イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

『超かぐや姫!』関連曲の音楽チャート人気を確認すると共に、今後のヒットに必要なことを考える

最新5月20日公開分(集計期間:5月11~17日)のビルボードジャパンアルバムチャートでは、Netflix映画『超かぐや姫!』の劇中歌を収めたオムニバスアルバムが総合4位に。2週ぶり、通算4週目となる最高位を記録したこの作品は、上半期チャートでトップ10入りする可能性が十分考えられます。

(上記CHART insightは有料会員が確認可能なもので、20位未満の指標順位も明示されています(ビルボードジャパンでは有料会員が知り得る情報の掲載を許可しています)。また、以下に紹介するCHART insightも同様に、有料会員が確認可能なものとなります。)

デジタルオンリーでのリリースゆえフィジカルセールス指標(CHART insightでは黄色で表示)が未加算である『超かぐや姫!』劇中歌集は、一方でストリーミング(青)が上位で安定。またダウンロード(紫)は常時10位以内に登場しています。

 

 

『超かぐや姫!』劇中歌集の勢いを支えているのは何か、ソングチャートの動向から確認することができます。

収録曲の中でビルボードジャパンソングチャート100位以内にも登場しているのが、かぐや(夏吉ゆうこ) & 月見ヤチヨ(早見沙織)「ray (超かぐや姫! Version)」。こちらもフィジカルは用意されていませんが、ダウンロードやストリーミングが安定していることが解ります。そしてこの2週における動画再生(CHART insightでは赤で表示)の上位進出には、THE FIRST TAKEの公開が大きく影響しています。

かぐや(夏吉ゆうこ) & 月見ヤチヨ(早見沙織)「ray (超かぐや姫! Version)」のCHART insightにて、最も高い位置に来ている折れ線グラフが茶色で表示されるUGCとなります。UGCとばユーザー生成コンテンツのことであり、”歌ってみた”や”踊ってみた”が代表的な動画となります。UGC動画による人気はTop User Generated Songsチャートにて可視化されているのですが、同曲はこのチャートでの安定が見て取れるのです。

(なおCHART insightにおけるピンクはハイブリッド指標を指します。BUZZ(ダウンロードおよび動画再生)、CONTACT(ダウンロードおよびストリーミング)そしてSALES(フィジカルセールス、ダウンロードおよびストリーミング)の3つから選択が可能です。)

 

『超かぐや姫!』劇中歌集のUGC人気は、かぐや(夏吉ゆうこ) & 月見ヤチヨ(早見沙織)「ray (超かぐや姫! Version)」にとどまりません。2026年度のTop User Generated Songsチャートでは『超かぐや姫!』劇中歌集収録曲が上位を席巻。とりわけ3月11日公開分では上位20曲のうち4位までを占めたほか、13位までに7曲が登場しています。下記はこのチャートでの毎週上位20曲を示した表であり、アルバム収録曲を色付けしています。

『超かぐや姫!』劇中歌集の中では、かぐや(夏吉ゆうこ) & 月見ヤチヨ(早見沙織)「ray (超かぐや姫! Version)」(上記表では薄いピンクで表示)の人気が最も高く、ryo(supercell)、かぐや(夏吉ゆうこ) & 月見ヤチヨ(早見沙織)「ワールドイズマイン (かぐや&月見ヤチヨ ver.) [CPK! Remix]」(黄色)が続いています。実は後者において、現時点ではCHART insightが分割にて表示されています。

ryo(supercell)、かぐや(夏吉ゆうこ) & 月見ヤチヨ(早見沙織)「ワールドイズマイン (かぐや&月見ヤチヨ ver.) [CPK! Remix]」のCHART insightは、2月4日公開分までのUGCのみを示したものと、2月4日公開分以降(UGCのみ2月11日以降)を示したものとで分かれていますが、この曲そしてかぐや(夏吉ゆうこ) & 月見ヤチヨ(早見沙織)「ray (超かぐや姫! Version)」のCHART insightからは、共にUGCにて最初に人気が出たことが解ります。

 

『超かぐや姫!』は1月22日にNetflixにて配信され、後に劇場でも公開。また劇中歌集は1月23日に配信リリースされています。ryo(supercell)、かぐや(夏吉ゆうこ) & 月見ヤチヨ(早見沙織)「ワールドイズマイン (かぐや&月見ヤチヨ ver.) [CPK! Remix]」がTop User Generated Songsチャートに初めて登場した1月28日公開分は1月25日までが集計期間であり、公開から4日分にてこのチャートに初めて登場しています。

かぐやとヤチヨの関係性、rayの歌詞と物語の対応関係など、本作は「1回の視聴では全容が掴めない」設計を意図的に組み込んでいる。これがXやTikTokでの考察UGCを爆発させた。重要なのは、これが「分かりにくい」のではなく「分かった瞬間の快感が大きい」という設計であること。マーケティングに置き換えれば、ブランドメッセージを一方的に完結させず、受け手が「自分で発見する余地」を残すことが、自発的な拡散の起点になる。

エンタメライター/マーケターの明坂真太郎さんはYahoo! JAPANのコラムにてこのように記しています。配信直後からのUGC人気はこの考察に伴うところが大きく、劇場公開も含む形で視聴者が増えたことでUGC人気(考察の共有)が高まったと想起されます。

 

そして『超かぐや姫!』の人気は、先述した「ray」のオリジナルとなるBUMP OF CHICKEN版にも波及しています。

2014年にソングチャートで最高2位を記録したBUMP OF CHICKEN「ray」は、直近の6週続けて総合100位以内に登場。100位以内復帰後の最高位は4月15日公開分における70位であり、動画再生指標が前週の63位から20位に躍進したことが大きく影響しています。これは4月15日公開分の集計期間前日夜にライブ動画を公開したことが要因です。

ビルボードジャパンの動画再生指標はISRC(国際標準レコーディングコード)が付番された動画がカウント対象となり、音楽パートナーと位置付けられたYouTubeチャンネル(歌手側、レコード会社、芸能事務所等)が付番可能。THE FIRST TAKEも音楽パートナーに該当します。ビルボードジャパンではアレンジの異なるバージョンはオリジナル版と合算されませんが、ISRCが共通していればアレンジ違いでも動画再生指標は合算可能です。

その点を踏まえれば、5月13日に公開されたryo(supercell)、かぐや(夏吉ゆうこ) & 月見ヤチヨ(早見沙織)「ワールドイズマイン (かぐや&月見ヤチヨ ver.) [CPK! Remix]」のTHE FIRST TAKE動画が5月20日公開分のビルボードジャパンソングチャートに反映され、同指標が初めて加点されたのみならず10位に登場したことについてもよく解るでしょう。

 

 

冒頭で紹介したように、『超かぐや姫!』劇中歌集はビルボードジャパンによる上半期アルバムチャートでトップ10入りする可能性が十分考えられます。例年通りのスケジュール進行ならば昨日までが2026年度上半期における各種チャート(一部を除く)の集計期間であり、そして上半期チャートは6月5日金曜午前4時に発表されるものとみられます。『超かぐや姫!』劇中歌集がどの位置に登場するか、注目です。

 

そしてアルバムのみならず収録曲の勢いを維持し、さらに高めるためには接触指標群の拡充が必要と考えます。UGC(Top User Generated Songsチャートの成績)は総合ソングチャートの加算対象外であるため、尚の事です。特に動画再生指標が強くなく、先述したようにryo(supercell)、かぐや(夏吉ゆうこ) & 月見ヤチヨ(早見沙織)「ワールドイズマイン (かぐや&月見ヤチヨ ver.) [CPK! Remix]」は最新週にて初めて加算された形です。

かぐや(夏吉ゆうこ) & 月見ヤチヨ(早見沙織)「ray (超かぐや姫! Version)」、およびryo(supercell)、かぐや(夏吉ゆうこ) & 月見ヤチヨ(早見沙織)「ワールドイズマイン (かぐや&月見ヤチヨ ver.) [CPK! Remix]」には共に公式ミュージックビデオが存在。共に複数のYouTubeチャンネルが公開元となり、YouTubeのコラボレーション投稿機能を用いていますが(同機能はこちらを参照)、『超かぐや姫!』公式チャンネルが最初に表示されます。他方、THE FIRST TAKEもコラボ投稿ながら、THE FIRST TAKEが優先表示されます。

 

先程は『ビルボードジャパンの動画再生指標はISRC(国際標準レコーディングコード)が付番された動画がカウント対象となり、音楽パートナーと位置付けられたYouTubeチャンネル(歌手側、レコード会社、芸能事務所等)が付番可能。THE FIRST TAKEも音楽パートナーに該当します』と記しましたが、アニメ公式やテレビ、制作会社のYouTubeチャンネルは付番対象外に。これが動画再生指標における強くなさの要因と考えられます。

(無論、ISRC付番可能なチャンネルでもISRCを付番していない(付番を徹底していない)ことで機会損失を招いていることがあります。ビルボードジャパンは付番するよう呼びかけを続けていますが(【Billboard JAPAN Chart】よくある質問 | Special | Billboard JAPAN参照)、仮にチャンネル側が付番を意識していないならば勿体ないことだと考えます。)

YouTube側が音楽パートナーの位置付けを拡げる(ことを検討する)ことも必要ながら、音楽チャートでより好い成績を収めることを意識するならば、コラボレーション投稿機能を用いて動画を発信する際に音楽パートナーをメイン(優先表示)とする形で公開し、ISRCをきちんと付番することが必要です。

 

そしてもうひとつ。ストリーミング指標はアルバムチャートでこそ強い一方、たとえばryo(supercell)、かぐや(夏吉ゆうこ) & 月見ヤチヨ(早見沙織)「ワールドイズマイン (かぐや&月見ヤチヨ ver.) [CPK! Remix]」においては4月22日公開分を最後にソングチャートのストリーミング指標で300位以内に入っておらず、加点されていません。ここから想起したのが、吉田夜世「オーバーライド」の動向を紹介した2年前のエントリーでした。

このストリーミング指標の獲得および強化が、ボカロPやVTuber等のネット音楽を広く音楽ファン、そして世間に浸透させるために必要なことではないかというのが私見です。

2年前のエントリーにて上記内容を掲載しましたが、ネットカルチャーのみならずアニメにおいても広く世間一般へ伝播するためには、それらのファンの方々がその界隈にとどまらない形で音楽に触れること、そして彼らがUGCを考察の域を超える形で用いることで音楽ファンを巻き込むことも必要かもしれません。