イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

MUSIC AWARDS JAPAN、Grand Ceremonyにて主要や一般投票以外の部門を用意した意味を考える

先週初開催されたMUSIC AWARDS JAPANについては5月19日月曜に演歌・歌謡曲部門、5月21日水曜にPremiere Ceremonyと題して主要以外の各部門、そして5月22日木曜にはGrand Ceremonyとして主要6部門や一般投票部門の授賞式が行われました。そのGrand Ceremonyにおいて、主要や一般投票を除く一部部門でも表彰が行われたことを興味深く感じています。それがこちらの2部門です。

 

 

MUSIC AWARDS JAPANが参考にしたと思しき米グラミー賞もテレビ中継とネット中継パートに分かれ、ネット中継時には主要以外の部門が発表される一方、テレビ中継時にも一部ですが部門賞の発表は行われます。その際は主要部門にノミネートされた歌手が属するジャンルの部門が選ばれることの多い印象ですが、それに対しMUSIC AWARDS JAPANでは少し状況が異なると捉えています。

最優秀アイドル賞はCUTIE STREET、FRUITS ZIPPER、NiziU、Snow Manおよび乃木坂46が、最優秀国内ヒップホップ/ラップアーティスト賞はAwichさん、Creepy NutsXG、千葉雄喜さんおよびちゃんみなさんがノミネート。前者はSnow Manを除く4組が出席し、後者はXGおよび千葉雄喜さん以外の3組がパフォーマンスしており、出席率やパフォーマンス率の高さがGrand Ceremonyで採り上げられた主要因というのが私見です。

 

MUSIC AWARDS JAPANのPremiere CeremonyおよびGrand Ceremonyを会場で確認したnoteプロデューサー/ブロガーの徳力基彦さんによるコラムにもあるように、Creepy NutsはPremiere Ceremonyにも出席し、最後に発表された7部門をすべて制しています。一方でこのような連続受賞は、米グラミー賞ではあまり記憶にありません。

Premiere Ceremonyでは最初に発表された賞をMrs. GREEN APPLEが受賞していますが、彼らも出席していることを踏まえれば、MUSIC AWARDS JAPANがPremiere Ceremonyにも出席した歌手をより目立たせる形で演出したと感じています。連続受賞という表彰部門の順番の配置、そしてノミネート歌手の出席率やパフォーマンス披露歌手の多い部門をGrand Ceremonyにて発表することも、その意図を踏まえればあり得ることでしょう。

(無論、Creepy Nutsのコメント等にもあるように、ヒップホップが日本の音楽業界において以前はマイナーだったかもしれないものの今や欠かせないジャンルに成っているということをMUSIC AWARDS JAPAN側が示すための配置であるとも考えられます。)

 

 

さて、最優秀アイドル賞をGrand Ceremonyでの発表としたことについては、別の見方もあると捉えています。まずは、海外の音楽賞ではあまりみられないアイドルというジャンルを表彰することで訴求するという姿勢。日本のアイドル文化をGrand Ceremony配信を介して海外に浸透させると共に、未だそのカルチャーや音楽性を軽視しているかもしれない一部音楽ファンの見方を是正させることも、目的にあったのではと考えます。

そしてもうひとつは、STARTO ENTERTAINMENT所属歌手の受賞を伝えるということ。同事務所は前体制下において音楽賞(レース)とは距離を置く姿勢を採っていたといわれていますが、MUSIC AWARDS JAPAN側はきちんと表彰し、区別しないという姿勢を、Grand Ceremonyを介して当該事務所、エンタテインメント業界そして世間一般に対し発信したのではないでしょうか。

(STARTO ENTERTAINMENTが前体制下において音楽賞と距離を置く姿勢を採っていたことについては、噂レベルと言われればそれまでです。しかし、たとえば2020年度の日本レコード大賞(→こちら)にてSnow ManSixTONESが新人賞に入っていないことは不自然でしょう。ビルボードジャパンの同年度における年間トップアーティストチャートではそれぞれ12位、11位を獲得しており、ノミネートの資格は十分だったと考えます。)

 

尤も、STARTO ENTERTAINMENT所属歌手においては中島健人さんがGrand Ceremonyのレッドカーペットアンバサダーを務め、WEST.はPremiere Ceremonyで発表されたラージェスト・ライブ・オーディエンス賞受賞に際しコメントを寄せ、またNEWSは一般投票部門にノミネートされた「チャンカパーナ」について投票を呼びかけていました。これらの姿勢、積極的な参加は事務所の変化を感じるに十分だったといえます。

Snow ManはGrand Ceremonyに出席しなかったものの、たとえばメンバーの佐久間大介さんはSNSにてコメントを発信されており、これもまたひとつの変化と捉えていいかもしれません。今回のSnow Manの受賞や中島健人さん等の活躍を踏まえ、次回以降はSTARTO ENTERTAINMENT所属歌手が出席することもあり得るものと感じています。

 

 

MUSIC AWARDS JAPANの中身、また授賞式の演出等については改善が必要な点が少なくないと考えます(その点はこのブログにて記載しています)。また表彰部門の発表順に伴い連続受賞するという魅せ方は、新設音楽賞の訴求においてはプラスかもしれませんが、公平性等を謳う賞において意図の存在を匂わせかねないという意味では好ましくないというのが厳しくも私見です。

しかしながら、MUSIC AWARDS JAPANがGrand Ceremonyにおいて主要や一般投票を除く2部門を発表したことで、主要部門のひとつである最優秀楽曲賞を「Bling-Bang-Bang-Born」が受賞し最多9冠を獲得したCreepy Nutsの存在感(主役感)をさらに高め、そしてSTARTO ENTERTAINMENT所属歌手もきちんと表彰することを訴求できたと考えます。その意義を伝えるという点において、部門賞の用意は良い意味で巧いと感じた次第です。