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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(追記あり) 米ビルボードによる2025年度米年間ソングチャート、10の注目ポイントとは

(※追記(12月10日12時37分):ビルボードジャパンが、米ビルボード年間ソングチャートおよび年間アルバムチャートの翻訳記事を公開しました。つきましては、翻訳記事のリンク付ポストを貼付しています。)

 

 

 

今年の音楽業界をチャートから振り返ります。今回は米ビルボードによる米の年間ソングチャート編です。日本時間の12月10日に発表されたこのチャートをチェックしています。昨年の動向については下記ブログエントリーをご参照ください。

今年度の集計期間は2024年10月26日付~2025年10月18付の52週分となります。

 

2025年度の米ビルボードによる主要チャート記事、およびビルボードジャパンの翻訳記事はこちら。

・年間ソングチャート

 

・年間アルバムチャート

 

・年間トップアーティストチャート

 

ビルボードによる各種年間チャートはこちらより確認できます。ソングチャートは100位まで、チャートを構成する3指標(ストリーミング(動画再生含む)、ダウンロード(フィジカルセールス含む)およびラジオ)については、ストリーミングおよびラジオが75位まで、ダウンロードが25位まで紹介されています。なおダウンロードは2024年度にて、公開範囲が50位までとなっていました。

 

そして下記表は、年間ソングチャートおよび各指標の順位を一覧化したものとなります。

 

 

それでは、今年度のチャートトピックを取り上げます。

 

<米ビルボード年間チャート発表 2025年度のチャートトピック>

 

はじめに…米ビルボードソングチャートの特徴とは

ビルボードソングチャートの前提として、構成する3指標およびその特徴を理解することが重要です。

ビルボードソングチャートはストリーミング(動画再生を含む)、ダウンロード(フィジカルセールスを含む)およびラジオの3つで構成されます。ストリーミングは有料会員の1回再生が無料会員のそれよりウエイトが大きくなるよう計算されています。またラジオはオンエア回数ではなく、オンエア回数に放送局の聴取可能人口等を加味したインプレッション数(どれだけの方にリーチしたか)が基準となっています。

初登場時にはストリーミングおよびダウンロードが高いのが特徴であり、ラジオはどんなに前評判や注目が高いとしても初週にトップ10入りを果たすことは極めて稀です。一方で3指標のピークはラジオが最も遅いものの、ロングヒットする傾向にあります。

ビルボードソングチャートではリミックス等も合算されることから、そのリミックス等を投入することで唯一の所有指標であるダウンロードを高めることが可能です。ダウンロードを刺激し上位進出を図るという施策が時折みられますが、この数年においては施策やそのチャートへの反映および直後の急落を踏まえ、米ビルボードはダウンロード指標のカウントを厳しくする形でチャートポリシー(集計方法)の変更を続けています。

そのようなこともあり、ストリーミングやラジオでロングヒットした曲が年間単位でも強いという状況です。また年度前半から(もっといえば前年度から)ヒットしていた曲が強く、下半期に初登場した曲が上位に進出することは極めて稀といえます。

 

以上の状況を踏まえ、2025年度米ビルボードソングチャートのトピックを紹介します。

 

 

① ロングヒット(前年度からの連続ヒット)の多さ

2025年度年間トップ10入りを果たした曲のうち、前年度もトップ10内に登場したのは4曲。シャブージー「A Bar Song (Tipsy)」(2024年度2位→2025年度3位)、テディ・スウィムズ「Lose Control」(1→4位)、ベンソン・ブーン「Beautiful Things」(3→6位)およびポスト・マローン feat. モーガン・ウォーレン「I Had Some Help」(4→8位)。つまり、昨年度の上位4曲がロングヒットを続けているということがよく解ります。

実は2023年度の年間ソングチャート上位10曲はいずれも翌年度のトップ10には入っていません。その点だけをとっても2024年度におけるヒット曲の強さが見て取れます。これはこの数年の年間チャートにおいてストリーミングとラジオの上位が最も比例してきていること、つまり接触指標群の安定が寄与しているのかもしれません。

 

② 2025年度に初めて登場した曲の強くなさ

前項は言い換えれば、2025年度リリース曲の強くなさということになります。実際、2025年度の年間ソングチャートトップ10内にランクインした曲のうち、2025年度に米ソングチャートで初登場を果たしたのはケンドリック・ラマー & シザ「Luther」(2位)、アレックス・ウォーレン「Ordinary」(7位)およびロゼ & ブルーノ・マーズ「APT.」(9位)の3曲のみとなります。

はじめにの項目で紹介したチャートの特徴を踏まえれば前年度からのロングヒットが目立つともいえるのですが、しかしながら2025年度に入ってから登場した曲、リリースされた曲自体が強くないということがいえるのではないでしょうか。その点は③および④からも証明できるものと考えます。

 

モーガン・ウォーレンの複数曲登場と、一方で2025年リリース曲の強くなさ

『Dangerous: The Double Album』(2021)、『One Thing At A Time』(2023)がリリース年度の米ビルボード年間アルバムチャートを制したモーガン・ウォーレンは、今年リリースした『I'm The Problem』も年間2位に(首位作品は後述)。いずれのアルバムも30曲以上を収録しており、収録曲数の多さもアルバムチャートにおけるストリーミング指標(ストリーミングのアルバム換算分(SEA))の高値安定をもたらしさと捉えています。

その『I'm The Problem』収録曲は年間ソングチャートで5曲が50位以内にランクインしていますが、2023年度における「Last Night」(年間1位)ほどの勢いは有していません。アルバムリリース時にはテイト・マクレーとの「What I Want」をリード曲に据えていましたが、先行3曲(「Love Somebody」「I'm The Problem」および「Just In Case」)よりも順位は低くなっています。

もっといえば、モーガン・ウォーレンにおける2025年度最大のヒットが①で紹介した(ポスト・マローンに客演参加した)「I Had Some Help」(年間8位)であり、アルバムがヒットしたとして収録曲が連動したとは言い難いといえるかもしれません。米ビルボードがアルバムチャートにおいて、仮にSEA計算時に収録曲数に応じて分母を変えているならば、モーガン・ウォーレンのアルバム順位はさらに下がったと考えられます。

 

④ ヒップホップはケンドリック・ラマーが一人勝ちの状況

ケンドリック・ラマーは2025年度年間ソングチャートで、シザとの「Luther」(年間2位)をはじめ5曲を50位以内に送り込んでいます。前年度6位を記録した「Not Like Us」のロングヒットやシザへの参加も影響していますが、今年開催されたグラミー賞での主要2部門受賞、さらに翌週開催されたスーパーボウルハーフタイムショーでのパフォーマンスが過去曲や参加曲、そしてアルバム『GNX』の再フックアップにつながっています。

・ケンドリック・ラマーによるスーパーボウルハーフタイムショー映像はこちら

一方でヒップホップ全体をみると、年間ソングチャートで50位以内に入った曲のうちラッパーが参加したのは11曲と多くありません(ポスト・マローンはカントリージャンルとしてカウント)。いわばケンドリック・ラマー一人勝ちといえる状況ですが、これはストリーミングが全体的に強くなくなったことも大きく影響したのではと捉えています。ストリーミングとヒップホップの相性がよかったゆえ尚の事、気になるところです。

 

⑤ 「APT.」『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』…K-POPの台頭

”台頭”と言いつつも以前はBTS「Dynamite」「Butter」が複数週で首位を獲得していましたが、ダウンロードの強さや関連施策が大きく影響した形です。他方、今年度におけるロゼ & ブルーノ・マーズ「APT.」(年間9位)の存在は、K-POPがストリーミングやラジオでも長期在籍可能ということを示した好例といえるでしょう。特にラジオは保守的とされ、外国語曲が強くない傾向にあったと考えればこの変化は特筆すべきものです。

その後、米等で『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ (原題:Kpop Demon Hunters)』が大ヒットし、サウンドトラック収録曲が大挙登場。その中でもHUNTR/X(ハントリックス)(イジェ、オードリー・ヌナ & レイ・アミ)「Golden」は通算8週に渡り週間チャートを制し、下半期半ばにリリースされながら年間25位に入ったことは大きな意味があると考えます。サウンドトラックからは年間100位以内に7曲が登場しています。

HUNTR/X「Golden」もストリーミングやラジオで台頭(ただし後者は年間75位以内に入らず)。『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』は子ども人気が特に高いと伺っており、親世代もK-POPに触れることでこのジャンル、そして韓国への米の印象はさらに好くなるものと思われます。そうなれば今後のK-POP作品の上位進出および安定が高まると考えるのは自然なことでしょう。

 

 

グラミー賞効果の反映

ひとつ前の項目で述べたロゼ & ブルーノ・マーズ「APT.」、そしてHUNTR/X「Golden」は共に来年開催のグラミー賞にて主要部門にノミネートされています。グラミー賞は投票会員を増やし且つジェンダー等の比率を是正したこともあってか、特に主要部門ではよりヒット作品に即したラインナップがノミネートされてきているという印象です。そして受賞結果もまた、その後の音楽チャートに反映されやすくなった感があります。

その代表的な例が先述したケンドリック・ラマーによる最優秀レコード賞および最優秀楽曲賞受賞曲の「Not Like Us」(年間17位)、そしてケンドリックによるスーパーボウルハーフタイムショーに対する注目曲の高さですが、最優秀新人賞を受賞したチャペル・ローンにおいても、2020年リリースの「Pink Pony Club」が脚光を浴び、年間10位に登場しています。

また最優秀新人賞の座は逃したものの『Alligator Bites Never Heal』が最優秀ラップアルバム賞を受賞したドーチーは、2019年にYouTubeで公開した「Anxiety」を再レコーディングの上で音源化しトップ10ヒットに。年間でも39位にランクインを果たしています。後にアルバムのエクステンデッドバージョンにて追加収録されていますが、グラミー賞で注目を高めた歌手がチャートでも成功を収める例が散見されています。

 

⑦ 大ヒットメーカーの役割を果たしたブルーノ・マーズ

2025年度年間ソングチャートではブルーノ・マーズが、ロゼとの「APT.」で9位、そしてレディー・ガガとの「Die With A Smile」で首位を獲得しています。「Die With A Smile」は昨年8月のリリースながら、クリスマス関連曲がチャートから後退した今年1月になって初めて首位に至っています。

「APT.」はロゼの、「Die With A Smile」はレディー・ガガのオリジナルアルバムに収録されているため、ブルーノ・マーズはいわば共演相手、準主役的なポジションといえるかもしれません。さらにはブルーノによるアルバムはこの10年で『24K Magic』(2016)およびシルク・ソニック名義(アンダーソン・パークとのユニット)『An Evening With Silk Sonic』(2021)のみなのですが、大ヒットメーカーであることは間違いありません。

 

⑧ クリスマス関連曲、年間チャートに複数登場

はじめにの項目にてストリーミング時代におけるソングチャートの特徴を紹介しましたが、現在は季節を彩る曲がストリーミング主体に瞬発力を高め、上位進出することが少なくありません。特に際立つのがクリスマスで、関連曲が上位を占める傾向にあります。中でもマライア・キャリー「All I Want For Christmas Is You (邦題:恋人たちのクリスマス)」は今の時代に即した施策も功を奏し、直近で19週目の首位を獲得しています。

2025年度もマライア・キャリーの定番曲(年間59位)をはじめ、年間100位以内には4曲のクリスマス関連作品がランクイン。複数曲の年間チャート入りはこの数年の特徴ですが、ストリーミング全体が強くなくなってきた状況にあってはより際立つようになったともいえるかもしれません。実際に、総合では年間100位以内に入らなかったもののストリーミングでは75位までに登場したのが4曲も存在します。

 

⑨ ファーストヒットが大ヒットした歌手の、その後のヒット輩出の難しさ

ストリーミング時代にあっては、たとえばTikTokでバズを起こした曲が総合チャートでもヒットしやすくなり、時代の寵児になるということが少なくありません。

TikTokきっかけかそうでないかにかかわらず、年間トップ10内だけをみてもシャブージー(「A Bar Song (Tipsy)」)やテディ・スウィムズ(「Lose Control」)、ベンソン・ブーン(「Beautiful Things」)そしてアレックス・ウォーレン(「Ordinary」)等、キャリア最初のヒットが特大ホームランにつながることが少なくありません。グレイシー・エイブラムスやローラ・ヤング、レイヴン・レネー等においても同様です。

ただしそのような大ヒット曲を輩出した歌手が、その後ヒットを連発できるかは難しいともいえます。シャブージーは「Good News」が年間23位に登場しているものの、しかし週間単位ではトップ10入りを果たしていません。

ストリーミング時代にあっては、注目を集めた歌手が複数のヒットを輩出する傾向はあります。しかしながらファーストヒットが大きいほど、同クラスの大ヒットを複数曲用意することが如何に難しいかがよく分かるでしょう。ゆえにレディー・ガガやビリー・アイリッシュブルーノ・マーズ等の凄さが解ると共に、サブリナ・カーペンターがその位置に近づきつつあることを興味深く感じています。

 

⑩ グループ/バンド発のヒットの少なさ

ソロ歌手同士の共演(もしくは一方が客演)でのヒットが多いというのが2025年度の特徴であり、トップ10内ではコラボレーションが4曲登場しています。実際、年間チャートを制したレディー・ガガブルーノ・マーズ「Die With A Smile」は過去67年のソングチャートにおいて、男女ソロ歌手同士のデュエット曲として年間チャートを初めて制したことになります。

他方、グループやバンドとなると一気に減少し、先述したHUNTR/X(ハントリックス)(イジェ、オードリー・ヌナ & レイ・アミ)「Golden」の25位が最高位となります。もっといえば、年間50位まで広げてもザ・マリアス「No One Noticed」(年間32位)を含む2曲のみとなっています。

2024年度の振り返り時に、チャートトピックのひとつとして”ロックの復興”を挙げたのですが、仮に復興を遂げたとして、あくまでソロ歌手主体であることを再認識した次第です。

 

 

以上10項目を紹介しました。他にも特筆すべき内容があれば追記を予定しています。これまでの週間ソングチャートについては、以下のリンク先から辿ることができます。

 

おわりに…2026年度の動向を考える

2026年度に入ってから既に8週が経過していますが、テイラー・スウィフト「The Fate Of Ophelia」の強さが際立つ状況です。2025年度最終週に首位初登場を果たした同曲は、前週12月6日付まで8週連続で首位を獲得。またこの曲をリード曲に据えた『The Life Of A Showgirl』は同年度最終週に週間最多となる400万2千ユニットを獲得し、わずか1週で年間チャートを制しています。

一方で「The Fate Of Ophelia」は、初めて首位から後退した最新12月13日付におけるダウン幅(1→6位)が、HUNTR/X「Golden」(2→5位)よりも大きくなっています。ストリーミングが比較的高位置で安定、またラジオも徐々に上がっているこの曲は、単曲ダウンロード解禁に関するスケジュール管理やリミックスのリリース、フィジカル予約等の施策でダウンロード指標を高値安定に至らせ、「Golden」を抑え続けていた印象です。

意地悪な見方と前置きしますが、最新チャートにおいてはクリスマス関連曲に首位を奪われることを当初から推定した上で、テイラー・スウィフトが施策を抑えたという可能性も考えられます。言い換えれば、施策がなければ上位安定し難い作品が、クリスマス関連曲がチャートから姿を消した後に上位に帰る可能性は高くないかもしれません(そのタイミングで施策を行う可能性は十分あり得ると思われるのですが)。動向に注目です。

 

一方で、クリスマス関連曲はその大半が来年のシーズンには登場しない模様です。これは米ビルボードが2026年度初週にリカレントルールを強化したことに伴います。

 これまでチャートを下降している楽曲は、チャートイン52週経過後に25位以下、または20週経過後に50位以下にランクダウンした時点でHot 100から除外されていた。今後は、以下の新しい基準が適用される。

 

・78週経過後に5位以下に下落した場合

・52週経過後に10位以下に下落した場合

・26週経過後に25位以下に下落した場合

・20週経過後に50位以下に下落した場合

 

 これらの基準を下回っていても、特定のケースでは楽曲がチャートに留まることが認められる。また、ホリデー・シーズンの定番曲については、チャートイン週数に関わらず50位以上に再浮上することが可能となり、チャート下降時には上記の基準が適用される。同様に、非ホリデー楽曲でも再評価によって急上昇したカタログ楽曲は、個別に審査されたうえで順位に関わらず初登場できる。さらに、Hot 100からリカレント扱いとなった曲は、全フォーマット対応のエアプレイ・チャート“Radio Songs”からも除外される。

 

この適用開始に伴い、2025年度年間ソングチャートで上位に進出したテディ・スウィムズ「Lose Control」やベンソン・ブーン「Beautiful Things」、レディー・ガガブルーノ・マーズ「Die With A Smile」等が2026年度初週にて、チャートから一斉に姿を消しています。

クリスマス関連曲も同様の強化ルールを敷かれる模様ゆえ(その時期になってみなければ解りかねる部分はあるのですが)、クリスマス関連曲においても新たに支持される曲の登場が待たれるところです。

 

さて、ルール強化の背景には、ストリーミングやラジオ指標における過去曲主体のリピート増加が挙げられ、上記記事ではそれに伴う2025年度までの状況を『チャートの動きは以前よりも鈍化している』と表現。そして『チャート上に停滞する楽曲を整理し、すでにラジオでリカレントとなっている曲やレーベルによるDSPのプレイリスト戦略から外れた曲を段階的に省くことを目的』にリカレントルールを敷いたとあります。

一方で、ここ3年のチャート首位獲得曲等の動向をみると、総合首位曲の接触指標群、また接触指標群首位曲におけるそれらの数値は下がってきている印象です。ラジオも緩やかに後退し、またストリーミングも同様と捉えています。スーパーボウルビーフテイラー・スウィフトの新譜登場等、刺激的なトピックが多くことが指標の減退につながり、総合チャートの鈍化に至らせたともいえるのかもしれません。

それでも、ロゼ & ブルーノ・マーズ「APT.」やHUNTR/X「Golden」が大ヒットしたことに注目しています。これは米にて日本の音楽がヒットする可能性が(ごく僅かでも)高まったと考える点においても、です。海外意識を高める日本の音楽業界がこの機会をどう捉え、動いていくかは業界全体の課題。米歌手がチャートの上位進出に意欲的であることはSNSの反応等からも明らかゆえ、施策や姿勢等を学ぶ必要があると考えます。