イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

前週のトップ10初登場曲が真のヒット曲に成るか、CHART insightから読む (2025年5月14日公開分)

昨年夏以降再開したこのエントリー、今年に入ってからタイトルを一部変更しています。前週の内容はこちら。

 

ビルボードジャパンソングチャートの動向を分析する者として、真の社会的ヒット曲とはロングヒットする、年間チャートで上位に進出する作品と考えます。週間単位で上位に入るのは好いことですが、他方で所有指標が極度に強い曲は加算2週目に、また接触指標が所有指標的な動きをなぞる曲(主にLINE MUSIC再生キャンペーン採用曲)はキャンペーン終了後に指標が大きく後退し、総合でも急落することが少なくありません。

この急落は毎週のようにみられます。ソングチャートのトップ10は多いときで5曲程度が毎週入れ替わり、ロングヒットするか否かが極端に分かれる状況です。主にライト層の支持が反映されるストリーミング指標がロングヒット曲では強い一方、急落する曲はコアファンとライト層との乖離が大きいのですが、これらを1週分のチャートの順位およびポイントのみで判断することは、現状では難しい状況です。

そのため、このブログエントリーではビルボードジャパンに対しチャートポリシー(集計方法)の改善も提案していますが、あくまで自分なりのと前置きしつつもチャートの見方を提示したいと考えたのがエントリー再開の理由です。

 

 

<2025年5月14日公開分 ビルボードジャパンソングチャート

 前週初めてトップ10入りした作品の、前週および当週におけるCHART insight>

 

※CHART insightの説明

 

[色について]

黄:フィジカルセールス

紫:ダウンロード

青:ストリーミング

黄緑:ラジオ

赤:動画再生

緑:カラオケ

濃いオレンジ:UGC (ユーザー生成コンテンツ)

 (Top User Generated Songsチャートにおける獲得ポイントであり、ソングチャートには含まれません。)

ピンク:ハイブリッド指標

 (BUZZ、CONTACTおよびSALESから選択可能です。)

 

[表示範囲について]

総合順位、および構成指標等において20位まで表示

 

[チャート構成比について]

累計における指標毎のポイント構成

 

・back number「ブルーアンバー」

 5月7日公開分 1位→5月14日公開分 9位

・≠ME「モブノデレラ」

 5月7日公開分 4位→5月14日公開分 100位未満

 

・超ときめき♡宣伝部「世界でいちばんアイドル」

 5月7日公開分 7位→5月14日公開分 100位未満

Travis Japan「Would You Like One?」

 5月7日公開分 9位→5月14日公開分 75位

 

当週におけるストリーミング表はこちら。


back number「ブルーアンバー」については首位初登場を果たした際に採り上げています。

その際は同じく初登場で首位に立った「新しい恋人達に」(2024)の初週動向と比較したのですが、登場2週目においては「新しい恋人達に」が総合1→5位(ポイント前週比65.8%)だったのに対し「ブルーアンバー」は1→9位(同61.4%)となり、今作の勢いはやや下回っています。

 

一方、アイドルグループにおける3曲のうちフィジカルセールス指標加算2週目となる≠ME「モブノデレラ」および超ときめき♡宣伝部「世界でいちばんアイドル」は総合100位未満に後退し、フィジカル未リリースのTravis Japan「Would You Like One?」は100位以内にとどまっています。しかしながら後者においてはLINE MUSIC再生キャンペーン(→こちら)の影響が大きく、他のサブスクサービスでは強くありません。

LINE MUSIC再生キャンペーンに伴いビルボードジャパンソングチャートのストリーミング指標でも100位以内に登場する曲は今も多い状況であり、当週は超特急「キャラメルハート」や日向坂46「Love yourself!」が同サービスの週間チャートでワンツーフィニッシュを達成しています。しかし他のサブスクサービスと順位が乖離しているならば社会的ヒット曲とは言い難く、また企画終了後の急落は避けられません。

この点については上記エントリーにて紹介しており、アイドルやダンスボーカルグループの曲が社会的ヒットに至るには少なくとも第3段階以降に達することが必要と捉えています。

 

 

その点において今回注目したのが、≠ME同様に指原莉乃さんがプロデュースした=LOVEによる「とくべチュ、して」の動向。TikTokを機にヒット規模が拡大しています。

=LOVE「とくべチュ、して」はフィジカルセールス指標初加算の2週前となる2月19日公開分のビルボードジャパンソングチャートで44位に初登場、ストリーミングは30位にランクインするも当時はLINE MUSICでの人気が突出していました(下記表参照)。これはLINE MUSIC再生キャンペーンの影響とみられています(が、現時点にてキャンペーンの詳細は=LOVE側の公式ファンページ(→こちら)にて会員のみが確認できる模様です)。

(上記画像は前週のトップ10初登場曲が真のヒット曲に成るか、CHART insightから読む (2025年2月19日公開分)(2月22日付)に掲載。)

「とくべチュ、して」はその後、フィジカルセールス指標初加算時となる3月5日公開分ソングチャートで総合4位に上昇するもストリーミングは100位未満に後退、そしてその2週後にはストリーミング300位以内、総合では100位以内から外れています。それが4月16日公開分にてストリーミングが再度加点されると当週まで上昇を続け、総合でも39位まで再浮上した形です。

総合ソングチャートの上昇はフィジカルセールス指標が一度として50位を下回らず、且つ当週は7,934枚を売り上げ15→4位に上昇していることも影響しているとみられますが、フィジカルに増減があったとしてもロングヒットの要たるストリーミングが安定しているため今後さらに上昇するものと考えられます。他のサブスクサービスより上昇が遅れていたSpotifyでも、今週に入り100位以内に上昇しています。

 

=LOVE「とくべチュ、して」はオリコンが昨日発表した5月15日付週間TikTok音楽チャート(→こちら)で4位に入り、メディアからも注目が集まっています。5月12日には『CDTVライブ!ライブ!』でこの曲が披露されており、この日を集計期間初日とする5月21日公開分のソングチャートで上昇する可能性は十分です。また5月23日放送の『ミュージックステーション』(テレビ朝日)でも披露されることになっています。

そして歌手側も、さらなる訴求を実施しています。

ここでライブが終幕かと思われたが、=LOVEは観客の声に応えて再びステージに現れ、この日3度目の「とくべチュ、して」を歌唱。このダブルアンコールのパフォーマンスではスマートフォンでの撮影が可能になり、メンバーは客席に向けてたくさんの笑顔を振りまいた。

=LOVEが今月6日に東京国立代々木競技場第一体育館で行ったコンサートでは、「とくべチュ、して」を三度披露。その際の映像が撮影した観客からSNSYouTubeTikTok等で発信されたのみならず、=LOVE側もTikTokで”FAN CAM ver."と称して各メンバーをフィーチャーした動画を用意しています(下記は同曲でセンターを務める佐々木舞香さん版)。公式側からのバックアップが「とくべチュ、して」を更に伸ばすかもしれません。

@equal_love_12 #イコラブアリーナツアー2025 #とくべチュして FAN CAM ver.🎥🤍 ツアーの追加公演が決定しました✨ FC先行受付は5/13(火) 23:59まで! 7月の有明アリーナ公演もお楽しみに🪽⟡.⋆ #佐々木舞香 #イコールラブ #イコラブ ♬ とくべチュ、して - =LOVE

「とくべチュ、して」はビルボードジャパンソングチャートにおいて、現在まで一度も動画再生指標を獲得できていません。たとえば上記動画を機に=LOVE公式YouTubeチャンネルへの動線が生まれれば、「とくべチュ、して」はヒット規模をさらに拡大できるでしょう。

 

 

ストリーミングの人気に伴い長期ランクインを果たし、ヒットの8段階表で第3段階以降に到達するならば、アイドルやダンスボーカルグループの勢力図は変わっていくことが予想されます。そしてこの状況は『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)の若手出場歌手の動向も大きく左右するでしょう。FRUITS ZIPPERやCUTIE STREETといったKAWAII LAB.所属歌手、そしてHANAがヒットを続ける現在、=LOVEがどこまで上昇するか注目です。