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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(追記あり) ビルボードジャパンによる2026年度上半期チャート、7つの注目ポイントを挙げる

(※追記(6月5日14時42分):ビルボードジャパンアルバムチャートにおけるMr.Children『産声』のCHART insight画像を当初掲載していませんでした。つきましてはその画像を貼付しています。)

 

 

 

ビルボードジャパンは本日午前4時、2026年度上半期各種チャートを公開しました。集計期間は2025年12月3日公開分~2026年5月27日公開分(2025年11月24日~2025年5月24日)となります。なおGlobal Japan Songs Excl. JapanおよびJapan Songs(国・地域名)は2025年12月4日公開分~2026年5月28日公開分(2025年11月21日~2026年5月21日)となります。

ビルボードジャパンによる各記事のリンク、および各四半期のデータについてはエントリーを別途用意し、まとめています。またこのブログエントリーでも一部記事のポストを貼付しています。

 

今回のエントリーにて貼付しているソングチャート、アルバムチャートおよび双方を合算したトップアーティストチャートのCHART insightはいずれも2025年5月28日公開分(上半期最終週)までの最大30週分となり、CHART insightにおける順位は同日公開分のそれを指します。

(今回掲載するCHART insightは有料会員が確認可能なものであり、20位未満の指標順位も明示されています。ビルボードジャパンでは有料会員が知り得る情報の掲載を許可しています。)

CHART insightにおける色の内訳は、ソング/アルバムチャート共通指標ではフィジカルリリースが黄色、ダウンロードが紫、ストリーミングが青で表示。ソングチャートのみの指標ではラジオが黄緑、動画再生が赤、カラオケが緑で表示されます。また総合順位は棒グラフで示されています。

 

 

それでは、上半期チャートを振り返ります。

 

<ビルボードジャパンによる2026年度上半期チャート 注目ポイント>

 

 

① 米津玄師「IRIS OUT」の首位獲得と、『NHK紅白歌合戦』等の高い影響力

米津玄師「IRIS OUT」は昨年度、登場からわずか10週にて年間ソングチャート4位に到達。その勢いをキープし、今年度上半期のソングチャートも制しています。ソングチャートの記事には2位におよそ5万7千ポイントの大差をつけていることが記載されています。

一方で「IRIS OUT」は今年度に入り減少傾向にありましたが、その勢いを回復させたのが"レゼダンス"の動画投稿、そして『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか 以下”紅白”と記載)への出場でした。

"レゼダンス"のショート動画は米津玄師さんの公式YouTubeチャンネルにて掲載。この人気が"踊ってみた"に代表されるユーザー生成コンテンツ(UGC)を増加させ、デジタル指標群に反映されたことで2025年12月24日公開分ソングチャートにてポイントが増加に転じています。そして紅白歌合戦の反響が表れる1月14日公開分まで上昇を続けた形です。

紅白での反響は、音楽チャートに表れます。1月4日までを集計期間とする1月7日公開分ではポイント前週比117.4%を記録し1万ポイント台復帰を果たすと、その翌週は同117.8%を記録。その1月14日公開分にて記録した13,393ポイントが、「IRIS OUT」における2026年度上半期の週間最高ポイントとなります。

1月7日および14日公開分のソングチャートにおける紅白効果については、以下のエントリーにて解説しています。

紅白効果は他の歌手でもみられましたが、米津玄師「IRIS OUT」の動きはとりわけ象徴的でした。何より、紅白のパフォーマンス映像を米津玄師さん側のYouTubeチャンネルで公開したことにより、1月14日公開分では「IRIS OUT」の動画再生数が前週比147%と急伸しています。米津さん側での動画公開は、音楽チャート向け施策ともいえるでしょう。

紅白については懐疑的、もっといえば攻撃的な姿勢を崩さないメディアや市井が毎回みられますが、その影響力についてはきちんと理解することが必要です。

 

② M!LKの3曲、アイドル/ダンスボーカルグループにおける理想のチャート推移

今年上半期にブレイクした歌手はと尋ねると、多くの方はM!LKを挙げるのではないでしょうか。たとえば今週公開されたαZ総研による上半期トレンドランキングでも、M!LKおよびその関連が複数のランキングに登場しています。

M!LKは上半期ソングチャートで「好きすぎて滅!」が2位、「爆裂愛してる」が6位に。紅白初出場時に披露した「イイじゃん」も30位に登場しています。支えとなったのがストリーミングであり、指標の基となるStreaming Songsチャートでは「好きすぎて滅!」が2位、「爆裂愛してる」が14位に入り、共に1億回再生を突破。上半期や年間のこのチャートでアイドル/ダンスボーカルグループ曲がトップ3入りするのは5年ぶりです。

M!LKの3曲はそれぞれ、今のアイドル曲における理想のチャート動向を示しています。「爆裂愛してる」はフィジカルセールス指標加算対象曲における”デジタルとフィジカル合算の瞬発力”を第1四半期最終週における1万5千ポイント突破にて示し、また「爆裂愛してる」とダブルAサイドの「好きすぎて滅!」は"フィジカルセールス指標未加算ながらロングヒット"に。カラオケ指標の首位到達もライト層支持を表す事例といえます。

そして2曲の社会的ヒットが「イイじゃん」のフックアップにつながっています。紅白発表前に最高45位だった同曲は今年2月25日公開分にて最高位となる21位に上昇していますが、この時は「爆裂愛してる」のフィジカルセールス指標初加算週であり、"新曲への勢いが過去曲にも反映"された例といえるでしょう。「イイじゃん」を含むアルバム『M!Ⅹ』も安定していますが、こちらの背景にもストリーミングの好調が見て取れます。

 

③ HANA、ファーストアルバムもヒット

先述した紅白における米津玄師「IRIS OUT」では、HANAのメンバーも(放送時間帯の関係で出演が叶わなかったMAHINAさんを除いて)パフォーマーとして登場。この出演も2025年のHANAの勢いを示すに十分だったといえるでしょう。そのHANAが2月にリリースしたファーストアルバム『HANA』が、上半期2位を記録しています。

HANA『HANA』はフィジカルセールス17位、ダウンロード5位、ストリーミング2位を記録。特にストリーミング指標は常時2位以内に入り、累計ポイント構成比の9割以上を占めています。ビルボードジャパンアルバムチャートは2024年最終週にストリーミング指標を組み入れて以降”聴かれ続ける作品”が高い人気を誇るようになりましたが、『HANA』はその最たる例に。ソングチャートでも100位以内に11曲が登場しています。

 

④ BTS『ARIRANG』、上半期アルバムチャートで圧倒

上半期アルバムチャートはBTS『ARIRANG』が制しました。久しぶりのカムバックや日本公演等も話題ながら、注目は『ARIRANG』が登場4週目となる4月15日公開分にて既に(同日公開分までの時点で)上半期首位に躍り出ていた点。『ARIRANG』は登場10週のうち通算8週に渡り総合首位を獲得、そしてストリーミング指標は常時トップに就いています。

BTS『ARIRANG』は日本時間の3月20日金曜にリリースされ、デジタルが初の1週間フル加算となった4月1日公開分にてストリーミング指標、同指標の基となるStreaming Songsチャート、そして総合ソングチャート100位以内に収録曲がすべて登場しています。インストゥルメンタルも含めた全曲の登場はアルバムとして聴かれていることを示唆し、またその後のストリーミングヒットからは聴かれ続けていることも解ります。

(上記表はBTS『ARIRANG』収録曲の日本におけるチャート動向、そして米での「SWIM」2週目予想について(4月5日付)より。)

一方で、『ARIRANG』のリード曲である「SWIM」は上半期38位であり、大ヒットとは言い難いというのが厳しくも私見です。ミュージックビデオが制作された「2.0」も上半期87位と高くはなく、これら楽曲の動向からはアルバムにおける聴取行動の詳細が読み取れるかもしれません。

 

⑤ アイドル/ダンスボーカルグループのアルバム、ストリーミングで強さを発揮

ストリーミング指標組み入れ後のアルバムチャートでは聴かれ続ける作品が上位で安定するようになりましたが、その点は今年度上半期における上位作品の指標構成からもみえてきます。トップ10入りした作品のうちフィジカルセールス指標でも10位以内に入ったのは2作品、ダウンロードは3作品に対し、ストリーミングでは9作品となっています。

上半期アルバムチャートでは先述したBTS『ARIRANG』(1位)およびHANA『HANA』(2位)に加えて、King & Prince『STARRING』(3位)、Number_i『No.Ⅱ』(4位)、XG『THE CORE - 核』(7位)そしてBE:FIRST『BE:ST』(9位)といったアイドル/ダンスボーカルグループの作品がトップ10内に登場。そしていずれの作品も、ストリーミング指標が強いことが解ります。

これら作品は遅くとも下半期中にリカレントルールが適用されることになりますが、たとえば既に適用されたNumber_i『No.Ⅱ』はその後も総合100位以内にエントリーを続けています。

コアファン主体にアルバム全体の聴取を継続する、収録曲のうちヒット曲を主体にライト層も積極的に聴取するというように、上半期チャート上位の作品にはそれぞれの聴取傾向があると考えられます。先述したBTS『ARIRANG』は前者の可能性が高いものと捉えていますが、これら作品が今後どのような推移を辿るかに注目です。

 

⑥ Mrs. GREEN APPLE、今期もトップアーティストチャート制覇

ソングチャートとアルバムチャートを合算したトップアーティストチャートでは、Mrs. GREEN APPLEが上半期を制覇。2024年度および2025年度の歌手別チャートを制した彼らが、3年連続で首位に立つ可能性がみえてきました。

この半年は新作のフィジカルリリースはなかったものの(昨年末に旧譜のレコードリリースは有り)、1月4日公開分ではフィジカルセールス指標が2位に浮上。紅白を含めた昨年末の地上波長時間音楽特番出演等が影響したと考えられます。昨年度上半期総括の際にはMrs. GREEN APPLEについて”お茶の間の歌手に成った”と形容しましたが、『テレビ×ミセス』(TBS)のレギュラー化は彼らのその表れといえるでしょう。

Mrs. GREEN APPLEはソングチャートで14曲、アルバムチャートでは6作品が上半期トップ100入り。そのうち今年リリースした「lulu.」が上半期3位に到達し、同時期リリースのKing Gnu「AIZO」(上半期4位)共々2026年リリースのアニメ関連曲を上位に送り込んでいます。さらにはRADWIMPSトリビュートアルバムへの参加、およびその内容がMrs. GREEN APPLE以外のファンからも注目を集めることにつながったものと捉えています。

 

⑦ 『超かぐや姫!』やトリビュート盤、ベテラン等バラエティに富んだヒット

上半期や年間、極端にいえば2週分のチャート動向をみれば、ストリーミングが安定して強いことがロングヒットの条件であることが解るかもしれません。

昨年度下半期最終週に初登場したRADWIMPSのトリビュートアルバム『Dear Jubilee - RADWIMPS TRIBUTE -』は、上半期アルバムチャートで5位に。初登場以降10週連続でトップ10入りし、ソングチャートでも収録曲が大挙エントリーを果たしています。さらにはこのアルバムがRADWIMPS自身の評価にもつながり、彼らはトップアーティストチャートで13位に登場しています。

Netflixで配信され、映画館でも高い人気を集めた『超かぐや姫!』のアルバムは、フィジカル未リリースながら上半期6位にランクイン。このヒットの背景には”歌ってみた”等に代表されるUGC(ユーザー生成コンテンツ)の人気があるという点について、以前紹介しています。

 

ベテランの人気も可視化されています。

アルバムチャートでは上半期15位にMr.Children『産声』が登場。収録曲「Again」が主題歌に起用されたドラマ『リブート』(TBS)のヒットも後押ししています(同曲は上半期ソングチャート34位)。重要なのは、Mr.Childrenが今作で初めてフィジカルリリース時にデジタルを同時解禁したこと。ストリーミングを好ましく思わないベテラン歌手が今も目立つ中、『産声』のチャートアクションからは重要なことが明確に浮かんできます。

そして、『ザ・ロイヤルファミリー』(TBS)の主題歌となった玉置浩二「ファンファーレ」が上半期ソングチャートで26位に登場しています。週間トップ10入りこそなりませんでしが、最高位となる13位を記録した1月7日公開分では紅白出場効果が反映され、ストリーミングでも山を築いていることが解ります。

バラエティに富んだヒット、その背景にはストリーミングの存在の大きさが見えてきます。ならば歌手側は施策の展開において、ストリーミングをはじめとするデジタルを意識しない手はないはずです。

 

おわりに:嵐や「夜の踊り子」の下半期動向は、そして特大ヒットは登場するか

今週発表された6月3日公開分の各種チャートが下半期初週となりますが、その集計期間最終日に活動を終了した嵐の作品が伸びています。特に「Five」は17→7位に上昇し、次週は首位獲得の可能性も考えられます。

嵐「Five」は3月11日公開分の初登場時に今年度唯一の10万ダウンロード超えを果たし、総合でも唯一の2万ポイント超えを達成。一方で上半期におけるトップ10入りは初登場週を含む4週にとどまり上半期全体では15位となりましたが、活動終了後の動向如何では年間チャートでの上位進出もあり得るかもしれません。旧譜も浮上していることから、トップアーティストチャートの今後にも注目です。

そして上半期終盤には、サカナクションによる2012年リリースの「夜の踊り子」がSNS人気を経て急浮上。この人気が同曲を含むアルバム『sakanaction』(2013)をはじめとするサカナクションの旧譜にも波及しています。

旧譜の再浮上には様々な要因がありますが、そもそもきちんとデジタルを解禁していたからこそ、何かしらのきっかけに伴い急上昇できたといえるのではないでしょうか。

 

上記作品の今後の動向にも注目する一方、この半年は米津玄師「IRIS OUT」クラスのヒットが生まれていないというのが率直な私見であり、その旨は先月のエントリーにて記しています。ここ最近は首位曲が毎週入れ替わっていますが、所有指標に強いアイドル/ダンスボーカルグループの曲が一方ではストリーミングに強くないため安定せず、他方ストリーミングの特大ヒットが出ていないということが端的に示されたといえます。

この見方を、ビルボードジャパンソングチャートの記事が証明しているといえるかもしれません。

なお、前年同期の首位はMrs. GREEN APPLE「ライラック」(213,340pt.)だったが、今年は「IRIS OUT」が1曲で市場を強くリードし、1位と100位のポイント差は前年の約8.0倍から約9.5倍へ拡大。トップ100の累計ポイントも前年比約16%減の約424万pt.となり、上位への集中がより顕著な半期となった。

大ヒット曲の登場は、(日本市場を含めた)米ビルボードによるGlobal 200での日本の楽曲の存在感上昇にもつながるだろうということを、今週のエントリーにて紹介しています。

タイアップの有無に関係なく、コアファンそしてライト層双方の支持を集めた曲が瞬発力そして持久力共に強さを発揮することで、日本のみならず世界を制する曲が登場するかを注視していきます。

 

最後に。ビルボードジャパンは昨年度下半期初週にリカレントルールを導入しています。Streaming Songsチャートをソングチャートのストリーミング指標、Streaming Albumsチャート(非公開)をアルバムチャートのストリーミング指標に移行する際、前者は総合52週以上、後者は同26週以上100位以内にランクインした作品に対しその翌週以降、指標化の際に減算処理を行うというものです。

リカレントルールはチャートの新陳代謝を高めるために導入されたとみられています。一方で上半期ソングチャートでは期間内に適用されたHANA「ROSE」が7位に、アルバムチャートでは同じく期間内に適用されたNumber_i『No.Ⅱ』等複数の作品が10位以内にランクイン。さらには昨年度下半期初週の段階でリカレントルールに抵触していたMrs. GREEN APPLE『ANTENNA』が、上半期アルバムチャート8位に登場しています。

そのMrs. GREEN APPLEは、『ANTENNA』同様に昨年度下半期初週の段階でリカレントルールの対象となった「ライラック」が上半期ソングチャートで18位に登場しています。リカレントルール抵触後も強さを発揮する作品についてはきちんと評価することが重要であると共に、それらを凌ぐヒット作品が今後生まれるかに注目です。