イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

米津玄師「Plazma」がソングチャートで首位に返り咲いた要因、および次週の注目ポイントについて

最新6月18日公開分(集計期間:6月9~15日)のビルボードジャパンソングチャートでは前週首位に初登場したSixTONES「BOYZ」が14位に後退、米津玄師「Plazma」が前週の18位から首位に返り咲いています。

本楽曲は1月20日に配信された劇場先行版『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』の主題歌。1月29日公開チャートで総合首位を獲得していたが、6月11日にダブルA面シングル『Plazma / BOW AND ARROW』が発売された影響で、約5か月ぶりに2度目となる首位を獲得した。初週セールス枚数は310,981枚で、2025年度にリリースされた作品のうち、ソロアーティスト史上最多となる初週売上を記録。また、CD発売の影響でダウンロードも前週比108%、カラオケは106%、動画は198%、ラジオに至っては745%という大きな伸びを見せた。

 

米津玄師「Plazma」の首位返り咲きには複数の要因がみられます。

まずは上記CHART insightにて黄色で表示されるフィジカルセールスについて。フィジカルシングルのリリースは「地球儀」(2023年7月26日発売)以来となりますが、同曲の初週フィジカルセールスは74,042枚となり、今作「Plazma」は4倍以上の初週セールスを記録しています。一方で「地球儀」のひとつ前にあたるフィジカルシングル「KICK BACK」(2022年11月23日発売)は初週289,147枚を売り上げています。

この3作品で初週フィジカルセールスに大きな差が生まれたのは、複数種販売の数自体や内容の違いもさることながら、「KICK BACK」および「Plazma」ではコンサートツアーの最速先行申込が可能なシリアルが封入された一方で「地球儀」には入っていないことが要因とみられます。シリアルを使った申込受付が当週のソングチャート集計期間最終日までとなっていることから、封入はチャート施策の一環ともいえるでしょう。

「米津玄師 2026 TOUR / GHOST」で米津は、11月6日の長野・ビッグハット公演を皮切りに全国6都市で計14公演を実施予定。「Plazma / BOW AND ARROW」封入のシリアルナンバーを使った最速先行は、6月10日12:00~6月15日23:59まで申込みを受け付ける。

 

一方で、米津玄師「Plazma」およびフィジカルシングルのダブルAサイド曲である「BOW AND ARROW」においては、今回の集計期間内にライブパフォーマンス動画が公開されています。なおフィジカルシングルで2曲以上がAサイドと設定されている場合、フィジカルセールス指標は1曲のみに加点されます。

このタイミングでのライブパフォーマンス映像公開は次回のライブを生で観たい(そのために最速先行予約に参加する)というニーズを高めるほか、歌手側の公式YouTubeチャンネル自体への注目度も上昇します。2曲の動画再生指標は「Plazma」が前週比198%を記録し28→11位に、そして「BOW AND ARROW」では43→9位に、それぞれ急伸しています。

(なお各指標の20位未満における順位は、CHART insight有料会員のみが確認可能です。ビルボードジャパンでは有料会員会員のみが知り得る情報の公開を可能としています。)

 

所有および接触双方で施策を行ったことで、米津玄師さんの2曲はプレゼンスを高めています。ダウンロード指標は「Plazma」が前週比108%を記録し8→7位に、「BOW AND ARROW」が67→36位にそれぞれ上昇しており、フィジカルがリリースされたことで所有の選択肢が増えたことが(フィジカル購入には至らずも)ダウンロードを選ぶ方を増やし、また所有行動自体を促進させたものと考えます。

結果として、米津玄師「Plazma」は当週10,273ポイントを記録し、デジタル初加算時(1月29日公開分 11,779ポイント)以来となる二度目の総合首位を獲得。デジタル初加算(初登場)時とフィジカルセールス指標初加算時とで二度の山を築くことに成功しています。

 

 

この”二度の山”についてですが、今年度においてフィジカルセールス初加算時に総合首位に返り咲いたのは米津玄師「Plazma」が3曲目。HANA「ROSE」(4月9日公開分 9,595ポイント→4月30日公開分 10,312ポイント)、Number_i「GOD_i」(2月5日公開分 14,427ポイント→5月28日公開分 14,493ポイント)に続く形ですが、初週フィジカルセールスは「GOD_i」が400,505枚、「Plazma」が310,981枚を記録した一方で「ROSE」は46,866枚と最も少ないながら、最初の山からの上昇度は「ROSE」が最も大きくなっています。

デジタル初加算時からフィジカルセールス初加算時までのスパンも加味する必要がありますが、3曲のうちHANA「ROSE」はフィジカルセールス指標初加算時まで高位置をキープし続けています。同曲はフィジカルセールス加算2週目における総合首位がこれまでで最も低くなっていますが(フィジカルセールス指標加算前後の総合首位は3→1→6位と推移)、しかし下落幅はNumber_i「GOD_i」(72→1→29位)ほど大きくありません。

この点からは、フィジカルセールス初加算時にHANA「ROSE」の同指標シェアが大きくなりすぎていないことがうかがえると共に、デジタル初加算時からフィジカルセールス初加算時までの下降度合いがなだらかであるとも読み取れます。二度の首位獲得はインパクトが高い一方でその首位曲における動向を細かく見れば、HANAは「ROSE」のフィジカルリリースを経てさらなるステップアップにつながったと捉えていいでしょう。

 

 

米津玄師「Plazma」において、フィジカルセールス指標加算2週目となる次週の総合順位を注視する必要があります。所有選択肢の増加がダウンロードの上昇に、また新たな動画の公開が動画再生の増加につながった一方、記事での言及がないストリーミングは23→24位(Streaming Songsチャートの順位であり指標化後は15→17位)と後退していることから、ストリーミングが次週伸びなければ総合のダウン幅は小さくないでしょう。