2020年からポッドキャスト【Billboard Top Hits (通称:ポッドチャート)】を発信し、現在は毎週木曜13時に最新エピソードを公開しています(録音環境の変更に伴い13時過ぎになることもありますのでご了承ください)。最新回はこちら。
今回はポッドキャストでも紹介した最新のビルボードジャパンアルバムチャートやトップアーティストチャートから、注目点を採り上げます。
なお最新チャートについては、昨夜公開のブログエントリーにて勝手ながら”記事化”しています。
7月9日公開分(集計期間:6月30日~7月6日)のビルボードジャパンアルバムチャートでは、なにわ男子『BON BON VOYAGE』が首位初登場を果たしています。
【ビルボード】なにわ男子『BON BON VOYAGE』で自身4作目となる総合アルバム首位 https://t.co/4LRWjtTN4M
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2025年7月10日
一方で同作品は、次週急落する可能性が高いといえます。

なにわ男子『BON BON VOYAGE』のCHART insightを上記に。累計ポイント構成比からは、同作品はフィジカルセールス指標(黄色で表示)のみでアルバムチャートを制したことが解ります。言い換えれば、『BON BON VOYAGE』は現時点までデジタルリリースを行っていません。
他方、アルバムからは「ギラギラサマー」がリード曲としてデジタルリリースされています。なにわ男子のデジタル解禁は昨夏に行われていますが、前アルバム『+Alpha』(2024)のフィジカルリリースから2ヶ月後ゆえ(下記参照)、『BON BON VOYAGE』においてもデジタル後発となることは予想できたことかもしれませんが、しかし釈然としないというのが率直な見方です。
実際、STARTO ENTERTAINMENT所属歌手による直近のアルバムで、収録曲の一部をデジタル解禁しながらアルバムはデジタル解禁の見通しがない(もしくはなかった)という事態は他にもみられます。

(上記は7月9日公開分ビルボードジャパンアルバムチャートにおける有料会員が確認可能なCHART insight。20位未満の指標順位も明示されています。なお、ビルボードジャパンでは有料会員が知り得る情報の掲載を許可しています。なお、以下に紹介するCHART insightも有料会員が確認可能なものとなります。)
8人体制下で初となるtimeleszのアルバム『FAM』は初週フィジカルセールスが65万枚近くに達し、発売初週にSexy Zone時代を含めキャリア最高となるアルバムセールスを記録。この体制で初めてデジタルリリースした「Rock this Party」も収録されていますが、しかしアルバムは現時点でもデジタル化されていません。ビルボードジャパンアルバムチャートでは1→48位と推移し、登場3週目には100位未満に後退しています。

Kis-My-Ft2『MAGFACT』は5月21日にフィジカルリリースされ、デジタル解禁は6月16日に。上記CHART insightでは登場5週目にダウンロード(紫で表示)およびストリーミング(青)が加点されていますが総合100位以内に返り咲くことはなく、フィジカルと同発ならばと感じずにはいられません。このアルバムからは「Glory days」、およびサンドウィッチマンを迎えた「お疲れ様です!」が4月にデジタルリリースされたゆえ(11th Album『MAGFACT』収録の「Glory days」、「お疲れ様です!feat.サンドウィッチマン」サブスクにて先行配信決定!! | Kis-My-Ft2|MENT RECORDING(4月9日付)参照)、尚の事です。
他にも、5月にデジタルを一部解禁したSixTONESは最新アルバム『GOLD』(1月リリース)を現時点でもサブスク解禁しておらず、その状況下で新曲「Stargaze」を今週日曜に配信しています。またSnow Manのベストアルバム『THE BEST 2020 - 2025』はデジタル解禁以降現時点までビルボードジャパンアルバムチャートのストリーミング指標で首位をキープしていますが、デジタル解禁までは3ヶ月近くを要しています。
Snow Man『THE BEST 2020 - 2025』は登場2週目に7万枚近いフィジカルセールスを記録しながら、ビルボードジャパン総合アルバムチャートでは1→13位と推移しています。このことを踏まえれば、デジタル未解禁のなにわ男子『BON BON VOYAGE』が次週のチャートで急落する可能性が考えられます。
・【ビルボードジャパントップアーティストチャート】Mrs. GREEN APPLE連覇達成…次週”完全制覇”なるか注目(7月10日付)より
『BON BON VOYAGE』がアルバムチャートを制したなにわ男子ですが、ソングチャートとアルバムチャートを合算するトップアーティストチャートでは最新7月9日公開分で2位となり、Mrs. GREEN APPLEを上回ることができませんでした。ダウンロードやストリーミングは加点されたものの100位未満であり、アルバムのデジタル未解禁が影響しています。デジタルが味方ではない以上、このチャートでも次週の急落が予想されます。
さて、timelesz『FAM』がビルボードジャパンアルバムチャートの登場2週目に急落したことを踏まえて記載したエントリー(アルバムおよび歌手別チャートにおけるtimeleszの後退から、デジタルを味方につけることの重要性を考える(6月27日付))にて、山田涼介さんのアルバム『RED』(Ryosuke Yamada名義)の好調について紹介しました。同作品はその後も順調といえることがCHART insightから読み取れます。

先程の例における、アルバム収録曲の一部をデジタル解禁しながらアルバム自体の解禁を遅らせるという措置からは、デジタルで聴いて気になった方にフィジカル購入を促すという目的が見て取れます。他方、Ryosuke Yamada『RED』はデジタル同発ながらフィジカルセールスが(波がありつつも)上昇することは少なくなく、コンサートの影響もさることながら、しかしデジタルがフィジカルを毀損しないということが解るでしょう。
STARTO ENTERTAINMENT所属歌手で、シングルのフィジカルセールスが初週10万枚以上を見込める歌手においてはWEST.およびAぇ! groupを除きデジタル解禁を開始しています。日本の音楽業界が変わったのは前会社時代の創業者による性加害問題の表面化(に伴う自省)が一因と考えますが、しかしデジタルに明るくない姿勢はまだまだ変わっていないというのが、厳しくも私見です。
無論デジタル未解禁が絶対悪ではなく、また音楽チャートも絶対ではありません。ただ、日本では事務所のデジタル未整備を以前からの慣例等ゆえ仕方ないと納得できても、海外の音楽ファンにはどう映るでしょう。事情を知らない方には飲み込みにくいだろうと考えると共に、本来”仕方ない”と思うことこそ誤りのはずです。また閉鎖的な事務所の姿勢を音楽関係者が質す場面にも、ほぼほぼ出会えていません。
事務所自体もさることながら、音楽業界、そして受け手が真に変わることが必要だというのが私見です。STARTO ENTERTAINMENTがデジタルに真に前向きになれば、彼ら同様にデジタルに明るくなろうとしない他の芸能事務所や歌手も追随することでしょう。そうなれば日本の音楽が世界から真に信頼され、堂々と訴求できるはずです。
