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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ドレイクのアルバム3作品同時リリースからみえてくる、サプライズリリースの変容と音楽チャートでの狙い

日本時間の5月15日金曜13時、ドレイクが3枚のアルバムを同時にリリースしました。『Iceman』についてはタイトルやリリース日が事前にアナウンスされていましたが、『Maid Of Honour』および『Habibti』は完全なサプライズリリースという形になります。

ドレイクが5月15日にリリースしたアルバム3作品の内容、そしてリリース日までの流れについては下記記事にて詳しく掲載されています。

『Iceman』は先月の段階で、5月15日にリリースされることが判明済。そして蓋を開けるとさらに2作のアルバムが用意され、3作同時の形でリリースされたことになります。また海外作品のリリースタイミングは米東部標準時の金曜0時が基本ながらヒップホップ作品では(特にビッグネームにおいて)それ以降になることも多かった中、ドレイクの3作品はその時間を厳守したことになります。

 

 

今回のリリース、また直後の反応から感じたのは、サプライズリリースが減っている状況下ゆえそのような形で登場した作品の注目度が高まっていること、そしてドレイクが音楽チャートでのインパクトをきちんと狙っているということです。

 

先述した記事にもあるように、ドレイクのアルバム3作品はケンドリック・ラマーとのビーフ以降、ソロ名義では初のリリースとなります(正確にはパーティーネクストドアとのコラボレーションアルバム『$ome $exy $ongs 4 U』が昨年2月にリリース済)。ケンドリック・ラマーはドレイクへのビーフとなる「Not Like Us」、そしてアルバム『GNX』(2024)およびその収録曲にて2年連続でグラミー賞を受賞していますが(主要部門含む)、その『GNX』はサプライズにて、現地時間の金曜午後にリリースされています。

アルバムのサプライズリリースについては、音楽界が驚いた00年代以降のサプライズ・リリース・アルバム16選 - ユニバーサルミュージック(2019年11月30日付)にて2019年11月までの主要作品がまとめられています。またそのような作品は英語版のWikipediaでも”Surprise Album”という名目にて紹介されていますが、そこではサプライズリリースが2021年以降減少傾向にあったと指摘されています。

Surprise album - Wikipedia

パンデミックを機に、歌手側がファンの関心を維持すべく告知やプロモーションに頼るようになったのが減少の理由とのこと。ドレイク自体、サプライズリリースとなった『Honestly, Nevermind』(2022)の初動が事前プロモートされた(ただしリリース日の告知がおよそ1週間前とみられる)『Certified Lover Boy』(2021)の3分の1となっています(613,000→204,000ユニット)。また一昨年以降、先述した『GNX』やジャスティン・ビーバー『Swag』(2025)等がサプライズリリースされていますが、減ったという印象です。

 

音楽チャート分析者としての私見と前置きして記すならば、たとえば米チャートの動向からは総合ないしストリーミング指標(アルバムチャートにおいてはSEA(ストリーミングのアルバム換算分)という名目)の上位作品における再生回数の減少がみられます。この指標に含まれていたYouTubeも1月31日付以降データ提供を停止し、状況は加速。ストリーミングの全体的な低下が、サプライズリリースの減少を呼んだかもしれません。

米ビルボードアルバムチャートの記事では初登場作品を主体に施策の内容が掲載されますが、そこからはフィジカルリリースへの注力(レコードの発売、またCDも含めた複数種リリース等)がみえてきます。予約販売をきちんと行うことで初動の増幅を狙っているのではと考えると共に、海外の音楽業界ではフィジカルリリースがより重要視されているものと捉えています。

その中でドレイク『Iceman』がフィジカルリリースを行っているかは不明ですが、しかし事前告知はリリース日への注目度を高め、またサブスクサービスでの事前予約につながります。その行動を促すべく、『Iceman』では1ヶ月前からリリース日を告知したのではないでしょうか。

 

 

それでもドレイクは、事前告知の『Iceman』と合わせて、『Maid Of Honour』および『Habibti』をサプライズの形でリリースしています。その背景を考えるに、音楽チャートを占拠すること、もっといえばケンドリック・ラマーから奪取することが浮かび上がるのです。

 

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(画像は米ビルボードのチャート専用Xアカウント(→こちら)より。)

ケンドリック・ラマー『GNX』は2024年12月7日付米ビルボードアルバムチャートで319,000ユニットを獲得し首位初登場、そして同日付ソングチャートではトップ5を占め、10位以内には計7曲を送り込んでいます((追記あり)【海外ビルボード】ケンドリック・ラマーが米ソングチャートで史上4組目となるトップ5独占(2024年12月3日付)参照)。このライバルの占拠について、ドレイクは意識したのではないでしょうか。

アルバム3作品のリリース日となる5月15日付では、ドレイク『Iceman』収録の18曲が米Spotifyデイリーチャートで18位までを占拠。またその他2作品の収録曲も76位までにすべて登場しています。それに伴い、5月15日を集計期間初日とする5月30日付米ビルボードアルバムチャートではドレイクの3作品が4位までにすべて入るのではという見方が生まれています。そして、同日付ソングチャートにて上位を占めるかもしれません。

注目は米ビルボードによる上記発信。米ビルボードは注目すべき作品がリリースされる際、その作品がチャートにインパクトをもたらすと感じた場合は塗り替える可能性のある記録について前もってアナウンスすることがあります。ドレイクのアルバム3作品に収録された計43曲が5月30日付米ビルボードソングチャートですべてランクインする可能性を踏まえ、上記の発信をアルバムリリース日に行ったのではというのが私見です。

 

 

ドレイクによる3作品収録曲の日々のサブスク動向もさることながら、5月30日付米ビルボードアルバムチャートにて『Iceman』『Maid Of Honour』および『Habibti』がトップ3を占めるか、そして3作品の収録曲が同日付ソングチャートでどれだけ占めるかが今後の注目点です。加えて、ドレイクの初登場に伴いソングチャートにてリカレントルールに抵触し、チャートから外れる曲がどれだけ出てくるかを注視する必要があります。

ただしこれはあくまで初動(初週)の話であり、ドレイクの作品が今後聴かれ続け、チャートでインパクトを残し”続ける”かがより重要と考えます。

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(画像は米ビルボードのチャート専用Xアカウント(→こちら)より。)

ケンドリック・ラマーは昨年「Not Like Us」がグラミー賞を受賞、さらに直後のスーパーボウルハーフタイムショーにてヘッドライナーを務めたことで、「Not Like Us」および『GNX』収録曲が米ビルボードソングチャートでまたも上位を占めた実績があります。無論この上昇はイレギュラーな事態ではあるのですが、長く支持される曲が注目の出来事に伴い再浮上しやすいという今のチャート動向を示す見本ともいえるでしょう。

(2025年2月22日付米ビルボードソングチャートについては、(追記あり)【海外ビルボード】スーパーボウルハーフタイムショー効果、ケンドリック・ラマーが米トップ3独占(2025年2月19日付)にて紹介しています。)

 

 

ドレイクがアルバム3作品にて音楽チャート、そして業界内外でどれだけインパクトを残すかについて、注目していきます。