イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(追記あり) HANA「ROSE」がビルボードジャパンソングチャートを初登場で制覇…その背景、および今後の注目点

(※追記(4月16日19時31分):冒頭にて『最新4月9日公開分(集計期間:3月1日~4月6日)』と記していましたが、正しくは『最新4月9日公開分(集計期間:3月31日~4月6日)』でした。つきましては訂正を行っております。心よりお詫び申し上げます。)

 

 

 

最新4月9日公開分(集計期間:3月31日~4月6日)のビルボードジャパンソングチャートは前週首位の乃木坂46ネーブルオレンジ」が31位に後退。HANAによる初のフィジカルシングル表題曲「ROSE」が初登場にて、そのフィジカルセールス加算前の段階で総合首位に立っています。

本作はBMSG×ちゃんみなガールズグループオーディション『No No Girls』から誕生した7人組ガールズグループHANAのメジャーデビュー曲。初週売上は、12,870DLでダウンロード2位、8,781,853再生でストリーミングも2位、ラジオ17位、動画1位を獲得し、首位デビューを飾った。

HANA「ROSE」は当週9,595ポイントを獲得。2025年度のビルボードジャパンソングチャート、女性アイドル/ダンスボーカルグループの作品では櫻坂46「UDAGAWA GENERATION」(2月26日公開分 10,323ポイント)、乃木坂46「歩道橋」(2024年12月18日公開分 9,834ポイント)に続く水準ですが、「ROSE」はフィジカルセールス未加算、集計対象5日間、そしてポイントの半分がストリーミング指標から成ることに注目です。

集計期間中の4月2日にリリースされたHANAのメジャーデビュー曲「ROSE」は、5日間の集計で「ライラック」に猛追する878万回超をたたき出し、初登場2位に。プレデビュー曲「Drop」での最高位20位を大きく上回り、グループの存在感の高まりが窺える結果となった。初の1週間フル集計となる次週4月16日公開チャートで、さらに当週を超える再生数となるか注目だ。

HANA「ROSE」は集計対象期間5日分でMrs. GREEN APPLEライラック」(9,623,515回再生)に迫る8,781,853回再生を記録。加えて、主要サブスクサービスの動向にはあまり乖離がみられません。下記ストリーミング表においてSpotifyの集計対象期間は2日間およびAmazon Musicは同4日間であり、また「ROSE」はAmazon Musicを除く3つのサブスクサービスにおいて土曜および日曜のデイリーチャート共に3位以内に入っています。

 

BE:FIRSTに代表されるように、BMSG所属歌手作品のデジタルリリース(フィジカルリリース作品の先行解禁含む)はチャート集計期間初日に当たる月曜に行われることが多い中、HANA「ROSE」は水曜にデジタル先行解禁を実施しています。これはちゃんみなさんに4月2日へのこだわりがあったことが背景にある模様です。

(上記ポストの存在はXにて教えていただきました。この場を借りて感謝申し上げます。)

オーディションのコンセプトやちゃんみなさんの思いを汲んだ方と歌手側との高い信頼関係は所有指標のダウンロード数からもみえてきます。一方でコアファンの熱量は一部サブスクサービスの再生回数の多さ、サービス間での順位の乖離につながりがちでしたが、今回乖離がほぼみられないのはリリース前からのメディア露出の多さも相まって、歌手のファンではないが曲が気になるライト層へもリーチしたゆえと捉えています。

HANAは「ROSE」のチャート結果を踏まえ、ビルボードジャパンそしてオリコンの双方にてコメントを発信しています。これはBMSGでBE:FIRSTが複数回行っている施策と同様であり、HANAのマーケティングにはBMSGによるこれまでの実績も投影されているといえます。一方で先述したデジタルリリース日設定からは、BMSGがちゃんみなさんそしてHANA側の意志を尊重する姿勢がみえてくるようです。

 

 

今後の注目点のひとつは、(ある程度コアファンの数を把握可能な)初週のフィジカル売上枚数がどのくらいになるか、そして少なくともフィジカルセールス指標初加算時となる4月30日公開分ソングチャートまでデジタルをキープできるかということ。HANAは昨夜新たな動画を公開しており、チャート施策を徹底しているという印象です。初の1週間フル加算となる次週、ストリーミング再生回数が1千万回を超えるか注目しましょう。

(ちなみに、このような施策の存在を指摘するとその指摘自体に”他意がある”と揶揄されることがありますが、施策はどの歌手も行っています。リリーススケジュールを決めることやSNSでの発信自体も施策の一環と呼べるものです。海外の歌手はチャート結果を踏まえたコアファンへの感謝の発信をよく行っており、日本の歌手が世界で活躍を目指すならば発信の徹底は欠かせないというのが私見です。)

 

そしてもうひとつ。今回のチャート結果を機に、フィジカルセールスに強いアイドルやダンスボーカルグループがデジタルをきちんと意識するようになるかが気になります。

この点はHANA「ROSE」がチャートを制する可能性を踏まえて昨日付エントリーにて述べたばかりですが、当週はAKB48「まさかのConfession」がフィジカルセールスでハーフミリオンを達成しながらストリーミングは未加算(300位未満)となり、総合で「ROSE」の後塵を拝しています。

AKB48「まさかのConfession」はフィジカルリリースに先駆けて3月8日にデジタル配信を開始していますが、上記CHART insightからはストリーミング、ダウンロード共に当週の集計期間まで一度も300位以内に入らなかったことが判ります。

AKBグループでは当週総合34位に再浮上したSKE48「Tick tack zack」のようにフィジカルリリース後のフィジカル施策が少なくなく、フィジカルセールスが伸びるタイミングで総合チャートに復帰する傾向があります。しかしこの施策は他指標の上昇にほぼつながりません。これまでのチャート動向からはこの施策がコアファンの熱量頼りであり、ライト層獲得にはつながっていないと読むことができます。

ライト層が少ない場合、コアファンが物理的や精神的に疲弊し歌手から離れれば、コアファンの純粋な減少につながり最終的にはフィジカルセールス自体キープできなくなる可能性があります。そもそもフィジカルセールスに強くともそれだけでは社会的ヒット曲とは呼び難くなり、『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)でも選ばれにくくなっていることを踏まえれば尚の事、デジタルに注力することの重要性が理解できるはずです。

 

今回はAKBグループを例に出しましたが、デジタルの強くなさはほぼすべてのアイドルやダンスボーカルグループに当てはまります(総合首位→31位に後退した乃木坂46ネーブルオレンジ」も同様であり、同曲は土曜付エントリーにて分析します))。J-POPのみならず、大半のK-POP歌手についても同様です。フィジカルの強さは素晴らしいですが、ならばそれをデジタルの補完と位置付け、まずデジタルで強くなることが必要です。

 

 

HANA「ROSE」がデジタルでロングヒットし、フィジカルセールス指標初加算のタイミングで高ポイントを獲得すれば、日本の音楽業界における(特にアイドルやダンスボーカルグループでの)デジタル意識は高まっていくでしょう。その点ひとつをとっても、HANAの登場は大きなインパクト、そして意義があると感じています。