3月18日公開分のビルボードジャパンソングチャート、ストリーミング指標の基となるStreamimg SongsチャートではM!LK「爆裂愛してる」が2位、米津玄師「IRIS OUT」が3位に。一方で再生回数は前者が8,016,705回再生、後者が8,016,891回再生となり、「IRIS OUT」が勝っている状況です。順位の逆転はビルボードジャパンのチャートポリシー(集計方法)に基づくものですが、今回の結果や集計方法からは様々な状況が想起可能です。
ビルボードジャパンによる3月18日公開分Streamimg Songsチャートの記事はこちら。2曲の順位は、総合ソングチャートにおけるストリーミング指標でも同様です。
また、当週で2位と3位が入れ替わり、M!LK「爆裂愛してる」が2週ぶりに2位へ返り咲いている。しかし、3位の米津玄師「IRIS OUT」とのポイント差はわずか約0.5ポイント。さらに再生回数としては「IRIS OUT」がごくわずかに上回ったものの、当チャートの集計方法(無料ストリーミングと有料ストリーミングの係数差)によって「爆裂愛してる」がチャート順位としては上回るという、稀にみる接戦となった。
(中略)
(※)当チャートは、一部サービスにおけるデータを無料ストリーミングと有料ストリーミングで分けて集計のうえそれぞれ異なる係数を乗じ、ポイント化したものをランキングとして発表しています。その影響で、累計ポイント数と再生回数にずれが発生しておりますが、順位は掲載のものが正式です。
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— Billboard JAPAN(ビルボードジャパン) (@Billboard_JAPAN) 2026年3月18日
この結果から言えることはいくつかあります。M!LK「爆裂愛してる」のストリーミング再生回数に占めるサブスクサービス有料会員の割合が米津玄師「IRIS OUT」より高いということ、アニメ関連曲はストリーミング有料会員による再生割合が高くない可能性、そしてアイドルやダンスボーカルグループにおいては有料会員による再生割合が高いのではということ。想像の域を超えない部分もありますが、以下に私見を記します。
特大ヒット曲は社会的浸透度が高く、ライト層(曲は気になるが歌手のファンというわけではない方)の割合が元来高いとみられます。加えて、アニメ主題歌の場合は歌手のファンのみならずアニメ作品のファンも聴取する傾向が高いと考えられますが、アニメ作品のファンはストリーミングサービスの有料会員である可能性が高くないのではと捉えています。
このことは、米ビルボードにおけるグローバルチャートでトップ10入りした日本の楽曲のうち特にアニメ関連において、ストリーミング再生回数に占めるSpotifyの割合が高くないという傾向から想起しています。またタイアップ先のアニメ作品が放送や上映が続いている場合は既に終了した作品よりも関連曲のサブスクサービス無料会員による再生回数が多いだろうことが、今月の別の週における動向から読めます。
8位「ライラック」Mrs. GREEN APPLE(5,982,006回再生)
9位「AIZO」King Gnu(5,985,384回再生)
【ビルボード】嵐、「Five」で自身初のストリーミング・ソング首位獲得 初の週間1,000万再生超えも達成 https://t.co/159abzTw7U
— Billboard JAPAN(ビルボードジャパン) (@Billboard_JAPAN) 2026年3月11日
M!LK「爆裂愛してる」も社会的ヒットに至る可能性が高いと考えられますが、そのM!LKはひとつ前のリリース曲である「好きすぎて滅!」に至るまでフィジカルシングル表題曲を主体にLINE MUSIC再生キャンペーンを実施してきました。歌手のプレミアムグッズ等をプレゼントに据える当該キャンペーンは、そもそもLINE MUSIC有料会員のみが参加できるものです。
さらにはここ最近、音楽チャートに高い意識を持つファンダムも増えている傾向にあると捉えており、M!LKにおいてもファンダムが形成されているかもしれません。そしてそのファンダム内で”サブスクサービス有料会員による1回再生のウエイトが無料会員のそれより高い”との認識が浸透しているならば、M!LK「爆裂愛してる」において有料会員による再生回数割合が高いと捉えていいのではないでしょうか。
今回LINE MUSICアプリ内の「My推し」スペースに追加された新機能「10ミニッツレーダー」は、「My推し」に登録した推しアーティストの楽曲がランキングに入っている場合※に、順位の変化を10分ごとにチェックできる機能です。
これまで1時間単位で把握していたランキングの動きを、より詳細に可視化することで、楽曲のリリース直後や、ランキングが動きやすい時間帯における「順位が上昇している」「もう一押しが必要」といった状況を素早く把握できる新体験が可能となります。
推しの“いま”の動きをリアルタイムで感じながら、再生やシェアといった応援行動につなげられる点が特長で、ファンにとって、これまで以上に能動的で参加感のある推し活(再生)体験を提供します。
※ソング / アルバム / ニューソングのリアルタイムランキングの200位以内にランクインした曲のみが表示されます。
LINE MUSICは昨年実装された”My推し”にて、同年末に新機能を加えています。こちらは無料会員でも利用できるとみられますが、ファンダムの音楽チャートへの意識を高めるには十分な機能です。またリスニングパーティの定番サービスとなったStationheadはSpotifyを紐付けていますが、こちらは有料会員のみが参加可能となります。
Shoutout to this week's top Fan Channels! 📈
— STATIONHEAD (@STATIONHEAD) 2026年3月24日
1⃣ BTS ARMY #BTS
2⃣ iLYs #Number_i
3⃣ BESTY #BEFIRST
4⃣ BEUS #BUS
5⃣ JAM #JO1
6⃣ MINI #INI
7⃣ Tiara #KingandPrince
8⃣ Stays #StrayKids pic.twitter.com/SSRFe0Nq4P
Stationheadの直近における人気チャンネルは男性アイドル/ダンスボーカルグループで占められています。このことも、このジャンルのファンダム内で音楽チャートへの意識が高まっていることを示すに十分でしょう。
尤も今回のM!LK「爆裂愛してる」と米津玄師「IRIS OUT」がポイント面にて僅差であることを踏まえれば、2曲におけるストリーミングサービス有料会員と無料会員との割合にそこまでの差はないかもしれません。しかしながら興味深い結果であると共に、これを機に双方の歌手のコアファンが音楽チャートに精通するようになるのではと考えた次第です。
ただし、音楽チャートを分析する者として、楽曲が社会的ヒットに至るにはライト層による人気継続がより重要と捉えています。ファンダムによる聴取行動は最新曲主体であり、新曲リリース時に過去曲の再生回数が落ち込む可能性があるためです。ならばそのライト層を如何にして集め続けるか、そしてライト層に成った方を如何にしてコアファンに昇華させるか、その双方が歌手側に常に求められるものと考えます。
最後に。
ストリーミングは儲からないという言葉が歌手側や音楽ファンから未だ散見されますが、ビルボードジャパンのチャートポリシーにおいて”音楽にお金を払って聴くことがより重視される”仕組みになっていることを、まず理解すべきです。その上で、上記記事を踏まえれば尚の事、サブスクサービスと業界全体とで利益の分配等について協議することを提案します。そして、音楽ファンの”有料会員化”促進もまた重要です。