イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

前週のトップ10初登場曲、当週のCHART insightから真のヒット曲に成るかを読む (2024年11月6日公開分)

3月まで記載していたこちらのエントリーを、内容を少しリニューアルした上で夏以降再開しています。先週の内容はこちら。

 

ビルボードジャパンソングチャートの動向を分析する者として、真の社会的ヒット曲とはロングヒットする、年間チャートで上位に進出する作品と位置付けています。週間単位で上位に入ることも素晴らしいですが、他方で所有指標が強い曲は加算2週目、また所有指標的な接触指標をなぞる曲(主にLINE MUSIC再生キャンペーン採用曲)はキャンペーン終了後に指標が急落し、総合でも大きくダウンすることが少なくありません。

この急落は毎週のようにみられます。ソングチャートのトップ10は5曲近くが毎週入れ替わり、ロングヒットする(その可能性を持ち合わせている)かそうでないかが極端に分かれる状況です。ロングヒット曲は主にライト層の支持が反映されるストリーミング指標が強い一方、急落する曲はコアファンとライト層との乖離が大きいのですが、これらを1週分のチャートから判断することは現状では難しいといえます。

ゆえにこのブログエントリーでは上記提案をビルボードジャパンに対して行っていますが、すぐに叶うことはないかもしれません。ならば、あくまで自分なりであると前置きしつつ、チャートの見方を提示したいと考えたのがエントリー復活の理由です。

 

ビルボードジャパンは9月下旬、CHART insightが完全な形でリニューアルを果たしています。3月のリニューアル時には円グラフを累計ポイントの構成比(ソングチャートの構成指標にはないTop User Generated Songsチャートも含む)に切り替えるとしていましたが、実際は当週(最新週)における構成比が表示され続けていました。それが累計ポイントに切り替った形です。ゆえに、当週(最新週)の指標構成は見えにくくなっています。

 

 

<2024年11月6日公開分 ビルボードジャパンソングチャート

 前週初めてトップ10入りした作品の、前週および当週におけるCHART insight>

 

※CHART insightの説明

 

[色について]

黄:フィジカルセールス

紫:ダウンロード

青:ストリーミング

黄緑:ラジオ

赤:動画再生

緑:カラオケ

濃いオレンジ:UGC (ユーザー生成コンテンツ)

 (Top User Generated Songsチャートにおける獲得ポイントであり、ソングチャートには含まれません。)

ピンク:ハイブリッド指標

 (BUZZ、CONTACTおよびSALESから選択可能です。)

 

[表示範囲について]

総合順位、および構成指標等において20位まで表示

 

[チャート構成比について]

累計における指標毎のポイント構成

 

・櫻坂46「I want tomorrow to come」

 10月30日公開分 1位→11月6日公開分 38位

・M!LK「エビバディグッジョブ!」

 10月30日公開分 4位→11月6日公開分 100位未満

・ROSÉ (ロゼ) & ブルーノ・マーズ「APT.」

 10月30日公開分 5位→11月6日公開分 3位

・OWV「Frontier」

 10月30日公開分 6位→11月6日公開分 100位未満

FANTASTICS from EXILE TRIBE「Got Boost?」

 10月30日公開分 7位→11月6日公開分 75位

King Gnu「ねっこ」

 10月30日公開分 8位→11月6日公開分 22位

(現時点で関連動画は未公開。)

Travis Japan「Crazy Crazy」

 10月30日公開分 10位→11月6日公開分 99位

 

当週におけるストリーミング等動向表はこちら。

 

 

当週も10位以内をキープしたのはROSÉ (ロゼ) & ブルーノ・マーズ「APT.」のみ。それもポイント前週比122.0%と大きく上昇しています。TikTok Weekly Top 20チャートで2位、Top User Generated Songsチャートで17位にランクインしたことも、ストリーミング再生回数前週比135.1%という高水準の背景となっています。いわば”活用”に因るヒットが、外国語曲でありながらカラオケ指標300位以内到達につながるか、注目です。

ビルボードジャパンではK-POPを除く洋楽を抽出したソングチャートが存在し、「APT.」はそのチャート(Hot Overseas)にて初登場から3連覇を達成しています。ROSÉはBLACKPINKの一員ですがこのチャートにランクインしていることを踏まえれば(ブルーノ・マーズが客演ではなく共演ゆえの措置だとは思うものの)、最早K-POPと洋楽とを分けて考える必要は薄れていると感じています。

 

King Gnu「ねっこ」は、主題歌に起用された『海に眠るダイヤモンド』(TBS)が前週の集計期間最終日に放送されなかった(野球および選挙特番に差し替えられた)ことが影響しているものと考えます。一方でストリーミングは安定する可能性が高まっており、今後の推移に注目です。

 

そのストリーミング指標は本来急落することがほぼないのですが、櫻坂46「I want tomorrow to come」が前週の5位、Travis Japan「Crazy Crazy」が48位、そしてM!LK「エビバディグッジョブ!」が56位から、いずれも100位未満(300位圏内)に急落しています。これら3曲はいずれもLINE MUSIC再生キャンペーンを実施しており(締切は順に10月28日、11月3日および10月31日)、企画終了の反動が表れた形といえます。

ストリーミングがロングヒットの主要なポイント獲得源であることは、上記に挙げた「Bling-Bang-Bang-Born」や「ライラック」のCHART insightから明らかです。歌手のファンというわけではないものの曲が気になるというライト層の支持が他指標より大きく反映されることがストリーミング安定の要因となっており、それを踏まえればこの指標での急落は社会的ヒット曲に成る可能性を遠ざけることを意味するといえます。

LINE MUSIC再生キャンペーン採用曲はストリーミング指標にコアファンの熱量を強く反映することを理解する必要があります。また企画終了までの間にライト層の支持を取り付けることが大切です。そして本来、キャンペーン採用に伴い指標の基となるStreaming Songsチャートで首位になった曲に限らず、採用したすべての曲に係数処理(減算処理)を適用することが最善と考え、ビルボードジャパンに今一度提案します。

 

 

この”CHART insightからヒットを読む”エントリーは、冒頭で述べた『ロングヒット曲は主にライト層の支持が反映されるストリーミング指標が強い一方、急落する曲はコアファンとライト層との乖離が大きいのですが、これらを1週分のチャートから判断することは現状では難しい』ことが立ち上げの背景にあります。言い換えれば、1週分のチャートだけを見ても社会的ヒットやその可能性が高い曲が判別しやすいのが理想です。

ビルボードジャパンに対しては近日中に、来る2025年度に向けてのチャートポリシー(集計方法)改善提案を記載する予定です。