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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

Snow Man『RAYS』、フィジカルの初週ミリオン達成とデジタルの未解禁から考えること

最新11月6日公開分ビルボードジャパンソングチャートではSnow Man『RAYS』が初登場で首位を獲得。初週フィジカルセールスは前作超えを果たしたのみならず、今年のリリース作品で初となる初週ミリオンを達成しています。

アルバムチャートはフィジカルセールスおよびダウンロードという所有2指標で構成されますが、『RAYS』はフィジカルセールス(CHART insightでは黄色で表示)のみでポイントを獲得していることが解ります(ダウンロードは紫で表示)。今作にはSnow Man初のデジタル解禁曲となった「One」も収録されていますが、一方でアルバム自体は(これまでのアーカイブも含め)解禁されていません。

ビルボードジャパンアルバムチャートでは竹内まりや『Precious Days』から2作連続でデジタル未解禁アルバムが総合首位を獲得しています。さて、『RAYS』のリード曲はどう動いたのでしょう。

 

Snow Manにとって初のデジタル解禁曲となった「One」は2週前となる10月23日公開分で総合ソングチャート2位に初登場した後、81位→100位未満と推移。ストリーミングは50位初登場の後に2週続けて100位未満(300位圏内)となっていますが(ただし前週および当週の詳細な順位は不明)、一方でダウンロードは1→26→40位と後退しています。

アルバム『RAYS』のもうひとつの先行曲「EMPIRE」はデジタル未解禁ながら、高い動画再生に伴い8月28日公開分の総合ソングチャートで47位に初登場し、翌週も95位にランクイン。その後100位未満となりますが、アルバムリリースに伴いラジオ指標が初めて300位以内に達した当週、総合100位に返り咲いています。一方で動画再生指標は前週首位に返り咲きを果たしながら、当週は6位に後退しています。

 

「One」のダウンロード、「EMPIRE」の動画再生双方の後退からはコアファンによるデジタルからフィジカルへの所有/接触行動の移行が想起されます。フィジカルセールス初加算週での動画再生指標後退は動画がフィジカル同梱の映像盤に収録されている場合に見られがちであり、「One」のストリーミング指標動向も踏まえればSnow Manのライト層はそこまで多くはないともいえそうですが、しかし断言は尚早かもしれません。

LINE MUSICによる10月の10代トレンドランキングにてSnow Man「One」は4位にランクイン。またLINEプロフィールBGMランキングで1位、着うたランキングで2位に入っています。再生回数では100位圏外ですが「One」が若年層から人気であり、活用の多さも踏まえればデジタルニーズの高さ(やその可能性)、そして歌手としてのライト層人気の高さがみえてくるかもしれず、アルバムのデジタル需要もあったと捉えています。

(10月におけるLINE MUSIC10代トレンドランキングはこちらで100位まで確認できますが、総合ランキングトップ10のうちLINE MUSIC再生キャンペーン採用且つ他のサブスクサービスと順位が乖離する4曲(「I want tomorrow to come」「エビバディグッジョブ!」「原因は自分にある。【別解】」および「Fiesta」)は100位以内に入っていません。ここからも「One」のライト層人気を読み取ることができるものと考えます。)

 

『RAYS』リリースの翌週、Snow Manグラミー賞のホームページにて特集されています。このことも歌手側がデジタルに親しくなることを望む理由です。

Snow Man — arguably one of, if not the biggest group in Japan — officially "debuted" on Spotify in October 2024 with their single "One," which serves as the ending theme for the massively popular anime series "Blue Lock." Until then, the only way to listen to Snow Man’s music was through their official YouTube channel (which only uploads limited content) or via CD. This new presence on Spotify, however, doesn’t necessarily mean that Snow Man's larger discography will be available on the platform; "One" is the only track from their new album RAYS with a digital release.

The nine-piece group exemplifies Japan’s unique preference for physical releases over everything else — in spite of the industry’s efforts turning over a new leaf in the past few years. The lack of digital access hasn’t put a dent in Snow Man's massive success. All of Snow Man’s studio albums and singles have hit No. 1 on Japan’s Oricon Charts

(Snow Manは日本の男性アイドルグループだ。今、日本一成功しているグループのひとつであることは間違いないだろう。2024年10月にSpotifyでシングル『One』をリリースし公式に"(デジタル)デビュー"した。この曲は、非常に人気の高いアニメ『ブルーロック』のエンディングテーマである。それまでは、Snow Manの音楽に触れるには公式YouTubeチャンネル(限定コンテンツのみ)かCDしか方法がなかった。だが、彼らがSpotifyに新規参入したことでSnow Manの膨大な楽曲がデジタルプラットフォームで利用可能になるだろうという点で意義はある。現時点では、『One』は新アルバム『RAYS』からデジタルリリースされた唯一のナンバーだ。

ここ数年で業界は新たな一歩を踏み出そうとしているが、この9人グループの売上はフィジカル・リリースを好む日本独特の傾向を体現している。デジタルへのアクセスがないと言っても、Snow Manの大成功には何も影響は出ていない。Snow Manのアルバムとシングルはすべて、日本のオリコンチャートで1位を獲得している。)

※ 翻訳については、日本一売れている男性アイドル「Snow Man」を知るための楽曲5選 - お手紙を書いたら(11月7日付)を引用させていただきました。

(勝手ながら紹介させていただきました。問題があれば削除いたします。)

『デジタルへのアクセスがないと言っても、Snow Manの大成功には何も影響は出ていない』というのは間違いではないでしょう。ただ、コアファンによるフィジカル購入の徹底、そしてLINE MUSICで可視化されたといえるデジタルニーズを踏まえれば、デジタル解禁してもフィジカルセールスは駆逐されず、むしろライト層のダウンロード購入に伴いアルバムチャートの獲得ポイント(ユニット数)は増加するかもしれません。

またグラミー賞掲載のコラムを機にSnow Manの作品が気になった海外の音楽ファンにとって、デジタル未解禁は機会損失だと考えます。『日本独特の傾向』は日本のエンタテインメント業界の独自性を知る方には(違和感を抱きつつも)納得できるかもしれないとして、海外の方にはSnow Manのみならず日本のエンタメ業界全体への不信感増大にもつながりかねないのではと思うに、その点でも解禁の必要性を感じています。

 

 

Snow Manが日本のアイドルグループで最大級の人気を誇ることは、今回の『RAYS』の動向からも証明されたといえます。ならば過去のアーカイブも含め『RAYS』がデジタル化するか注視し、提言の形で働きかけていくことが重要だというのが自分の見方です。