YouTubeが米ビルボード各種チャートへのデータ提供を取り止めたのが1月16日。その影響は同日を集計期間初日とする1月31日付以降のチャートに表れています。なおビルボードジャパンではデータ提供が継続している状況です。
YouTubeによる米ビルボードへのデータ提供取り止めの経緯、および取り止め直後のチャートの変化については上記エントリーにてまとめています。今回はその続編と呼べるエントリーとなります。
<米ビルボードへのYouTubeデータ提供取り止めについて>
日本の楽曲は世界での存在感を弱めている
冒頭で紹介したエントリーでは、『YouTubeによるデータ提供取り止めは、日本の楽曲のグローバルヒットを弱める』という項目を用意しています。その際に用いたデータは米ビルボードによる(YouTubeデータが除外された)グローバルソングチャートのうちGlobal 200なのですが、そのGlobal 200を基とするビルボードジャパンのGlobal Japan Songs Excl. Japanでも影響度の大きさが見て取れます。
Global Japan Songs Excl. JapanはGlobal 200を基に、日本市場分を除いた上で日本の楽曲を抽出したチャートとなります。


上記は2025年度以降の米ビルボードによるGlobal 200での日本の楽曲ランクイン一覧、およびGlobal 200に呼応したGlobal Japan Songs Excl. Japanでの首位曲の動向を示した表(Global 200は3月7日付、Global Japan Songs Excl. Japanは3月5日公開分までを表示)。YouTubeデータ提供取り止め後、Global Japan Songs Excl. Japan首位曲におけるストリーミング再生回数の低下は止まっていません。
YouTubeデータ提供取り止め後におけるGlobal Japan Songs Excl. Japan記事でのストリーミング再生回数未掲載が多いのは問題ですが(ビルボードジャパンによる未記載がデータ提供取り止めを意識させない目的もあるのではと邪推されかねません)、データ提供取り止め以降のチャートにて判明した直近3月5日公開分Global Japan Songs Excl. Japan首位曲の米津玄師「IRIS OUT」における数値はこれまでになく低いものです。
(尤もGlobal Japan Songs Excl. Japan首位獲得曲のストリーミング再生回数が400万を割ることは以前もありましたが、Global 200にも同時にランクインした曲がGlobal Japan Songs Excl. Japanで400万回再生に至らなかったのは表示分における直近のチャートが初となります。)
以前のエントリーでも述べたようにYouTubeデータ提供取り止め直後のGlobal 200では日本の楽曲の順位が比較的大きく後退していましたが、2月28日付Global 200ではスーパーボウルハーフタイムショー効果が薄れバッド・バニーの曲が全体的にダウンしながらも米津玄師「IRIS OUT」もまた順位を落としていたという状況です。
日本の楽曲は音楽サブスクサービスよりYouTubeの再生回数が高い傾向にあることが、YouTubeデータ提供取り止めによって明らかになったといえるでしょう。
テイラー・スウィフト「Opalite」の施策結果はYouTubeを動かさない
テイラー・スウィフトは上記ミュージックビデオをYouTubeで2月8日日曜に公開していますが、Spotifyの有料会員およびApple Music会員(有料会員のみ存在)に対しては2月6日金曜に先行で公開し、その公開時までにYouTubeでの公開日を発信していませんでした。このスケジューリングは音楽チャートでの上位進出にこだわるテイラー・スウィフトが、ストリーミング指標で存在感を高めたいという背景があったのではと考えます。
今回の「Opalite」ミュージックビデオにおける公開範囲限定、YouTube外しともいえる措置は、SpotifyやApple Musicにおいてユーザー数を広める機会に成り得るものでしょう。(中略) そしてそのプレミア公開効果が大きいほど、YouTubeは疎外感を味わい、ともすれば米ビルボードへのデータ提供を再開するかもしれません。
テイラー・スウィフト側の考えについては上記エントリーで推測していますが、音楽サブスクサービスでの先行公開はSpotifyやApple Music側も積極的に訴求していたという印象です。しかしながら、音楽サブスクサービスでの先行公開日を集計期間初日とする2月21日付米ビルボードソングチャートでは「Opalite」が上昇するも、その上昇幅は大きくなかったというのが自分の見方です。
テイラー・スウィフト「Opalite」が11→8位となり、トップ10内返り咲き。アルバム『The Life Of A Showgirl』の初登場時に2位を記録した同曲は、当週ストリーミングが前週比76%アップとなる1420万を記録しています。これは集計期間初日にミュージックビデオが(Spotify有料会員およびApple Music先行で)公開されたことに伴うもので、他指標ではダウンロードが前週比300%アップの7,000、ラジオが同8%アップの5050万を記録しています。
2月21日付ではバッド・バニーがスーパーボウルハーフタイムショー効果で大きく上昇したことも「Opalite」の順位に影響していますが、しかし同曲の音楽サブスクサービス先行でのミュージックビデオ公開効果はそこまで大きくないことも示したのではと考えます。そしてYouTube側も同じ結論に至り、データ提供取り止め等における自身の姿勢が正しかったと安堵しているのかもしれません。
重要なのは日本の音楽業界が総出で説得すること
今回の問題は、たとえばnoteプロデューサー/ブロガーの徳力基彦さんも記しています。
(上記noteにて、弊ブログエントリーやポストを用いていただきました。この場を借りて感謝申し上げます。)
その徳力さんが主催するXのスペース機能を用いた生配信(ミライカフェ)、2月9日開催回に参加し、この件についてお話させていただきました。その際にお伝えした内容は冒頭掲載のエントリーに基づくものですが、特に以下の部分を強調した次第です。
おわりに:ビルボードジャパンや日本の音楽業界への提案
日本の音楽業界は海外を視野に動いていますが、YouTubeのグローバルチャートからの除外は日本の作品の上位進出に対する大きな阻害材料に成ると憂慮しています。いや音楽チャートは他にもあるという声も出てくるかもしれませんが、"世界200以上の国や地域を対象とした" "主要デジタルプラットフォームのデータに基づく" "複合指標から成る"チャートが他に見当たらない以上、やはりグローバルチャートの変更は痛手です。
ビルボードジャパンがYouTubeデータ提供を継続できた背景は解りかねますが、友好な関係性を築いてきたゆえと想起します。ならばそのノウハウを米ビルボードに渡し、もしくはYouTubeとの仲介の役割を果たし、YouTubeのデータ提供再開につなげるべきです。日本の音楽業界全体においても必要であるのみならず、Global 200等がグローバルで唯一の複合指標から成るチャートゆえ、世界の音楽業界においても同様でしょう。
YouTubeは米ビルボードによるグローバルや米ソングチャートのストリーミング指標のみならず、米アルバムチャートにおけるストリーミング指標(SEA:ストリーミングのアルバム換算分)にもデータを提供していました。SEAはロングヒットに欠かせませんが(米ビルボードアルバムチャートで存在感を高めるために必要なこと…瞬発力と持続力、どちらがより重要なのか(2月25日付)参照)、初週の高位置登場にも大きく関わります。
日本の歌手が米アルバムチャート登場を目指すならば尚の事、今の状況は不利となります。ゆえにYouTube側にデータ提供再開を求め、説得することは必要でしょう。ビルボードジャパンがYouTubeと友好な関係を継続しているならば、ビルボードジャパンを介して関係修復を図ることもできるのではないでしょうか。日本の音楽を世界にという意義でMUSIC AWARDS JAPANがスタートしたならば尚の事、データ提供再開は必須です。
そしてストリーミングに占めるYouTubeの割合が高いのはK-POPも同様と捉えています。ならば日本の音楽業界が韓国の業界ともタッグを組み、YouTubeと米ビルボードの双方に働きかけることを望みます。