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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ビルボードジャパンソングチャート、Mrs. GREEN APPLE「ライラック」のトップ10”返り咲き”に注目する

最新7月9日公開分(集計期間:6月30日~7月6日)のビルボードジャパンソングチャートでは前週首位の櫻坂46「Make or Break」が33位に後退。フィジカルセールス指標初加算のTWS「はじめまして」が首位、モーニング娘。'25「気になるその気の歌」が2位にそれぞれ初登場しています。

他方、今回の上位2曲については、次週の急落が予想されます。

 

当週のビルボードジャパンソングチャート制したTWS「はじめまして」、および2位のモーニング娘。'25「気になるその気の歌」については、ビルボードジャパンの記事で次のように紹介されています。CHART insightにおける累計ポイント構成比に注目です。

<7月9日公開分ビルボードジャパンソングチャート 1位および2位の動向>

 

1位 TWS「はじめまして」(6,734ポイント)

『本作はSEVENTEENの弟分6人組ボーイグループであるTWSのデビューシングルだ。初週で186,554枚を売り上げてセールス1位、ラジオ33位で今週のHot 100を制した。』

 

2位  モーニング娘。'25「気になるその気の歌」(6,567ポイント)

『続く2位は、モーニング娘。'25「気になるその気の歌」。初週で109,594枚を売り上げセールス2位、ダウンロード10位、ラジオ52位を獲得した。』

 

(※『』内はビルボードジャパンソングチャートの記事より。)

重要なのは、TWS「はじめまして」およびモーニング娘。'25「気になるその気の歌」の双方において、CHART insightでは青で表示されるストリーミング指標を獲得できていないということ。当週のソングチャートにおける上位10曲の指標構成(下記参照)をみると総合3位以下は9位までがこの指標10位以内に入っていますが、それら作品とは大きく異なります。ここからも当週における上位2曲の偏りが解るでしょう。

尤もモーニング娘。'25においては、所属するハロー!プロジェクトにてフィジカルセールスに強い他の歌手と同様、現時点でもサブスク解禁されていません。またTWSはサブスク解禁済ながらストリーミング指標300位未満となり未加点の状況です。この指標のロングヒットが総合での年間チャートランクインに近づくためストリーミングの増強は必須ですが、サブスクに強くなければロングヒットはほぼほぼ叶わないでしょう。

(なおビルボードジャパンのチャートは、『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)の出場歌手選出にも大きく関わっています。)

 

 

さて、当週のソングチャートで注目すべきは、Mrs. GREEN APPLEライラック」がトップ10内に”返り咲き”を果たしたという点です。

Mrs. GREEN APPLEライラック」は5月28日公開分で3位を記録した翌週、14位へ後退。総合ソングチャートの推移は棒グラフで表示されますが、一気にダウンしていることが解ります。昨年4月17日公開分にて11位に初登場した同曲は翌週から今年5月まで5位以内をキープしていましたが、ビルボードジャパンが2025年度下半期以降リカレントルールを導入したことにより急落した形です。

Streaming Songsチャートをストリーミング指標へ転換する際、総合ソングチャートに53週以上ランクインした曲に対し減算処理を施すというのがリカレントルール。「ライラック」はその適用に伴い総合3→14→12→11→13→12位と推移し、当週10位に浮上しています。一方でStreaming Songsチャートでは5月最終週以降2→1→2→3→1→1→1位となり、聴かれ続けていることが解ります(なおストリーミング指標においては5月最終週以降、2→19→21→22→20→20→19位と推移しています)。

6月25日公開チャートで首位に返り咲いて以来、3週連続での首位キープを達成した「ライラック」。再生数の前週比は101.4%と、前々週→前週での増加(100.1%)よりさらに再生回数を伸ばした。当週で「ライラック」の当チャート通算首位獲得回数は35回目となり、Official髭男dism「Pretender」と並び、歴代最多記録まで登り詰めている。

Mrs. GREEN APPLEライラック」はここにきてストリーミング再生回数が2週連続で上昇したのみならず、リカレントルール適用直前となる5月最終週(8,341,978回再生)から当週は8,686,297回再生に上昇していることにも注目です。今週リリースされたベストアルバム『10』に向けての盛り上がり、また「クスシキ」「breakfast」等のヒットが「ライラック」にも波及した結果といえるでしょう。

 

そして、「ライラック」等を収録した『10』の動向にも注目です。音源をほぼデジタル解禁しているMrs. GREEN APPLEにあって、唯一解禁していないミニアルバム『Introduction』(2014 ライブ会場限定発売)に収められた「慶びの種」の新録版も含むこのベストアルバムは、フラゲ日および発売日の2日間でフィジカルセールスがキャリア初のハーフミリオンを突破。既に65万枚を売り上げています。

デジタルに明るくない歌手の中には、デジタル解禁がフィジカルセールスを毀損するという見方もあるかもしれません。たとえば本日発表予定のビルボードジャパンアルバムチャートで首位が見込まれるなにわ男子『BON BON VOYAGE』において、リード曲「ギラギラサマー」はデジタル解禁されながらもアルバム全体では未解禁となっています。そのような中、Mrs. GREEN APPLE『10』の動向が示すものは自明ではないでしょうか。

 

 

最後に。ビルボードジャパンは総合ソングチャートやStreaming Songsチャートの記事にてリカレントルール適用の旨をその適用直後には掲載していましたが、当週のチャート記事では未掲載となっています。リカレントルールが多くの方に浸透するまではその文言を提示し続けることが必要と考え、ビルボードジャパンに対し文言の再掲を提案します。以下に、ルール適用初週における記事のポストを貼付します。