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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

「Rock this Party」がデイリートップ5入り、timeleszのサブスク解禁直後における動向を押さえる

オーディションを経て8人組となったtimeleszが、2月28日金曜にサブスクを解禁。Sexy Zone時代の楽曲も含む12曲をまとめた『Hello! We're timelesz』、そして新曲「Rock this Party」が各サブスクサービスで好調なスタートを切っています。

(Spotifyによる上記プレイリストはサブスクサービス公式によるもの。新曲、『Hello! We're timelesz』収録の全曲およびメンバーからのメッセージ音声が含まれています。)

 

 

timeleszの作品は「Rock this Party」を主体に、日本のSpotifyApple Musicでは2月27日付の段階でフラゲ的な形で初登場を果たしていました。そしてリリース日となる2月28日付にて、彼らの楽曲が大きく動いています。以下、昨日発信のポストを貼付します。

<日本における2月28日付主要サブスクサービス timelesz各曲の動向>

 

Spotify (デイリー200位まで公開)

 

Apple Music (デイリー100位まで公開)

 

・LINE MUSIC (デイリー100位まで公開)

 

SpotifyおよびApple Musicは1日の区切りが午前0時以降と考えられるため、2月28日付にて初の24時間フル加算となります。

Apple Musicでは2月27日付にてtimelesz「Rock this Party」が41位に初登場。『Hello! We're timelesz』収録曲は2月28日付で初登場を果たしています。

※ LINE MUSICは1日の区切りが午前0時となり、2月28日付にて全曲が初登場しています。

 

timeleszは主要サブスクサービスすべてで「Rock this Party」を4位以内に送り込んでいます。またLINE MUSICでは最新3月1日付デイリーチャートにて『Hello! We're timelesz』収録曲がいずれもランクを落としながら、「Rock this Party」は首位の座をキープしている状況です。

 

 

200位までの順位、および再生回数が可視化される日本のSpotifyデイリーチャートに注目すると、STARTO ENTERTAINMENT所属歌手の作品がリリース日に高位置にて登場するのは珍しいことです。

<STARTO ENTERTAINMENT所属歌手による主なサブスクヒット曲

 日本のSpotifyデイリーチャートにおける記録一覧>

 

・嵐「Turning Up」 (リリース日 2019年11月3日)

 リリース日の順位 7位 (同日付初登場)

 デイリー最高 3位

 

Travis JapanJUST DANCE!」 (リリース日 2022年10月28日)

 リリース日の順位 200位未満 (2022年10月31日付にて188位に初登場)

 デイリー最高 153位

 

・GEMN「ファタール」 (リリース日 2024年7月4日)

 リリース日の順位 55位 (同日付初登場)

 デイリー最高 9位

 

・NEWS「チャンカパーナ」 (サブスク解禁日 2024年9月15日)

 リリース日の順位 137位 (同日付初登場)

 デイリー最高 59位

 

Snow Man「One」 (リリース日 2024年10月14日 ※正午解禁)

 リリース日の順位 37位 (同日付初登場)

 デイリー最高 37位

 

・timelesz「Rock this Party」 (リリース日 2025年2月28日)

 リリース日の順位 4位 (前日付にて47位に初登場)

 デイリー最高 4位 (現時点において)

 

※ NEWS「チャンカパーナ」のみ過去曲のデジタル解禁という形のため、"リリース日"ではなく"サブスク解禁日"と記しています。

日本のSpotifyデイリーチャートにおいてフラゲ的な形で200位以内に初登場する曲は多くはなく、そのフラゲ日にて50位以内に入ることは極めて稀です(前週サカナクション「怪獣」を取り上げたのはそれが理由です(ブログエントリーはこちら、「怪獣」はフラゲ日に10位初登場、リリース日には首位に))。アイドルやダンスボーカルグループ曲においてもなかなかみられないこの記録を、timeleszは成し遂げています。

 

 

となると気になるのは、timelesz「Rock this Party」が勢いをキープするか、そして複合指標から成るビルボードジャパンソングチャートでどこまでヒットするかということです。

 

ビルボードジャパンソングチャートは時代に応じたチャートポリシー(集計方法)変更を経て、特にフィジカルセールス指標に減算処理を施した2017年以降は様々な社会的ヒット曲を可視化しています。このチャートではフィジカルセールス指標初加算時に一時的な上位進出が可能ですが、より重要なのはストリーミングのロングヒットに伴う上位安定、そして年間チャートへの進出だということが、下記データからも分かるはずです。

ビルボードジャパン年間ソングチャート 2017年度以降における

 STARTO ENTERTAINMENT所属歌手作品の50位以内ランクイン一覧>

 

・2017年度 (年間首位 星野源「恋」)

 29位 嵐「つなぐ」(フィジカルリリースまでにデジタル解禁せず)

 33位 嵐「I'll be there」(フィジカルリリースまでにデジタル解禁せず)

 36位 SMAP世界に一つだけの花」(デジタル未解禁)

 40位 嵐「Doors~勇気の軌跡~」(フィジカルリリースまでにデジタル解禁せず)

 49位 亀と山P「背中越しのチャンス」(デジタル未解禁)

 

・2018年度 (年間首位 米津玄師「Lemon」)

 12位 King & Prince「シンデレラガール」(フィジカルリリースまでにデジタル解禁せず)

 22位 嵐「夏疾風」(フィジカルリリースまでにデジタル解禁せず)

 35位 嵐「Find The Answer」(フィジカルリリースまでにデジタル解禁せず)

 42位 King & Prince「Memorial」(フィジカルリリースまでにデジタル解禁せず)

 44位 嵐「君のうた」(フィジカルリリースまでにデジタル解禁せず)

 

・2019年度 (年間首位 米津玄師「Lemon」)

 36位 嵐「BRAVE」(フィジカルリリースまでにデジタル解禁せず)

 

・2020年度 (年間首位 YOASOBI「夜に駆ける」)

 15位 Snow Man「D.D.」(デジタル未解禁)

 19位 SixTONES「Imitation Rain」(デジタル未解禁)

 23位 SixTONES「NAVIGATOR」(デジタル未解禁)

 29位 Snow Man「KISSIN' MY LIPS」(デジタル未解禁)

 38位 嵐「カイト」(フィジカルリリースまでにデジタル解禁せず)

 44位 King & Prince「Mazy Night」(フィジカルリリースまでにデジタル解禁せず)

 

・2021年度 (年間首位 優里「ドライフラワー」)

 40位 Snow Man「Grandeur」(デジタル未解禁)

 

・2022年度 (年間首位 Aimer「残響散歌」)

 (50位までのランクインなし)

 

・2023年度 (年間首位 YOASOBI「アイドル」)

 (50位までのランクインなし) 

 

・2024年度 (年間首位 Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」)

 (50位までのランクインなし)

 

※ GEMN「ファタール」は社会的ヒットに至るか、そしてSTARTO ENTERTAINMENT等の方針を変えるか(2024年7月20日付)記載内容を基に2024年度分を追加し、タイトルを一部変更しています。

GEMN「ファタール」は2024年度年間ソングチャートで50位以内には届かなかったものの54位に入り、STARTO ENTERTAINMENT所属歌手作品では同年度唯一の100位以内エントリーを果たしています。週間最高はフィジカルセールス指標初加算時の3位でしたが(初週売上枚数は21,306枚(2024年9月11日公開分))、主にストリーミングの強さが総合100位以内32週連続エントリーの原動力となっています。

そのGEMN「ファタール」は日本のSpotifyデイリーチャートにおいて最高9位であり、初登場時(リリース日)には50位以内に達していませんでした。このことからも、timelesz「Rock this Party」が如何に特筆すべき動向を示しているかがよく分かるでしょう。

 

 

timeleszの今後のチャートアクションを注視する必要がありますが、今回の特筆すべき動向からは様々なことを感じています。

 

timeleszの新体制が発表された(『timelesz project』(通称タイプロ)最終回が配信された)のは2月15日。その翌日、オーディション開催終了までにそのオーディションで使用した曲を主体にサブスク解禁しなかったのは機会損失ではと記したエントリーを公開しました。オーディションを観た方の熱量がサブスク解禁時まで保てるかが気になっていましたが、チャート動向を踏まえればその熱量は下がっていないのではと感じています。

 

また、timelesz「Rock this Party」がビルボードジャパンソングチャートで週間/年間単位の双方にてインパクトを残せば、STARTO ENTERTAINMENT所属歌手をはじめアイドルやダンスボーカルグループの運営側におけるデジタルへの意識は変わっていくことでしょう。今回はオーディション効果という側面もありながら、しかしtimeleszがテレビ等のメディアのみならずSNSでも訴求を徹底していることは十分参考になるはずです。

 

timeleszの前身であるSexy Zoneは2011年にフィジカルデビューを果たしており、キャリア10年以上を誇ります。アイドルのみならず中堅以上の歌手のサブスクヒットが多くない状況で今回のヒットが生まていることは、デジタルに積極的ではない歌手に対し前向きな姿勢を促すことにもつながるでしょう。

そしてこのことは同時に、サブスクをあまり使ってこなかったユーザーにも積極的な利用をもたらすかもしれません。デジタルに消極的な歌手の中にはそのデジタルへの懐疑的な姿勢をそのまま口にする方がいらっしゃいますが、その見方は特に中高年ユーザーの中でくすぶっているかもしれません。デジタルの重要性、またフィジカルを阻害するのではなく両立するという考えが芽生えれば、サブスクユーザーは増加するはずです。

そしてその増加が、たとえばサブスク解禁直後から曲がチェックされるという姿勢につながれば、サブスクでのデイリーチャートやビルボードジャパンソングチャートでの初動インパクトの増大、そしてチャートの活性化につながっていくものと考えます。

 

 

ビルボードジャパンはデイリーセールスを公表していませんが、オリコンのダウンロードデータ(上記ポスト参照)や主要サブスクサービスの動向を踏まえれば、次回3月5日公開分(集計期間:2月24日~3月2日)のビルボードジャパンソングチャートでtimelesz「Rock this Party」が上位に初登場する可能性は高いでしょう。サカナクションや、フィジカルセールス指標初加算のなにわ男子および=LOVEを上回るかにまずは注目です。その上で初の1週間フル加算となる3月12日公開分の動向も注視することが必要です。

 

もうひとつ、timelesz「Rock this Party」においては高いダウンロード数も踏まえるに、米ビルボードによる3月15日付グローバルチャート(集計期間:2月28日~3月6日 Global 200、およびGlobal 200から米の分を除くGlobal Excl. U.S.)にて200位以内に初登場を果たす可能性も出てきたと捉えています。

世界の主要デジタルプラットフォームにおけるストリーミング(動画再生含む)およびダウンロードから成る米ビルボードのグローバルチャートでは、日本の楽曲はGlobal 200よりGlobal Excl. U.S.が高くなる傾向にあります。仮に海外からの支持が大きくないとしてもグローバルチャートにランクインすれば、それを足掛かりに海外展開も可能になっていくことでしょう。日本時間の3月11日に発表されるこのチャートにも注目です。

 

 

最後に。日本の2月28日付Spotifyデイリーチャートでは松島聡さんによるメッセージ音声が200位以内にランクインしています。この状況は極めて珍しいのですが、このことはプレイリストを聴取している方や選曲の意図を知りたい方の多さを示しているといえるでしょう。特に後者の面から、新体制timeleszへの高い期待を感じています。