イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

エド・シーラン、新曲「Azizam」よりも「Shape Of You」の週間ストリーミング数が多いことについて

最新4月16日公開分のビルボードジャパンソングチャートではエド・シーラン「Azizam」が78位に初登場を果たしています。

エド・シーランはポップミュージックに回帰したニューアルバム『Play』をリリース予定であり、「Azizam」は同作品への収録が見込まれています。曲名の”Azizam (アジザム)”、および曲調についてはこちらのポストが解りやすいでしょう。

個人的にはアレンジにおけるコードのループが、同じエド・シーランによる「Shape Of You」(2017)を想起した次第です。

 

 

さて、ビルボードジャパンソングチャートにおけるエド・シーラン「Azizam」のCHART insightから、気になる点がみえてきます。

「Azizam」は4月4日金曜にリリースされ、月曜を集計期間初日とするビルボードジャパンソングチャートでは最新4月16日公開分(集計期間:4月7~13日)が初の1週間フル加算となるのですが、この2週分の獲得ポイントには青で表示されるストリーミング指標は含まれていません。一方で、「Shape Of You」は最新チャートにおいてもこの指標が300位以内に入り、加算されています。

 

エド・シーラン「Shape Of You」は全世界で大ヒットを記録したこと、日本でもドラマ『僕たちがやりました』(2017 フジテレビ)の挿入歌に用いられたこともあり、ビルボードジャパンでは2017年度の年間ソングチャートで2位を記録しています。この曲が大ヒットに至った背景については、ブログにて分析しています。

「Shape Of You」は2021年9月末を最後にストリーミング指標100位以内から離れるも、この指標では現時点まで300位以内に常時ランクインし、加点され続けています。

一方で「Azizam」は米ビルボードソングチャートで28位、また地元イギリスでは3位と高くないこと、直近のアルバム(『-』および『Autumn Variations』(共に2023))から米でトップ10ヒット曲が誕生しなかったこと(によるアーティストパワー低下の可能性)も影響していると考えつつ、日本で「Shape Of You」が聴かれ続けるならばコードのループという点で共通する「Azizam」にもスポットが当たっていいのではと感じています。

 

(エド・シーランは「Shape Of You」「Azizam」の双方で、ループステーションを使っていることが下記YouTube動画にて確認できます。コードのループについてはこれら動画を是非ご覧ください。)

 

 

エド・シーランによる2曲のチャート動向からは、日本人が洋楽(特に新曲)に親しむことの必要性を実感しています。

 

昨年始め、”日本人の洋楽離れ”がXで話題となったタイミングで、現状の把握および改善提案を記しました。

日本での洋楽ヒットが多くはない中、それでもビルボードジャパンソングチャートではラジオが他指標に比べて洋楽が強い状況です。しかしラジオはソングチャートでの影響力が小さく、また施策が比較的大きく作用すること(ビルボードジャパンソングチャート、ラジオ指標での施策影響の可能性とチャート側への提案を記す(4月13日付)参照)を踏まえれば、ラジオ以外でのポイント獲得は必須課題といえます。

 

また、ともすれば、「Azizam」はリリースされたばかりゆえ未だ浸透しているわけではないという指摘が出てくるかもしれません。しかし洋楽は基本的に金曜リリースの一方で日本の楽曲はリリース曜日がバラバラであること、むしろフィジカルリリースの慣習に倣いデジタルでも水曜主体となっているために、日本人が金曜に新曲をチェックする習慣が高くないという点を理解する必要があると考えます。

その習慣を変えるという意味でも、日本の作品を金曜リリースにて統一することの必要性を記したブログエントリーを再掲します。日本市場における洋楽の割合が小さくなれば歌手側が日本でのライブやプロモーションを積極的に行わなくなる可能性も考えられますが、その懸念の払拭という意味でもこの提案は有効だと考えます。

 

 

今回のエド・シーラン「Azizam」および「Shape Of You」のチャートアクションから何を受け取るか、そして改善のために本腰を入れるかどうかが日本の音楽業界の未来を左右すると考えるのは、決して大げさなことではないはずです。