することはできていないだろうということが、今回のMAJ Timeless Echo贈呈から明らかになったというのが厳しくも私見です。

 

 

いや、山下さんの活躍は国内での長年の実績を踏まえてのものと指摘する声が出てくるかもしれません。ならばその点も含め、MUSIC AWARDS JAPANが日本の音楽を世界へと謳いながらも、5,000名といわれる投票メンバー、そしてMAJ Timeless Echoを選出した実行委員会の選定行動規範は実にドメスティックではないかと考えるに至っています。そう考えれば、冗長と感じた演出や流れについても納得できるところが多いのです。

この"ドメスティック"は、サム・スミスやTWICEのメンバーから成るMISAMOもパフォーマンスしながら、一方で今年の洋楽やK-POP部門にノミネートされた歌手がGrand Ceremonyでパフォーマンスしなかった点からもみえてきます。日本の歌手同士は称え合う一方で批判や波立てを行わない、また音楽業界はベテランがどんなに誤っていても是正を求めないだろうことを今回の賞から感じたと記すのは、強すぎる私見でしょうか。

そのような態度は日本国内では自然なことかもしれませんが、海外からはどう映るでしょう。そして日本のエンタテインメントが海外でヒットし、海外の賞やメディアに呼ばれた際にきちんと立ち居振る舞いができるでしょうか。

 

 

 

第3回を行うならば、あくまで真の主役は受賞作品/歌手であることを明確にする、海外にどう映るかを意識するというだけでも演出等が大きく変わるでしょう。その視点を持つならば、司会やパフォーマー、MAJ Timeless Echoの受賞歌手選定も自然と変化し、そして受賞コメントにきちんと時間が割けるはずであり、受賞式のみならず音楽業界全体にも好い緊張感が生まれるものと考えます。

 

 

最後に。今回の賞では"巻き"を示すBGMが多用されましたが、たとえば米アカデミー賞ではほぼ鳴りません。MUSIC AWARDS JAPAN 2026ではお約束のネタとまでなってしまった感がありますが、BGMの発信は受賞コメントを紡ぐ歌手に失礼であることもさることながら、本来は司会の力量不足に映りかねません。BGMをお約束ネタとして魅せていたならばそのような演出もドメスティックであり、見直す必要があると考えます。