イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

竹内まりや『Precious Days』新装盤のリリースから、デジタル未解禁について今一度考える

竹内まりやさんが昨年10月にリリースしたアルバム『Precious Days』に、本日新装盤"souvenir edition"が登場。オリジナルアルバムリリース時に用意されたライブ映像同梱版(→こちら)の、その音源をCD化したものが今回付随した形です。

新装盤の開封動画からも、豪華な仕様であることが見て取れます。他方、今回の新装盤のうちディスク1は元々の『Precious Days』そのままであること、またディスク1および2は共にデジタル未解禁であることから、元のアルバムを購入していた方がディスク2収録のライブ音源を聴きたいと考えれば新装盤を手に入れる必要があり、購入すれば元のオリジナルアルバムが重複するということになります。

 

 

さて、最近はオリジナルアルバムリリース後の、"デラックスエディション"と称したリリースが多い状況です。

30曲入りのアルバム『Music』をリリースしたプレイボーイ・カルティは、アルバムリリースからおよそ10日後に4曲を追加した『Music - Sorry 4 Da Wait』をリリース。『Music』は米ビルボードアルバムチャートで2連覇を果たしていますが、登場2週目はセレーナ・ゴメスとベニー・ブランコによるコラボアルバムと僅差だったこともあり、デラックスエディションはチャート上で有利となるための施策とも考えられます。

また次週の米ビルボードアルバムチャートではアリアナ・グランデ『Eternal Sunshine』がおよそ1年ぶりに上位進出を果たす予定。こちらも6曲を追加したデラックスエディション『Eternal Sunshine Deluxe: Brighter Days Ahead』を用意したことが要因となります。オリジナルアルバムのリリースから間もなくであれ、1年が経過した作品であれ、音楽チャートも見据えた形でのデラックスエディションが多いというのが現状です。

 

翻って日本ではデラックスエディションが(一時期ユニバーサルミュージックからのリリースが目立ったものの)多くはないという印象でしたが、今回竹内まりやさんが実施しています。しかし元のアルバム『Precious Days』は現時点でデジタル未解禁のままです。

デラックスエディションは元のバージョンと重複することから、ともすれば購入を躊躇する方もいらっしゃるかもしれません。ゆえにデジタルを用意することで受け手の経済的負担等を抑えること、無理しない範囲での選択が可能となります。米音楽業界ではデジタルリリースが当たり前となっていますが、竹内まりや『Precious Days』は未だ配信されないことに加えて、本日に入りこのような措置が採られています。

『Precious Days』新装盤に収められたライブ音源は、25年前にリリースされたライブアルバムの続編といえるでしょう。その25年前のアルバムがこのタイミングで配信リリースされていることから、聴いて気になった方が『Precious Days』新装盤を手にすることを願い、このタイミングで解禁したと捉えていいのかもしれません。フィジカルを買ってもらいたいという思い自体は自然なことではあります。

 

しかし、デジタル時代にあって未だ十分な解禁を行っていない方が遅ればせながら解禁した際、"サプライズ"や"遂に"等の表現を用いることに違和感を抱きます。特に日本はベテランや大手芸能事務所所属歌手に対し"なぜ解禁しないのか"と尋ねる声が乏しく、遅れて解禁した場合には素直に好いことだと許容されます。その風潮が日本のデジタル移行の遅れ、また海外からの信頼失墜につながっているのではないでしょうか。

来月にはMUSIC AWARDS JAPANが初開催され、世界に日本の音楽を発信する動きが高まりますが、その発信にはデジタル解禁が前提となることは自明です。またビルボードジャパンはアルバムチャートにストリーミング指標を採り入れており、デジタル未解禁作品の見つかりにくさやヒットのしにくさは高まっています。音楽業界は総出で、ベテランや大手芸能事務所側に"なぜ解禁しないのか"をはっきり問うことが必要です。

 

 

今回記した内容は昨年末にも掲載しています。未だ改善に向かっていないことに悲しみを抱きます。