MUSIC AWARDS JAPAN第2回の開催を来週に控え、また金曜にビルボードジャパンが上半期チャートを発表するこのタイミングで、【日本の音楽が世界に拡がっているのか】という疑問を提示します。これは次の考えに基づくものです。
日本の音楽が世界に拡がっているという発信はここ最近目立ちます。
— Kei (ブログ【イマオト】/ポッドキャスト/ラジオ経験者) (@Kei_radio) 2026年5月4日
一方で複合指標から成るグローバルソングチャート、米ビルボードによるGlobal 200では、日本の楽曲のランクインは多くありません。K-POPとの差も開いています。
"底上げ"と"コンスタントな大ヒットの輩出"の双方が必要と考えます。 https://t.co/RQRLRAvgPo
日本の音楽は海外で聴かれてきているという点では"底上げ"は徐々に成果を上げ続けているというのが私見です。一方でGlobal 200でのコンスタントな大ヒットの輩出には至れていないというのが、厳しくも私見です。
— Kei (ブログ【イマオト】/ポッドキャスト/ラジオ経験者) (@Kei_radio) 2026年5月4日
YouTubeライブの発信、チャートの金曜起点等、できることは多々あるはずです。
先月このような発信を行いましたが、その後もGlobal 200では日本の楽曲のエントリーはありません。
冒頭のポストで記した”Global 200”とは、米ビルボードが2020年秋に開始したグローバルチャートのひとつ。世界200以上の国や地域における主要デジタルプラットフォーム(iTunes Store、Spotify、Apple Music等)のダウンロードおよびストリーミングの2指標で構成されるソングチャートとなります。なおGlobal 200から米の分を除いたGlobal Excl. U.S.も存在しますが、11位以下は公開されません。詳しくは下記をご参照ください。
そしてビルボードジャパンは2023年秋、Global 200をベースに日本の楽曲の海外人気を示すGlobal Japan Songs Excl. Japanを立ち上げています。Global 200から日本市場分を除いた上で日本の楽曲のみを抽出したこのチャートは金曜起点、また様々なバージョンの合算等、チャートポリシー(集計方法)をGlobal 200に沿わせています。
なお米ビルボードに対し、YouTubeがデータ提供を今年1月31日付以降取り止めています。よってGlobal Japan Songs Excl. Japanにおいても同年1月29日公開分以降がYouTubeデータ提供取り止め期間となります。YouTubeのデータ復帰は未定のままです。
では、Global 200およびGlobal Japan Songs Excl. Japanのデータをチェックします。以下はGlobal 200における日本の楽曲の200位以内ランクイン一覧、およびGlobal Japan Songs Excl. Japanにおける首位曲とその再生回数をまとめた表となります。
Global 200において日本の楽曲が200位以内にランクインしていない週はグレーで表示。Global Japan Songs Excl. Japanの首位曲がGlobal 200にも登場した場合はピンクで示しています。また先述したYouTubeデータ提供取り止めのタイミングを太線で表示しています。なおGlobal Japan Songs Excl. Japanでは首位獲得曲のストリーミング再生回数を記事に掲載しないことも多い状況であり、その際は”(記事未掲載)”と記しています。
(Global Japan Songs Excl. Japanの記事ではダウンロード数も記載されません。ビルボードジャパンに対しては首位曲における2指標の数値をきちんと開示するよう願います。)




そして、Global Japan Songs Excl. Japan首位曲におけるストリーミング再生回数の推移を示したグラフを以下に。再生回数が記事未掲載の場合はブランクで表示し、YouTubeのデータ提供取り止め前後でグラフの色を変えています。

Global Japan Songs Excl. Japan首位曲のストリーミング再生回数推移における3つの山は、Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」、同「オトノケ」および米津玄師「IRIS OUT」が築いています。言い換えれば、それら大ヒット作品が登場していない期間は首位曲でも1000万回を切ることが少なくなく、そして(記事にて確認可能な範囲でですが)YouTubeデータ提供取り止め以降は400万回割れが目立ってきているといえます。
大ヒット作品が登場していない期間は、昔からグローバルでヒットしている日本の楽曲が上位に登場する傾向にあります。

上記は最新5月28日公開分Global Japan Songs Excl. Japanの上位11曲ですが、これをGlobal Japan Songs Excl. Japanがローンチされた2023年9月14日公開分における上位11曲と比べると、5曲が重複しています。

Global Japan Songs Excl. Japan初週にて11位にランクインしているTERIYAKI BOYZ「TOKYO DRIFT (FAST & FURIOUS)」(2006年リリース)は、今年5月21日公開分のGlobal Japan Songs Excl. Japanにてストリーミング再生回数が判明しています。
2位のTERIYAKI BOYZ「TOKYO DRIFT(FAST & FURIOUS)」は、合算ストリーミング数302万回を記録し、1位との差を徐々に縮めている。
【ビルボード】King Gnu「AIZO」グローバル・ジャパン・ソングス7連覇 USツアー開催中の杏里が上昇 https://t.co/yAZQagos1D
— Billboard JAPAN(ビルボードジャパン) (@Billboard_JAPAN) 2026年5月21日
Global Japan Songs Excl. Japan首位曲のストリーミング再生回数推移を踏まえれば、TERIYAKI BOYZ「TOKYO DRIFT (FAST & FURIOUS)」は常時300万回前後(YouTubeデータ提供取り止め前はもう少し高い再生回数)で推移を続けているものと想起できるかもしれません。同曲はチャートの発足以降、常時14位以内にランクインし続けています。


(上記はTERIYAKI BOYZ「TOKYO DRIFT (FAST & FURIOUS)」におけるGlobal Japan Songs Excl. JapanのCHART insight。Japan Songs (韓国)を拡大表示したのは、Global Japan Songs Excl. Japanの順位が棒グラフで示され、その順位を分かりやすく示すためです。)
そう考えると、TERIYAKI BOYZ「TOKYO DRIFT (FAST & FURIOUS)」、また松原みき「真夜中のドア〜stay with me」(1979年リリース)といった旧譜の常時ランクインは素晴らしいながら、リリースされて間もない日本の楽曲が上位に登場しにくいという実態も浮かび上がるといえるかもしれません。
”日本の楽曲は世界に拡がっている”という認識は高まっているものと考えます。様々なデータがそのことを証明していますが、日本の楽曲全体の底上げという意味では正しいでしょう。一方で、冒頭のポストでも示したようにGlobal 200では日本の楽曲と韓国のそれとで乖離が拡がっており、大ヒット曲の輩出という点ではまだまだではというのが厳しくも私見です。
K-POPでは一昨年以降、ロゼ & ブルーノ・マーズ「APT.」や『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ (原題:Kpop Demon Hunters)』(Netflix)の関連曲(特にHUNTR/X(イジェ、オードリー・ヌナ & レイ・アミ)「Golden」)がロングヒットし、これが社会的ヒットと認知されたことで米グラミー賞ノミネート、また受賞にもつながったと捉えています。そして今年はBTS『ARIRANG』が世界中でヒットしています。
チャートインするのみならずロングヒットし、(チャート動向も反映傾向にある)海外の音楽賞を受賞するという流れに伴い、K-POP人気はこの2年弱で更なるステップアップを果たしたと考えます。Global Japan Songs Excl. Japanのローンチは海外での日本の楽曲の人気可視化という点では大きな意味を持ちますが、日本の楽曲は日本市場を含めたGlobal 200でランクインさせることがより重要でしょう。世界の音楽ファンにはGlobal Japan Songs Excl. JapanよりGlobal 200の認知度が高いだろうと考えるに、尚の事です。
日本の楽曲がGlobal 200に登場するには、まずは瞬発力を高めることが重要と考えます。そこで認知を拡げ、ストリーミングを充実させロングヒットに至らせることでGlobal Japan Songs Excl. Japanにも登場するという流れが好いかもしれません。ダウンロード数は海外より日本のほうが高い傾向にあるためGlobal 200登場の可能性があり得るということは、たとえばTravis Japan「JUST DANCE!」が証明しています。

そして、グローバルチャートを日本で浸透させることも重要です。Global Japan Songs Excl. Japanは毎週記事化されながら、Global 200はビルボードジャパンで翻訳記事が登場していません。日本の音楽を世界にと示すならば基のグローバルチャートも浸透させ、Global 200の成績を日本で共有する等、日本の音楽ファンにチャートを意識してもらうべく努めることも必要でしょう。日本の成績だけでもGlobal 200にランクイン可能であり、結果を海外進出のステップにしたいと歌手側が考えているならば尚更です。
それ以前に、ビルボードジャパンによる日本の各種チャートはGlobal 200をはじめとする米ビルボードにチャートポリシーを沿わせることも必要と考えます。現状では日本が月曜、Global 200は金曜が集計期間初日となっており、海外でも展開したいと考える歌手が配信する際に施策がどっちつかずになりかねません。配信は海外リリースとほぼ同等だと考えれば尚の事、やはり検討するに越したことはないと考えます。
(なお先述したTravis Japan「JUST DANCE!」は、金曜配信開始且つリミックスの用意がグローバルチャートにおける初動の大きさにつながっています。)
加えて、YouTubeのデータ提供再開について、日本の音楽業界が米ビルボードそしてYouTubeに対し総出で働きかけるべきと考えます。YouTubeデータ提供取り止めがグローバルチャートにおける日本の楽曲の存在感を弱めていることは間違いないと考えるに(下記エントリーも参照)、やはり説得は急務です。
日本の音楽が世界により拡がるために、日本の音楽業界、そしてビルボードジャパンにもできることはまだまだあるはずです。そして日本の音楽ファンも、推す歌手の海外活動を支援したいと考えるならば音楽チャートの仕組みを知ることが重要と考えます。日本の楽曲は全体的には浸透しつつも、その時々で大ヒット曲が登場すれば注目度はさらに高まるでしょう。そのような楽曲の登場を願うばかりです。