イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

昨年さらなるブレイクを果たしたtimelesz、トップアーティストチャートの動向から考えることについて

一昨日は以下のエントリーを掲載しました。

そのエントリーの最後に紹介したトップアーティストチャートの推移(CHART insight)に驚いた方もいらっしゃるかもしれません。ソングチャートとアルバムチャートを合算するこのチャートの最新4月8日公開分におけるCHART insightをみると、オーディション開催に伴い昨年ブレイクを果たしたtimeleszとHANAとでは動向が大きく異なるのです。

(上記CHART insightは有料会員が確認可能なもので、20位未満の指標順位も明示されています(ビルボードジャパンでは有料会員が知り得る情報の掲載を許可しています)。また、以下に紹介するCHART insightも同様に、有料会員が確認可能なものとなります。)

両者は、棒グラフで示される総合順位に大きな差が生じています。結論を先に申し上げればtimeleszがデジタルに強くない、もっといえば”明るくない”ことが大きいのですが、今回はこの半年ほどで頭角を現した男性アイドル/ダンスボーカルグループとも比較し、デジタルに明るくなっていない状況に対する私見を記します。

 

 

timeleszは昨年2月末、8人体制下初の楽曲「Rock this Party」、および追加メンバーを決めるオーディション『timelesz project』にて使用した楽曲を主体とするデジタルコンピレーションアルバム『Hello! We're timelesz』を配信し、サブスク解禁を果たします。一方で「Rock this Party」を含むアルバム『FAM』はフィジカルリリースのおよそ半年後にデジタルリリースされた形です(下記記事参照)。

ビルボードジャパントップアーティストチャートにおけるtimeleszのCHART insightをみると、ストリーミング指標(青で表示)は二度のデジタル解禁時に上位進出を果たしつつも、その後下降傾向に。timeleszは昨年11月に8人体制下初のシングル「Steal The Show」をフィジカルリリースしていますが、現在もデジタル解禁されていません。なお体制変更前後での初週フィジカルセールスはシングルがおよそ1.88倍(277,505→520,300枚)、アルバムがおよそ6.2倍(104,744枚(EP)→649,529枚)と、共に大きく伸びています。

ちなみに、先述した「Steal The Show」のミュージックビデオはYouTubeにて、”YouTube Ver.”という短尺版にて公開されています。この点については後述します。

 

 

では、timeleszのトップアーティストチャートにおける動向を、この半年で活躍が目覚ましい男性アイドル/ダンスボーカルグループと比較します。

 

この半年で大きくブレイクしたといえばM!LKが真っ先に浮かぶのではないでしょうか。実際、冒頭で紹介した”ヒットの8段階”表でも好事例として採り上げています。

M!LKは「好きすぎて滅!」のヒットでトップアーティストチャートの常連に躍り出たのみならず、その後の「爆裂愛してる」で安定に至ったといえます。何よりストリーミングのヒットが大きく、動画再生(CHART insightでは赤で表示)も順調に推移している上、カラオケ(緑)も徐々に上昇し安定局面に。これは先程のHANAにおいても同様です。他方フィジカルセールス(黄色)やラジオ(黄緑)は安定が難しいことが解ります。

 

続いてはMAZZEL。公式YouTubeチャンネル内番組『まぜべや』でのNAOYAさんの発言が昨年のモデルプレス流行語大賞で3位に入ったことも注目度を高め、また各メンバーのソロ活動も相まって、NAOYAさん主演ドラマの主題歌に起用された「Only You」がキャリア最高の成績を収めたのみならず、ファーストアルバム『Parade』がロングヒットのフェーズに。最新アルバム『Banquet』は明日公開のチャートにて初登場予定です。

MAZZELにおいて注目は、動画再生指標が2025年11月12日公開分以降一度も100位未満に至っていないこと。所属するBMSGは音楽チャート施策に長け、特に新曲リリース週における複数の動画投稿を徹底していますが、動画再生指標が継続的な人気に至っているのは「Only You」への高い注目のみならず、『まぜべや』の人気に伴いYouTubeチャンネルの滞在時間が伸び、公開動画全体への視聴に波及したといえるかもしれません。

 

公式YouTubeチャンネル内ではMAZZELやM!LKをはじめ、様々な男性アイドルやダンスボーカルグループがバラエティ要素の強い番組を定期的に公開しています。他方timeleszは直近2か月においてYouTube専用に制作された番組がほぼない模様であり、ともすればこの状況も楽曲関連動画への波及(する/しない)につながっているのではと推測しています。

ただしtimeleszは4月から『タイムレスマン』(フジテレビ)の放送がプライムタイムに繰り上がり、また日本テレビでもレギュラー番組が日曜昼帯に移行、加えてTBSでは冠特番が複数回組まれています。菊池風磨さんが”死ぬほど売れたい”と切望する姿がクローズアップされていますが、現在の状況を踏まえれば、売上枚数やレギュラー本数等以前から存在する尺度での上昇や結果をより重視しているのではと察した次第です。

 

 

CHART insightに話を戻すと、公式YouTubeチャンネル内番組はSTARTO ENTERTAINMENT所属歌手でも定期的に発信されています。その中でミュージックビデオ公開時に短尺版(”YouTube Ver.")での公開をtimelesz共々採用しているSixTONESのCHART insightをみると、今年に入りストリーミング指標の(変動は比較的大きいながらも)安定が見て取れます

SixTONESは今年ベストアルバムをリリース。サブスク解禁はフィジカルシングル表題曲をまとめたディスク1のみという点に留意する必要はありますが、他方timeleszが現時点でシングル表題曲をすべて解禁しているわけではないこともCHART insightの差につながったのではと考えます。トンチキソングを歌うM!LKのブレイクを踏まえれば尚の事、Sexy Zone時代も含めサブスク解禁していたならば状況は変わったかもしれません。

 

 

4月29日にニューアルバム『MOMENTUM』をフィジカルリリースするtimeleszは、既に複数の収録曲のミュージックビデオを短尺版にて解禁しています。その中のひとつが「4分間だけ時間をください」ですが、”YouTube ver.”は実際の尺より短くなっています。

なお今回公開されたMVはYouTubeサイズだが、CD収録音源はタイトル通りちょうど4分尺になっている。

ちょうどの尺、そしてミュージックビデオでその時間(経過)を示す曲として、東京事変「能動的三分間」(2009)を想起する方は少なくないでしょう。timelesz「4分間だけ時間をください」のミュージックビデオでタイマー演出がどこまで行われるかは分かりかねますが、その演出が施されていたとして「能動的三分間」のミュージックビデオで味わえるカタルシス等の格好良さがYouTubeを介して流布されないのは勿体無く感じます。

トップアーティストチャートにおけるtimeleszのCHART insightをみると、動画再生指標は途切れがちになっていることが解ります。今後の動向を注視する必要はありますが、この点からは短尺版での公開に対するネガティブな反応がみえてくるかもしれません。

 

 

8人体制となったtimeleszはフィジカルセールスが大きく上昇、地上波冠番組も複数持つ等、成功を収めていることは間違いないでしょう。それでも、すべてのコアファンがずっとその位置にとどまり続けることはないため、いつ何時でもコアファンに昇華し得るライト層を常に確保することは重要であり、楽曲にて惹きつけるには触れやすい環境を用意することが必要と考えます。その成果はM!LKやMAZZELの動向からも明らかです。

直近の初週フィジカルセールスにおいて、たとえばM!LK「爆裂愛してる」「好きすぎて滅!」(ダブルAサイド)は前作のおよそ3.3倍(184,542→615,808枚)、MAZZEL『Banquet』はおよそ2.8倍(34,213→95,655枚)となっています。話題となった歌手の作品はサブスクに明るくともフィジカルセールスでも結果を出していることが解ります。

 

timeleszには、【Sexy Zone時代を含めデジタル(サブスク含む)を解禁する】【フィジカルリリース時までにデジタルを解禁する】【ミュージックビデオをフルバージョンで公開する】、また【公式YouTubeチャンネルにて定期的にバラエティ番組を配信する】ことを提案します。後者においては地上波冠番組とタッグを組み、timeleszの公式YouTubeチャンネル向けコンテンツを用意することも好いかもしれません。

 

 

最後に。デジタル未解禁やミュージックビデオの短尺版公開は今も日本で少なくありません。STARTO ENTERTAINMENT(前身となるジャニーズ事務所)のこれまでの姿勢も踏まえ、不完全な状況でも納得する方は日本では多いと思われます。しかしながら、海外から日本の音楽へのアクセスが容易になった状況下で、海外の音楽ファンはそのことをどう捉えるでしょう。日本の業界も市井も慣例について常に考える(疑う)ことが必要です。