AKASAKI「Bunny Girl」のヒット規模が拡大を続けています。
ビルボードジャパンが不定期で発信するポッドキャストの最新回では、MCを務めるチャートディレクターの礒﨑誠二さんが「Bunny Girl」の上昇について触れています(下記動画の3分33秒以降参照)。実際、「Bunny Girl」は4週連続トップ10入りを果たし、順位ともにポイントは伸び続けています。
「Bunny Girl」はストリーミング指標において主要サービスの乖離がほぼないことも大きな特徴です。
(上記表の全体版は11月15日付ブログエントリー(→こちら)にて掲載予定です。)
またカラオケ指標の上昇も目立っています。CHART insightは無料会員向けには総合および各指標20位までが公開され、構成指標のうちラジオ、動画再生およびカラオケは20位未満の順位を知る手段が有料会員に成る以外はほぼないのですが、実はカラオケにおいて急速に拡大している状況です。ともすればこの指標で数週以内に20位以内に到達し、無料会員でも動向が可視化されるかもしれません。
カラオケについては、ソングチャートの構成指標ではないものの”歌ってみた”や”踊ってみた”に代表されるUGC(ユーザー生成コンテンツ)のヒットを示すTop User Generated Songsチャート、またTikTokの人気を示すTikTok Weekly Top 20といったチャートと連動する傾向があり、たとえばCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」はこれら”活用”で強いのが特徴です。AKASAKI「Bunny Girl」は最新のUGCチャートで過去最高となる7位に上昇していますが、一方のTikTokでは10月のリリース以前から知られていました。
AKASAKI「Bunny Girl」が伸び続けている要因について、以下の4点が考えられます。
1つ目は【TikTokでの先行公開】です。
@akasaki_0727 「bunny girl」という曲です#オリジナル曲 #作詞作曲 #バズれ #AKASAKI ♬ Bunny Girl - AKASAKI
そんなAKASAKIは7月に新曲「Bunny Girl」の一部を自室で演奏している動画をTikTokに投稿。すぐさまこの曲がトレンドになり、フルバージョンを聴きたいという声が次々と寄せられることになった。
・「Bunny Girl」でAKASAKIは親に認められるのか? / 京本大我ソロ曲に感じるhideへの熱いリスペクト | 再生数急上昇ソング定点観測 (2024年10月3週目) - 音楽ナタリー コラム(10月18日付)より
TikTokの先行公開は海外で施策として有効に作用していることを、米ビルボードソングチャート速報を毎週追う者として実感しています。近いうちに発表されるであろう米年間ソングチャートにてトップ10入りが予想されるジャック・ハーロウ「Lovin On Me」やポスト・マローン feat. モーガン・ウォレン「I Had Some Help」についても、この”チラ見せ”が行われています。
期待値を高めることでフルバージョン公開タイミングでの高い瞬発力につなげることが可能となります。AKASAKI「Bunny Girl」は10月2日水曜にリリースされ、10月9日公開分ビルボードジャパンソングチャートで40位に初登場していますが、キャリア初となる100位以内エントリー曲で、集計期間5日分にて、また日本ではストリーミングの初動が大きくない中にあって総合40位にランクインしたことは立派な成績といえます。
2つ目は【二次創作の充実と創作環境の用意】です。たとえばYouTubeで”AKASAKI Bunny Girl カバー”と検索すると様々なバージョンにたどり着きます(検索結果はこちら)。たとえば現時点でYouTubeのチャンネル登録者数が93万を記録している超学生さんのカバーバージョンは、ブログエントリー執筆時点で126万回再生を記録しています。
AKASAKIさんは「Bunny Girl」リリックビデオや後述する動画において、概要欄にて『[二次創作データ(※ご自由にカバー投稿して下さい!)]』としてGoogleドライブのデータのリンクを掲載しています。先程UGC(ユーザー生成コンテンツ)について紹介しましたが、このようなデータの公開がカバー版の制作を増やし、カバー版の概要欄にて掲載されたオリジナルバージョンの視聴につながっていくものと思われます。
3つ目は【別バージョンや新曲の登場】です。AKASAKIさんは11月2日に「Bunny Girl」の”Acoustic Boat 1st take”バージョン動画を公開、13日には”Natural”と題した新バージョンの音源および動画を公開しています。
加えて、「Bunny Girl」は10月2日のオリジナルバージョンリリース時にインストゥルメンタル版のみならず、スピードアップ版(Sped Up)およびスローダウン版(Slowed Down)もリリースしています(これは”Natural”バージョン配信時も同様です→こちら)。TikTokで人気のバージョンを用意することで活用の拡大も目指していると思われますが、様々なバージョンはたとえば米ビルボードによるグローバルチャートで合算対象となります。
ビルボードジャパンでは言語の違いのみを除き別バージョンは基本的に合算されませんが、しかし動画再生指標においては動画に付番されるISRC(国際標準レコーディングコード)が同一ならば合算されます。これはTHE FIRST TAKE等でもみられる傾向ですが、実際に動画公開効果は最新11月13日公開分のビルボードジャパンソングチャートで表れています。
その他、AKASAKI「Bunny Girl」が8位から6位に浮上。10月9日公開分で初チャートインして以降、ストリーミング数と動画再生数が増加し続けており、ストリーミングは前週比113%、動画は119%となっている。
【ビルボード】超特急「AwA AwA」が総合首位、グローバルヒット中のロゼ&ブルーノ・マーズ「APT.」は2位に https://t.co/bTZ0c0vHny
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2024年11月13日
ヒット作品が生まれることで新曲リリース時にヒット曲が(再度)フックアップされることは、たとえばCreepy Nuts「オトノケ」のヒットで「Bling-Bang-Bang-Born」のポイント漸減が収まったことからも明らかです。AKASAKIさんは11月4日に新曲「今夜は君と」を配信しており、そのタイミングで(リリースから間もないながらも)「Bunny Girl」の人気が加速したともいえるでしょう。
そして4つ目は【エンゲージメントの確立】です。
なんと「Bunny Girl」がSpotifyの週間🥇になりました、、、😭🙇♂️
— AKASAKI(18) (@akasaki_0727) 2024年11月6日
みんなほんとにありがとう!新曲「今夜は君と」もたくさん聴いてね❗️
[Bunny Girl]https://t.co/AXtw8cqPhM
[今夜は君と]https://t.co/iAI8QLJYYV#AKASAKI #BunnyGirl #今夜は君と@SpotifyJP pic.twitter.com/GHM9VLb5Yd
AKASAKIさんは好調なチャートアクションが判明する度に喜びのリアクションを発信しています。これが歌手を応援したいというコアファンの思いを深めると共に、ライト層(コアファンではないものの曲が気になる方)がコアファンに昇華するきっかけにつながる、一種のエンゲージメント確立に成るものだと感じています。
外国語でのリアクションもまたエンゲージメント確立において重要ですが、こっちのけんとさんのポストにおける純粋なリアクションの数々からは、それが施策の徹底という以上に誠心誠意という感覚を抱きます。その心からの感謝の意も、多くの方に届く理由かもしれません。
エンゲージメントについては以前、こっちのけんと「はいよろこんで」を採り上げた際にも紹介しました。エンゲージメントは特にYOASOBIがその確立に長けているのですが、自然な言葉での発信がより大きな意味を持つものと考えます。
AKASAKI「Bunny Girl」においては【TikTokでの先行公開】【二次創作の充実と創作環境の用意】【別バージョンや新曲の登場】そして【エンゲージメントの確立】、この4点がヒットおよびその加速につながっているものと捉えています。
連休2日目は、【有働Times】でAKASAKIを取り上げていただく予定です😳🙇♂️
— AKASAKI(18) (@akasaki_0727) 2024年11月2日
楽しみだ、、❗️ #アカサキの3連休 pic.twitter.com/1wk8ckf3d3
「Bunny Girl」がさらに伸びるためには、メディア、特にテレビ番組での露出が重要と考えます。AKASAKIさんは11月3日放送の『有働Times』(テレビ朝日)で採り上げられていますが、テレビでの話題は特にダウンロード指標に影響を及ぼし、実際放送日の翌日からを集計期間とした最新11月13日公開分のビルボードジャパンソングチャートでは同曲のダウンロード指標が前週比153.5%と大きく伸びています。
年末にかけては地上波において、通常音楽番組の減少と長時間音楽番組の増加が予想され、後者においては直近のヒット曲が披露されにくい傾向にあります。ゆえにAKASAKIさんがテレビ露出できるかは難しいかもしれませんが、音楽チャート動向を踏まえれば間違いなく注目を集めるものと考えます。