前回5月28日公開分のビルボードジャパンソングチャートにおいて初のトップ10入りを果たした曲の翌週動向は、下記エントリーにて紹介しています。
その5月28日公開分ソングチャートにおいては、フィジカルセールス指標初加算に伴いNumber_i「GOD_i」が首位に返り咲き。一方、同曲は翌週29位に後退しています。
このブログで毎週掲載するストリーミング表からはNumber_i「GOD_i」がSpotifyで強い一方、他のサブスクサービスとで人気に乖離があることが解ります。
そのSpotifyでのNumber_iの動向をさらに追いかけると、興味深い動きが見えてきます。
Number_iが特にSpotifyで強いことについては、以前お伝えしています。
「GOD_i」は5月19日にフィジカルリリース。このタイミングでフィジカルシングルのカップリング曲がデジタル解禁されていますが、それらカップリング曲が日本の5月18日付Spotifyデイリーチャートにてフライングの形で一斉に初登場(「HIRAKEGOMA」は再登場)すると、翌日付では50位以内にすべて上昇。このことも相まって、5月18日付では200位の再生回数が新記録、翌日付では平日での最高記録を、それぞれ樹立しています。
日本のSpotifyはデイリー50位までをまとめたトップ50プレイリストの存在感が大きく、このプレイリストに入れば上昇気流に、外れると後退することが一般的です。ブログにて”50位の壁”と呼んでいるこの現象の対象曲は、しかし50位から後退した後も大半の曲が急落することなく、50位以内に再度復帰するものもあります。
一方で気になるのは、「GOD_i」のフィジカルリリースから2週間前後で50位圏外に達した曲が、その後一気に後退しているということです。
Spotifyデイリーチャートは通常、日本時間の22時台以降に発表。また一日の区切りが翌日午前9時とみられています。つまり50位の壁を突破した曲は翌日付でトップ50プレイリストの恩恵をおよそ半日分受け、再生回数や順位の上昇につながります(その逆も同様です)。ただ50位圏内から後退したとしてもそこからブレーキがかかることなく急落することは稀なのですが、Number_iのシングルカップリング曲では急落が起きています。
Number_i「GOD_i」フィジカルシングルカップリング曲は「Psycho」「HIRAKEGOMA」が6月1日付、「i_DOG」「ロミジュリ」「Frisco」が翌日付で50位圏外に後退。そしていずれの曲も、後退したその2日後には100位を割っています。これはNumber_iの上昇に押し出される等で50位の壁を越えた曲の動きとは大きく異なるものです。
上記グラフからは、「GOD_i」フィジカルシングルカップリング曲の後退と反比例する形で、「GOD_i」のみならず「GOAT」「BON」および「INZM」の再生回数が上昇傾向にあることも読み取れます。いずれの曲もSpotifyではデイリー50位以内に長くランクインを続ける一方、他のサブスクサービスとの乖離が目立つ作品でもあります。
Number_i「GOD_i」のフィジカルシングルが"50位の壁"を越えた直後に100位圏内からも脱落したこと、またジャクソン・ワン「GBAD」参加版("Number_i Remix")がフィジカルシングルカップリング曲の初登場時にデイリー50位圏外に達したことからは、JIN「Running Wild」の動きを想起した次第です。
JIN「Don't Say You Love Me」がSpotifyのデイリーチャートで現在首位をキープしていますが、一方で同曲の初登場時直前まで7日連続でトップ10入りしていたJINによる「Running Wild」は5月16日付で51位、翌日には64位と推移し、5月18日付以降現在に至るまで200位以内に入っていません。
#JIN「#RunningWild」の動向からはファンダムによる以下の心理が想起可能です。
— Kei (ブログ【イマオト】/ポッドキャスト/ラジオ経験者) (@Kei_radio) 2025年5月20日
・次のアルバムが出るまで推す
・再生回数が可視化されるゆえSpotifyで頑張れる
・その可視化ゆえ順位が下がればより頑張らなければと思う
・1億以上の再生回数を目指したい
・しかしアルバムが出たら再生先を移行する
JIN「Running Wild」等から想起できるファンダム(音楽チャート面を重視するコアファン)の心理については上記ポストを含むスレッドで記した上で、日本のSpotifyにおけるデイリー200位再生回数の記録更新と、一方で注視すべきことについて(5月21日付)にてまとめています。Stationheadのみならず、最近ではSpotify自身も公式リスニングパーティーを行うようになったため、今後はファンダムの熱量がより反映されると考えます。
JIN「Running Wild」はその後も日本のSpotifyデイリーチャートで200位以内に戻っていませんが、「Don't Say You Love Me」は最新6月9日月曜付で首位に返り咲いています。日本では日曜から月曜にかけて再生回数が減少することが一般的ですが、同曲は前日比104.7%と上昇。この点からも、(歌手のファンではないものの曲が気になるから聴くという)ライト層以上にファンダムの熱量が大きく反映されたと想起していいでしょう。
この点を踏まえNumber_i「GOD_i」やフィジカルカップリング曲等の動向をみると、ファンダムの熱量がフィジカルリリースからおよそ2週間持続していることが見て取れます。その後のリリース曲はないため、2週間経過のタイミングでこれまでの代表曲に聴取先を移したともいえそうです。なお弊ブログではCHART insightからヒットを読む カテゴリーのエントリーにて、トップ10入りした次の週の動向が重要と記しています。
Spotifyでは今後、Number_i「GOD_i」が「GOAT」「BON」「INZM」と並びデイリー50位以内に入り続けることが予想されます。日々の動向を追いかけると50位の壁を越えかねないタイミングで再生回数の(他の曲に比べての)上昇が複数確認されており、このこともファンダムの熱量を想起させるに十分です。そしてその熱量がNumber_i「GOD_i」の二度に渡るビルボードジャパンソングチャート制覇の、原動力の一因だと考えます。
この二度の山というインパクトは大きい一方で、気になるのはその合間の谷が大きいということ。「GOD_i」は首位獲得の前週は72位という状況でした。デジタル先行でリリースした後フィジカルも用意される曲については、デジタルの勢いを保つことがまず大事であり、フィジカルセールス指標を追加することでデジタルのみの加算時よりも高い位置に到達するほうがより好いというのが私見です。
デジタルでの安定は、フィジカルセールス指標加算2週目以降についても重要となります。Spotifyが安定していればある程度のロングヒットに至るとして、Spotifyにこだわらず他のサブスクサービスでもヒットすればより高位置で安定するはずです。そのためにはファンダムのみならずライト層にも波及させ、新たなコアファンに昇華させるための道筋を作ることが歌手側、ファンダムにおいても課題に成るのではないでしょうか。