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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

BTSが米ビルボードチャートを席巻…その原動力は何か、そして今後を読む

最新4月4日付米ビルボード主要チャートは、BTSが制覇。そのうちソングチャートおよびグローバルチャート(Global 200、およびGlobal 200から米の分を除くGlobal Excl. U.S.)については昨日付エントリーにて紹介しています。また、ブログエントリー以外の内容については同日付noteでまとめています。

上記公開の後、米ビルボードは『ARIRANG』収録14曲のうち13曲が米ソングチャート100位にエントリーを果たしたと発表。さらにBTSは歌手別チャート(Artist 100)も制しています。2014年から始まった歌手別チャートでは通算22週目の首位となり、BTSはテイラー・スウィフト(137週)、ドレイク(38週)、モーガン・ウォーレン(34週)そしてザ・ウィークエンド(29週)に続く首位獲得に至っています。

今回はこれら最新チャートの動向を踏まえ、BTSにおけるチャートの原動力を推察します。

 

 

米ビルボードによる最新4月4日付米アルバムおよびソングチャートについては、ビルボードジャパンが翻訳記事を掲載しています。

641,000ユニットを記録しアルバムチャートを制したBTS『ARIRANG』について、個人的に注目したのは構成3指標のうち数値が最も小さい傾向にあるTEA(単曲ダウンロードのアルバム換算分)。今回記録した14,000は、2024年5月4日付で首位初登場を果たしたテイラー・スウィフト『The Tortured Poets Department』(261万ユニットのうち14,000)以来の数値に。『ARIRANG』におけるTEAの割合の大きさが解るでしょう。

(ちなみにテイラー・スウィフトは最新作『The Life Of A Showgirl』初登場時(2025年10月18日付)においてTEAがゼロとなっていましたが、これは同作品がリリース週にて単曲ダウンロードを許可していなかったことに伴います。)

 

米ビルボードソングチャートを初登場で制した「SWIM」のダウンロード数(154,000)は、2月28日付におけるテイラー・スウィフト「Opalite」(168,000)以来の水準に。「Opalite」はレコードリリース、またリミックス等の登場が原動力となっています((追記あり)【海外ビルボード】テイラー・スウィフト「Opalite」、ダウンロード指標が大きく上昇し米で総合首位に(2月24日付)参照)。

「SWIM」においてはアルバムリリース週半ばにインストゥルメンタル版が、直後にはメンバー7名それぞれをメインに据えたジャケット版がデジタルリリースされており、今回の数値は先述したアルバムチャートのTEAともリンクしているといえます。興味深いのはそのリリースがアナウンスされ実績を上げるたびに、予想精度の高さで知られるXアカウントのTalk of the Chartsが「SWIM」の初登場位置を上げているということです。

上記予想はファンダム(”コアファンの中で音楽チャートに意識的な方の集まり”と定義)に浸透し、単曲ダウンロードの重要性を高めたものとみています。そしてBTSにおける米ビルボード各種チャートの制覇は、歌手のみならずファンダムにおいても至上命題だったのではないかと、勝手ながら推測しています。メンバーのRMは今回の記録達成に言及していますが、この発信はファンダムとの喜びの共有にもつながっています。

 

『ARIRANG』は『Proof』(2022年6月25日付 314,000ユニットを獲得し首位初登場)以来、通算7作品目の首位を獲得。一方でカムバックまでの間にStray Kidsが、『Do It』で昨年末にキャリア8作品目の首位を記録しています(2025年12月6日付 295,000ユニット)。BTSはK-POP界を切り拓いた者として存在感を示すという意志があったというのが私見であり、今作のユニット数は前作、そして『Do It』の倍以上を記録しています。

 

加えて、音楽チャートの制覇は米ビルボードへの”リベンジ”という意味もあったのではと考えます。米ビルボードは2020年以降複数回のチャートポリシー(集計方法)変更を行っていますが、大半はダウンロード指標の厳格化であり、また1月31日付以降はYouTubeのデータ提供が停止されています。所有指標やYouTubeは特にアイドルやダンスボーカルグループが強く、BTSはチャートポリシーの面でも逆風に立たされていました。

さらに、JIMINによるソロ曲「Like Crazy」は3年前に米ビルボードソングチャートを制した翌週、40位台へ急落。米ビルボードによるチャートポリシー変更が影響したとみられるもののその米ビルボードが変更の旨を明確にしていなかったこともあり、首位獲得直後の変更はファンからの非難につながっています。そのような背景が、BTSそしてファンダムによる米ビルボードへのリベンジにつながったというのが私見です。

 

 

さて、このブログ等で幾度となくお伝えしているように、重要なのは週間単位での上位進出もさることながらそれ以上にロングヒットであり、年間チャートに登場し社会的ヒットに至るかだと捉えています。ゆえに、少なくとも上位進出の翌週における動向をチェックすることが必要です。

<米ビルボードソングチャート BTSの首位獲得7曲における首位到達週の3指標動向>

・「Dynamite」(2020年9月5日付)

 ストリーミング3390万(3位)、ダウンロード300,000(1位)、ラジオ1160万(50位未満)

 初登場首位→翌週首位

・「Savage Love (Laxed - Siren Beat)」(ジョーシュ・シックスエイトファイヴ × ジェイソン・デルーロ × BTS名義) (2020年10月17日付)

 ストリーミング1600万(14位)、ダウンロード76,000(2位)、ラジオ7060万(5位)

 首位→翌週6位(※名義は”ジョーシュ・シックスエイトファイヴ × ジェイソン・デルーロ”に変更)

(※ 米ソングチャートは様々なバージョンが合算されますが、首位獲得週においてはBTS参加版が様々なバージョンの中でマジョリティとなったためBTSが追加クレジットされた形です。)

・「Life Goes On」(2020年12月5日付)

 ストリーミング1490万(14位)、ダウンロード150,000(1位)、ラジオ41万(50位未満)

 初登場首位→翌週28位

・「Butter」(2021年6月5日付)

 ストリーミング3220万(4位)、ダウンロード242,800(1位)、ラジオ1810万(39位)

 初登場首位→翌週首位

・「Permission To Dance」(2021年7月24日付)

 ストリーミング1590万(8位)、ダウンロード140,100(1位)、ラジオ110万(50位未満)

 初登場首位→翌週7位

・「My Universe」(コールドプレイ & BTS名義) (2021年10月9日付)

 ストリーミング1150万(21位)、ダウンロード127,000(1位)、ラジオ550万(50位未満)

 初登場首位→翌週12位

・「SWIM」(2026年4月4日付)

 ストリーミング1530万(2位)、ダウンロード154,000(1位)、ラジオ2580万(18位)

 初登場首位

ロングヒットには接触指標群の上位安定が欠かせません。そのうちストリーミングは初週から強く、一方でラジオは徐々に上昇する傾向にあるのですが、BTS「SWIM」はYouTubeがデータ提供を取り止めている状況下でストリーミング指標にてキャリア最高位を達成、そしてラジオは初登場時におけるキャリア最高位を更新しています。

個人的にはラジオに注目しています。この指標はユーザー(リスナー)に選曲権がないため受動的な接触という特殊なものです。また保守的な動きが強く、外国語曲はあまり伸びない傾向にあります。その中でBTS「SWIM」が初登場週にてトップ20入りしたことの意味は極めて大きいと考えます。

<米ビルボードポップエアプレイチャートにおけるK-POP曲のトップ10ヒット>

・最高1位 (通算5週) ロゼ & ブルーノ・マーズ「APT.」(2025年2月1日付以降)

・5位 BTS「Dynamite」(2020年12月19日付)

・7位 FIFTY FIFTY「Cupid」(2023年8月5日付)

・7位 BTS「Butter」(2021年8月7日付)

・10位 HUNTR/X(ハントリックス)(イジェ、オードリー・ヌナ & レイ・アミ)「Golden」(2025年9月13日付)

・10位 PSY「Gangnam Style」(2012年10月27日付)

 

 

『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』発、HUNTR/X「Golden」が米ラジオ界でも存在感を高めることの意義(2025年9月12日付)より

米ビルボードポップエアプレイチャートは米ビルボードソングチャートのラジオ指標と異なりますが、このチャートでトップ10入りしたK-POP曲は世界的に知られているものばかりといえるでしょう。そして「SWIM」はこのポップエアプレイチャートにて、キャリア初となる初登場時でのトップ20入りを果たしています。

たとえばHUNTR/X(イジェ、オードリー・ヌナ & レイ・アミ)「Golden」は、最終的に総合ソングチャートのラジオ指標を制しています。ラジオヒットが多くないK-POPにおいて、BTS「SWIM」の米ビルボードポップエアプレイチャートにおける順位からは業界内のそして広くアメリカ国内での支持が読み取れるといえるかもしれません。

 

このラジオの動向を踏まえれば、BTS「SWIM」は次週のチャートで所有指標の反動に伴いトップ10内から仮に脱落するとして(Talk of the Chartsによる初期予想は9位に)、しかしながら接触指標群の安定に伴い長期ヒットに至る可能性が考えられます。

BTS SWIM 7" Vinyl - Official BTS Music Storeより

 

※ リンク先を開いた際、ウイルス対策ソフトからの警告が発せられる場合があります。このリンク先は、BTSの所属レコード会社であるインタースコープレコードの公式Xアカウントにて紹介されたものです(ポストはこちら)。

また上記はBTSの米公式ショップにおける「SWIM」レコード販売の状況をキャプチャしたものですが、注目はこのレコードの出荷が4月10日金曜となっている点。金曜は米ビルボードによる米ソングチャートの集計期間初日であり、レコード売上が加わる4月25日付ソングチャートでの再浮上が考えられます。その際、ストリーミングおよびラジオが高位置に就いているならば、「SWIM」の存在感は高まるはずです。

 

 

最後に。『BTSにおける米ビルボード各種チャートの制覇は、歌手のみならずファンダムにおいても至上命題だったのでは』と先程記しましたが、グラミー賞を見据えたものでもあるのではというのが私見です。

以前BTSがグラミー賞受賞に至れなかったことについて、弊ブログでは音楽チャートの内訳を理由に挙げています。総合チャートを長期で制しながらも原動力は所有指標主体であり、ライト層への浸透に課題があったというのが私見です。また最近のグラミー賞はジェンダーや人種のバランスを考慮し投票会員を増やしたことで尚の事、米ビルボードで社会的ヒットに至った作品/歌手が主要部門で候補入りする傾向にあるといえます。

その意味でも、BTS『ARIRANG』そして「SWIM」のロングヒットは必須であり、今後のチャート動向に注目する必要があるというのが音楽チャート分析者としての見方です。