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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ふたつの主要チャートを制したMrs. GREEN APPLE、ソングチャートにおける2曲の逆転要因を探る

最新7月23日公開分のビルボードジャパンアルバムチャートでは、Mrs. GREEN APPLE『10』が2連覇を達成。この結果も相まって、ソングチャートと合算したトップアーティストチャートでは4連覇を果たしています。

Mrs. GREEN APPLEによるベストアルバム収録曲は過去曲共々、ビルボードジャパンソングチャートでもランクインを続けています。ソングチャートでは前週より2曲減少するも、100位以内には21位が登場(「Dear」はリカレントルール抵触に伴い急落)。そしてストリーミング指標の基となるStreaming Songsチャートでも、当週は引き続き上位100曲の4分の1以上を占めています。

(ソングチャートにおけるリカレントルールでは、Streaming Songsチャートからストリーミング(指標)へ指標化する際、総合ソングチャートに53週以上ランクインしている曲を対象に減算処理を施します。)

当週におけるMrs. GREEN APPLEの楽曲動向を、ストリーミング表を基に作成しています。

楽曲が入れ替わりながら、じつに28週にわたり当チャート首位をキープしていたMrs. GREEN APPLEだが、当週でその記録は打ち止めに。しかし各曲で引き続き安定した再生回数を記録し、トップ100圏内に前週と同じ計26曲を送り込んでいる。なかでも「青と夏」と、現在東京ディズニーリゾート(R)で開催中のスペシャルイベント【サマー・クールオフat Tokyo Disney Resort(R)】テーマソング「Carrying Happiness」の、夏を感じさせる2曲が前週より再生回数を伸ばしている。

Mrs. GREEN APPLE「Carrying Happiness」は短尺版である”Tokyo Disney Resort Version”リリース後、今回の集計期間中である7月19日にフル尺版を配信開始し、合算されたことで上昇した形です。一方で「青と夏」は、『ミュージックステーション SUPER SUMMER FES 2025』(テレビ朝日 7月18日放送)で披露されたこともストリーミング再生回数や総合ポイントの上昇要因といえるでしょう。

 

さて、ソングチャートでは「breakfast」がポイント前週比64.5%、「ダーリン」が同143.8%を記録し、順位が逆転しています(「breakfast」は3→7位、「ダーリン」は8→4位に)。この動きについて、総合ソングチャートの記事から背景を読むことができます。

4位は、Mrs. GREEN APPLE「ダーリン」が前週の8位から大きく浮上。ラジオが約16倍増加した他、ダウンロードやカラオケも増え、約3か月半ぶりにトップ5入りを果たした。

ソングチャートのラジオ指標はプランテックによるラジオオンエアチャートを基に、各放送局の聴取可能人口等を加味して算出されます。そしてその基となるチャートからは施策の存在を確認することができます。

2025年7月23日発表のラジオ・オンエア・チャート(集計期間:2025年7月14日~7月20日プランテック調べ)では、Mrs.GREEN APPLE「ダーリン」が1位を獲得した。

前週にリリースされたベストアルバム「10」収録の同曲は、1月20日の配信シングルリリースに伴い1月20日~1月26日チャートで14位に初登場すると、その翌週に1位へと浮上。10週連続でチャートインしたのち圏外となるも、アルバムリリース週だった前週80位の再登場を経て1320%のオンエア急増となった今週、24週ぶりに首位へと返り咲いた。

配信リリース直後から多数リクエストが確認されてきたことも、同曲の人気ぶりの証=長期チャートインの大きな要因。そして前週1位を獲得した「breakfast」(12位)に続き、ラジオでのアルバムプロモーション曲として同曲が選ばれた理由でもあるのだろう。今週は帯放送の番組/コーナーといった定期枠を中心に、調査対象77.4%のステーションでのオンエア獲得となった。

『前週1位を獲得した「breakfast」(12位)に続き、ラジオでのアルバムプロモーション曲として同曲が選ばれた』という点からは、Mrs. GREEN APPLE側が『10』リリースのタイミングで「breakfast」「ダーリン」を用いた施策を立て続けに実行したことが見て取れます。「ダーリン」のラジオ指標における100位未満→首位の急伸、「breakfast」における同指標1→15位への後退は施策対象曲の交代が背景にあるといえます。

(歌手側のラジオ指標における施策は、記事における『帯放送の番組/コーナーといった定期枠を中心に (中略) オンエア獲得』という表記からも読み取れます。この定期枠を主体とするオンエア獲得は、最近では男性アイドル/ダンスボーカルグループ主体に目立つ動きです。)

Mrs. GREEN APPLE側がラジオ施策を意識していることについては、ビルボードジャパンソングチャート上位3曲は僅差…Mrs. GREEN APPLE「breakfast」が急伸した背景(7月17日付)で推測しましたが、当週のプランテック記事からはこの推測が正しかったと断言して差し支えないでしょう。

 

ならば、ラジオでのオンエア増加を今後につなげることが重要です。当週ラジオ指標で順位を大きく下げた「breakfast」はストリーミング再生回数においても他の曲より下落幅が他の曲より大きくなっていることから、たとえばラジオ番組やラジオ局がオンエアリストを各サブスクサービスでプレイリスト化し、誘導することも必要と考えます。

また、米ソングチャートにもラジオ指標はあれど極端に伸びることはほぼないといえます。これは調査対象局の多さのみならず、施策が行われたとしてラジオ局側がオンエアする曲を意志を持って選んでいることも背景にあるというのが自分の見方です。日本のラジオにもポリシーはあるはずですが、しかしラジオ指標の不安定性も踏まえれば、ラジオ発のヒットを輩出しようという強い思いを感じにくいというのが正直な私見です。

 

 

「ダーリン」の翌週動向を注視すると共に、歌手側のラジオ向け施策がラジオ業界の意志や意識を高める目的としても用意されるほうがより好いと感じています。