最新4月25日付の米ビルボードソングチャートはエラ・ラングレー「Choosin' Texas」が通算7週目の首位に。同曲を収録した『Dandelion』も同日付米ビルボードアルバムチャートを制しています。
一方で、個人的に気になることがあります。それがラジオでの”強くなさ”です。
エラ・ラングレー「Choosin' Texas」はストリーミングが前週比15%アップの3070万(同指標通算8週目の首位)、ダウンロードが同16%アップの10,000(同指標2位)、ラジオが前週とほぼ変わらず4250万(同指標9位)を記録しています。
最新4月25日付米ビルボードソングチャートにおけるエラ・ラングレー「Choosin' Texas」の構成3指標動向を上記に。ストリーミングの上昇はアルバム初登場時ゆえ自然と思われますが、ラジオがほぼ変わっていないということが気になっています。
一方でアルバムからは「Choosin' Texas」同様に先行解禁された「Be Her」がトップ5入り、またアルバムの初登場週でもあり、ラジオにおいていわゆる票割れが起きたとも考えられます。それでもアルバムリリース週に「Choosin' Texas」のラジオ指標がそこまで動かなかったこと、ましてやラジオに強いカントリー作品での今回の動向に引っ掛かりを覚えた次第です。
では、2020年度以降の米ビルボードソングチャートで7週以上首位を獲得した曲の、7週目における構成3指標の数値および順位をみてみます。
<2020年度以降の米ビルボードソングチャート 7週目首位獲得時の構成3指標動向>
・ロディ・リッチ「The Box」(2020年2月29日付)
ストリーミング5220万(1位)、ダウンロード11,000(7位)、ラジオ5930万(10位)
・ダベイビー feat. ロディ・リッチ「Rockstar」(2020年8月1日付)
ストリーミング3620万(1位)、ダウンロード11,000(5位)、ラジオ6210万(2位)
・24Kゴールデン feat. イアン・ディオール「Mood」(2021年1月9日付)
ストリーミング1750万(5位)、ダウンロード7,000(6位)、ラジオ8230万(1位)
・オリヴィア・ロドリゴ「Drivers License」(2021年3月6日付)
ストリーミング2150万(3位)、ダウンロード13,000(2位)、ラジオ6730万(2位)
・BTS「Butter」(2021年7月17日付)
ストリーミング1080万(26位)、ダウンロード108,800(1位)、ラジオ2910万(21位)
・ザ・キッド・ラロイ with ジャスティン・ビーバー「Stay」(2021年10月16日付)
ストリーミング2320万(3位)、ダウンロード7,400(10位)、ラジオ8640万(1位)
・アデル「Easy On Me」(2021年12月18日付)
ストリーミング 2070万(7位)、ダウンロード9,200(6位)、ラジオ8540万(1位)
・マライア・キャリー「All I Want For Christmas Is You」(2022年1月1日付)
※ 初の首位獲得は2019年12月21日付であり、7週目到達はその2シーズン後
ストリーミング4750万(1位)、ダウンロード8,100(6位)、ラジオ3200万(13位)
・ハリー・スタイルズ「As It Was」(2022年6月25日付)
ストリーミング2240万(3位)、ダウンロード6,000(10位)、ラジオ7700万(2位)
・テイラー・スウィフト「Anti-Hero」(2023年1月14日付)
ストリーミング1720万(4位)、ダウンロード6,000(1位)、ラジオ8380万(1位)
・マイリー・サイラス「Flowers」(2023年3月25日付)
ストリーミング2820万(2位)、ダウンロード15,000(2位)、ラジオ1億670万(1位)
・モーガン・ウォレン「Last Night」(2023年5月27日付)
ストリーミング3300万(1位)、ダウンロード9,000(2位)、ラジオ6330万(5位)
・シャブージー「A Bar Song (Tipsy)」(2024年8月31日付)
ストリーミング3250万(2位)、ダウンロード13,000(2位)、ラジオ8820万(1位)
・ケンドリック・ラマー & シザ「Luther」(2025年4月12日付)
ストリーミング2440万(1位)、ダウンロード2,000(21位)、ラジオ6100万(1位)
・アレックス・ウォーレン「Ordinary」(2025年7月26日付)
ストリーミング1960万(4位)、ダウンロード6,000(1位)、ラジオ7300万(1位)
・HUNTR/X(イジェ、オードリー・ヌナ & レイ・アミ)「Golden」(2025年10月4日付)
ストリーミング3380万(1位)、ダウンロード8,000(2位)、ラジオ3390万(9位)
・テイラー・スウィフト「The Fate Of Ophelia」(2025年11月29日付)
ストリーミング2340万(1位)、ダウンロード19,000(2位)、ラジオ6280万(3位)
・エラ・ラングレー「Choosin' Texas」(2026年4月25日付)
ストリーミング3070万(1位)、ダウンロード10,000(2位)、ラジオ4250万(9位)
長期首位獲得曲は基本的にラジオが高く推移する傾向にあります。これは接触指標のうち、ストリーミングよりもラジオのピークが後になるため。またラジオは保守的と呼ばれ、ヒップホップよりもカントリーが好まれる、英語以外の言語の楽曲が上位に来づらい、季節に関わる曲は上昇しにくい等の傾向がみられます。ロディ・リッチやBTS、またマライア・キャリー「All I Want For Christmas Is You」の動向はそれゆえといえます。
カントリーは保守的ながら、最近は若手を中心にストリーミングで支持を集める歌手が登場。最たる例がモーガン・ウォーレンとなります。そのモーガンによる「Last Night」も総合チャート7週目の首位獲得時にラジオ指標5位と高くはないのですが、エラ・ラングレー「Choosin' Texas」は韓国発のHUNTR/X(イジェ、オードリー・ヌナ & レイ・アミ)「Golden」と、7週目首位獲得時におけるラジオ指標の順位が同じなのです。
これら傾向や状況を踏まえれば尚の事、エラ・ラングレー「Choosin' Texas」の9位という状況は異例ではと捉えています。
エラ・ラングレー「Choosin' Texas」においてラジオ人気が高くないという背景には先述した票割れも考えられます。ストリーミングとは異なりラジオでかかる音楽の総数には上限があるというのがその根拠なのですが、もうひとつ思い浮かぶことがあります。それは”分断”です。
Rock The Country 2026🇺🇸
— Rock The Country (@rockthecountry_) 2026年1月12日
Sign up now for presale that starts Friday, January 16th at 10am local. Layaway plans available for all ticket types start at $2.50 down.https://t.co/3PEg7WzEsi pic.twitter.com/6n0QhAOPcM
上記は複数都市で今年開催する、Rock The Country Festivalのポスト。ここにはエラ・ラングレーの名もありますが、最初に登場するキッド・ロックは米大統領の熱心な支持者であり、スーパーボウルハーフタイムショーへのバッド・バニー出演を拒絶し自身が出演するショーをその真裏で行っています。
当時のブログエントリーで紹介したように、この音楽フェスからはリュダクリスやクリードが後に離脱を表明。そして同じく離脱したシャインダウンの声明を掲載した上で、このような私見を記しました。
シャインダウンの決定には苦悩の跡がみえつつも、分断を望まぬ姿勢を感じます。それに対するキッド・ロックの反応を想像するだに恐ろしいのですが、しかしこの決定がRock The Country Festivalのカラーをより明確にさせたといえるのではないでしょうか。実際このイベントは"MAGAフェス"と呼ばれ、現米大統領の熱狂的支持層による政治運動と形容されているゆえ、尚の事です。
その後この音楽フェスからは離脱の報道はなく、エラ・ラングレーも参加するものと思われます。この音楽フェスの性質を踏まえれば、イベント参加者の音楽自体を(民主党支持というよりは現政権不支持というスタンスとして)オンエアしないというラジオ局が出てきてもおかしくないのではというのが、自分の見方です。
Rock The Country Festivalでキッド・ロックの次に名を連ねるジェイソン・アルディーンは、「Try That In A Small Town」が2023年8月に米ソングチャートを制覇。その際はストリーミング3070万(3位)、ダウンロード175,000(1位)およびラジオ880万(50位未満)を記録しており、ラジオが極端に少ない状況です。
長期首位に至ったならば状況は変わったかもしれませんが、しかしミュージックビデオ等での差別表現がラジオ局の拒否反応につながったと仮定すれば、ラジオは政治を反映しているといえるでしょう。