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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

チャート分析者や予想者に浮上する米ビルボードソングチャートラジオ指標不要論、およびそれに対する私見

『Kpop Demon Hunters (邦題:KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ)』サウンドトラック収録曲のハントリックス(イジェ、オードリー・ヌナ & レイ・アミ)「Golden」が最新8月16日付米ビルボードソングチャートを初めて制したことについては、昨日付エントリーにて紹介しています。

この初制覇については、米ビルボードソングチャートを予想するXアカウントのTalk of the Chartsが的中させていました。

 

さて、このアカウントにて前週8月9日付において、このような発信が行われています。

ビルボードソングチャートは動画再生を含むストリーミング、フィジカルセールスを含むダウンロード、そしてラジオという3つの指標で構成されていますが、仮にラジオ指標がないならば前週8月9日付の段階でハントリックス「Golden」がアレックス「Ordinary」を上回ったと予想されているのです。なおこのアカウントでは、最新8月16日付においても同種の発信を行っています(→こちら)。

 

XアカウントのTalk of the Chartsが『if radio airplay was excluded (仮にラジオ指標が除外されたならば)』と述べることはこれまで記憶にないのですが、他のチャート関連アカウントも似たような発信を行っています。

こちらのXアカウントでは、米ビルボードがラジオを構成指標から除外すればソングチャート(Hot 100)がトレンドをより正確に反映するだろうと述べています。ともすればハントリックス「Golden」が首位を獲得できないことに疑問を感じているゆえの発信かもしれませんが、しかしながら複数のチャート分析者がラジオ不要論とも呼べるような発信を行っているのは興味深いことです。

 

 

2025年度米ビルボードソングチャート、総合首位曲の指標構成および各指標首位曲の数値を一覧化した表を上記に。ハントリックス「Golden」は今年度首位獲得曲の中でラジオが未だ強くはないという状況ですが、これは今年度において初登場で首位に立った曲と共通しています。ここからも、ラジオがスロースターターであることが読み取れるでしょう。

また、前週まで通算9週に渡り首位を獲得したアレックス・ウォーレン「Ordinary」における指標の変遷を踏まえれば、ストリーミングに比べてラジオのピークが遅いということも解ります。首位曲の入れ替わりが激しいストリーミングとは異なり、ラジオでは今年度の首位獲得曲が5曲のみ(「A Bar Song (Tipsy)」「Die With A Smile」「Luther」「Anxiety」「Ordinary」)という状況からもラジオ最上位曲の動きの鈍さがみえてきます。

それらに加えて、ラジオ指標首位曲自体の数値が前年度以降ダウン傾向ということもあり尚の事、チャート予想者のラジオ不要論が登場しているのではないでしょうか。

 

 

ただ、これはあくまで個人論と前置きしますが、ラジオ指標を除外することで真に社会に浸透する曲が解りにくくなるものと感じています。

 

今週、テイラー・スウィフトがニューアルバムのリリースを予告していますが、そのテイラーは直近のオリジナルアルバム2作品(『Midnights』(2022)および『The Tortured Poets Department』(2024))が米ビルボードでアルバムチャートを初制覇したタイミングで、ソングチャートでもトップ10を独占しています。一方でトップ10入りした作品においてはリード曲を除き、ラジオ指標は高くないことが下記から解ります。

(『The Tortured Poets Department』収録曲の米ビルボードソングチャート初登場時においては、トップ10入りした曲のラジオ指標動向はほぼ明らかにされていません。)

 

ビルボードではストリーミングに強い作品がアルバムチャートで初登場した際、その収録曲がソングチャートでも大挙初登場する、もしくは先行リリース曲ならば上昇することが定例となっていますが、仮にラジオ指標がないならばこれまで以上に収録曲の上位寡占という状況が生まれます。

他方、米ソングチャートには一定週数以上ランクインした曲が一定順位を下回ればチャートから除外されるというリカレントルールがあるのですが、ラジオ指標がなければルールに抵触する曲は増えるでしょう。しかし大挙初登場もしくは上昇したアルバム収録曲はリード曲等を除きその後のダウンが速く、リカレントルールに伴い消える曲と相まって初登場時から数週後のチャートがヒットの実態を伴いにくくなるものと考えます。

 

 

ハントリックス「Golden」が前週の段階で首位獲得に至れなかったのはラジオ指標の差はあるとして、しかしそれをおかしいと述べるならば、ラジオ指標がない場合の様々な副作用をきちんと考えた上で述べるほうが好いはずです。仮にですが、不要論が不服という強い私情に伴うものならば、一方の曲のみに肩入れをしていないかを自問自答することが必要でしょう。

そして同時に、ストリーミング指標が(首位曲の数値は全体的に下がりながらも)大きな影響力を持っており、そして同指標の初登場時における数値が高いゆえに尚の事、ラジオ指標のスロースターター傾向が浮き彫りになっていることを踏まえ、改善策を練ることが大事だと考えます。

個人的には最新8月16日付のチャートにて、登場から1ヶ月以上経ったハントリックス「Golden」が未だラジオ指標1千万に満たないのみならず、総合3位に初登場したチャペル・ローン「The Subway」の同指標が787,000と極めて低いことを注視しています。後者は1年以上前の音楽フェスで初披露されファンの間で話題になってきたのみならず、そこから現在までにチャペルが3曲のトップ10ヒットを放ち、さらにはグラミー賞で最優秀新人賞を受賞しているという背景を踏まえれば、低いと考えるのは自然でしょう。

上記記事でも解るように、チャペル・ローンは自身のセクシャリティを公表しています。他方ラジオ(の選曲)は保守的と言われていることは、たとえばカントリージャンルが強い点からも明らかです。加えてラジオ指標で非英語詞曲、特にアジアの言語による曲がヒットすることは稀とも耳にします。仮に米ラジオ業界にてセクシャリティや民族への差別に伴うオンエア回避が存在するのならば、まずはその打破こそ必要と考えます。

 

 

終わりに。

 

自分はビルボードジャパンに対し、ビルボードジャパンソングチャートからラジオ指標を除外することを検討していいのではないかと提案しています。

ともすればこの発信が、今回の米ビルボードソングチャートにおける考え方と矛盾していると言われかねません。しかし、日米のラジオにおける規模や影響力の差、そして施策反映やチャート動向の違いを踏まえてのものであるということを今一度示しておきます。