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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

トップアーティストチャートにおける安定した動向から、ヨルシカの紅白出場可能性を読む

今年度のビルボードジャパントップアーティストチャート(ソングチャートとアルバムチャートの合算)で注目したいのがヨルシカの動向です。

上記は最新9月25日公開分のビルボードジャパントップアーティストチャートにおけるヨルシカのCHART insight。無料会員が確認可能な20位までの動向を示していますが、直近60週分において総合20位以内に入る機会が増え、ストリーミングが徐々に上昇していることが解ります。ヨルシカのこのチャートにおける最高位は7位(2021年2月3日公開分)ですが、最近の20位前後での安定は特筆すべきことだと感じています。

 

 

ヨルシカの好調を支えているのが、デジタルシングル「晴る」のヒット。1月5日にリリースされた同曲はテレビアニメ『葬送のフリーレン』(日本テレビ)第2クールのオープニングテーマに起用されています。

「晴る」はソングチャート最高8位を記録し、最新9月25日公開分でも83位に。100位圏外に一度として後退していないのは累計ポイントの過半数をストリーミングが占めていることが大きいといえます。「晴る」は年間チャートでの上位進出も期待できるほか、『葬送のフリーレン』のテレビアニメ第2期制作がアナウンスされたことに伴い再度注目が集まることも考えられます。

 

「晴る」が勢いをキープしたまま、ヨルシカは5月に「ルバート」、7月に「忘れてください」をリリース。後者は最高36位を記録し、現在まで10週連続でランクインしています。加えてこの1ヶ月はクリープハイプ「憂、燦々」のカバー版も40位前後を走行しており、これら新曲等の相次ぐリリースが「晴る」にもつながり、トップアーティストチャートでの安定をもたらしているといえます。

(ヨルシカ版「憂、燦々」は、クリープハイプのトリビュートアルバム『もしも生まれ変わったならそっとこんな声になって』収録曲。総合ソングチャートおよび構成指標は20位以内に達していませんが(ゆえにビルボードジャパンの無料会員は同曲のCHART insightを確認できません)、ストリーミング指標は26→21→25→35位と比較的安定しています。)

 

さらに、代表曲の「ただ君に晴れ」(2018)や「だから僕は音楽を辞めた」(2019)もストリーミングを主体にロングヒットしていることが大きいといえるでしょう。特に前者は当週総合67位に入り、100位以内在籍が145週となっています。

一方では主要サブスクサービスにおいて、「ただ君に晴れ」がSpotifyでばかり強い状況なのですが、しかしながらこれら代表曲の強さもヨルシカのトップアーティストチャートでの上位安定につながっています。

(なおSpotifyでは、ヨルシカも所属するユニバーサルミュージックが強さを発揮しているということを先日つぶやいています。詳しくはこちらのポストからはじまるスレッドをご参照ください。)

 

 

ビルボードジャパントップアーティストチャートにおけるヨルシカの最高位は2021年2月3日公開分における7位ですが、この3週後には同チャートのトップ20から外れています。他方、今年度は「晴る」のソングチャート2週目ランクインとなる1月17日公開分から最新週までにおいて、ヨルシカのトップアーティストチャート20位以内登場は37週中26週となり、前週9月18日公開分では過去2番目に高い13位に達しています。

上記は最新9月25日公開分におけるビルボードジャパントップアーティストチャート上位10組となりますが、2位のBUDDiiSおよび5位の西野カナさんはアルバムチャート初登場に伴い急浮上しています。つまりは(短期的でも)アルバムの動向が大きく関わるというこのチャートにあって、ヨルシカはアルバムを4年近くリリースしていない中で徐々に順位を上げているのです。この推移は実に大きな意味があると感じています。

 

 

さて、ヨルシカはNHK総合で今週開始されるテレビアニメのエンディングテーマを手掛けます。

今回紹介したビルボードジャパンのトップアーティストチャートは『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)での選出基準となっていることは間違いありません((追記あり) 『第74回NHK紅白歌合戦』出場歌手の顔ぶれから考える…紅白でのふたつの選出基準とは(2023年11月13日付)参照)。「晴る」のヒット、そして紅白ではNHKタイアップ曲が披露されやすい傾向から、今年ヨルシカが紅白初出場を果たす可能性も出てきたと捉えています。

ヨルシカはテレビ出演を行っていないとうかがっていますが、たとえば昨年出場したAdoさんのような形で顔出しせずパフォーマンスすることはできるかもしれません。出場の可能性は高くないかもしれませんが、紅白側は打診するのではないかというのが自分の考えです。