イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ラジオでの洋楽(K-POPを除く)OA率が上昇したこと、そして日本での洋楽浸透に必要なこと

最新9月25日公開分のビルボードジャパンソングチャート、ラジオ指標では20位以内に洋楽(K-POPを除く)が8曲ランクインしています。今年度においてはクリスマスイブまでを集計期間とする昨年12月27日公開分と並び最多となりましたが、今回の顔ぶれは実に興味深いのです。

(※洋楽において”K-POPを除く”と定義しているのは、洋楽が置かれている状況を伝えるエントリーにてこのことを前提としているためです。)

 

ビルボードジャパンソングチャートのラジオ指標は、全国31局におけるOAチャート(プランテック調べ)を基に、各局の聴取可能人口等を加味して算出。局のパワープレイやレコード会社側の施策に伴い上位進出する曲もありますがロングヒットは難しく、また他指標に比べて洋楽(K-POPを除く)が上位に進出しやすいのが特徴です。

レディー・ガガブルーノ・マーズ「Die With A Smile」は5週連続でトップ20入り(当週10位)。米ビルボードによる2種のグローバルチャートで共に4連覇中の同曲は、オーセンティックなバラードであることや大物同士の共演がラジオ向けといえるかもしれません。

ラジオはベテランも好む傾向があります。スティングによる3年ぶりの新曲「I Wrote Your Name (Upon My Heart)」がラジオ指標16位にランクインしたのはその象徴でしょう。一方で、若手ながら世界で活躍するザ・ウィークエンド「Dancing In The Flames」は当週初の1週間フル加算に伴い洋楽(K-POPを除く)では最高位となるラジオ指標2位を獲得しています。

 

アジア関連の歌手も活躍しています。中国系アメリカ人のジンジャー・ルートは日本語も話すことができ、ミュージックビデオ等でも日本からの影響を明確にしています。シティポップアプローチがラジオフレンドリーであることもあってか、9月13日にリリースしたアルバム『Shinbangumi』(新番組)からは「No Problems」がラジオ指標4位、「Only You」が同13位に入っています。

また両親がベトナム人で、米テキサス州出身のケシによるR&B曲「Say」がラジオ指標9位に。同曲は先述したザ・ウィークエンドを想起させますが、こちらも今月リリースされたアルバム『Requiem』収録曲となります。

そして、マイク・シノダが在籍するリンキン・パークによる新曲「The Emptiness Machine」がラジオ指標17位にランクイン(2週連続で登場)。新たなボーカルにエミリー・アームストロングを迎えてリリースされた同曲は、米ビルボードによる2種のグローバルチャートで共にトップ3入りを果たしています。

 

訃報に対する反応がストリーミング以上にラジオで大きくなるのが日本の特徴。ソングライターとしても活躍し、9月17日に亡くなったJ.D.サウザーによる「You're Only Lonely」(1979 米最高7位)は、最新のビルボードジャパンソングチャートにおけるラジオ指標で15位に登場しています。

ラジオ指標の基となるプランテックのOAチャートでは「You're Only Lonely」が31位となっていますが、東名阪といった聴取可能人口の多いラジオ局でのOAが多かっただろうことが想起されます。なおプランテックのOAチャートはミュージックマンのホームページでも記事が公開されています。

 

 

最新9月25日公開分のビルボードジャパンソングチャート、ラジオ指標では洋楽(K-POPを除く)が今年度最多となる8曲ランクインしていますが、このブログでは秋改編を経て洋楽OA率が減少する可能性(懸念)を表明したばかりでした。

また、ビルボードジャパンとルミネイト社(LUMINATE)が今月開催したイベントにて、洋楽(K-POPを除く)に関する状況が発信されています。ここからも洋楽の置かれた状況がみえてきます。

最初に登壇した、LUMINATEのエグゼクティブ・ヴァイス・プレジデント スコット・ライアン氏は最新の音楽ストリーミングにおけるトレンドを紹介。(中略) 国によって異なるリスナーの視聴傾向にも触れ、好みのジャンル(日本では他のアジア諸国と比べて「ジャズ」「ロック」「サウンドトラック」の再生数が平均より上)、や新たな音楽と出会う最大のきっかけ(インドネシアはストリーミング、フィリピンはSNS、日本はテレビ)、 “国外のコンテンツ”に触れる割合(フィリピン:95%、シンガポール74%、日本:57%)における違いが説明された。また、日本のZ世代音楽リスナーの特徴も。44%がストリーミング経由で音楽と出会っており、日本人の音楽リスナー全体と比較して、SNSで友人が投稿した音楽を聴く人は約1.4倍多く、海外の楽曲を聴く割合は27%少ないことが明かされた。

 

あくまで私見と前置きしますが、洋楽(K-POPを除く)の置かれている状況には悲観せざるを得ません。

この打破のためには、ラジオというコンテンツがその独自性を保ちながら、より影響力を高めなければならないはずです。当週ラジオ指標20位以内に入った8曲(世界的なヒット曲、ベテランや若手の新曲、アジアにルーツを持つ歌手の作品および訃報に伴う代表曲)のバランスはラジオの良さを示しているといえるため、その訴求はもっと行うべきと考えます。また、フィジカルを主体とするリリースタイミングの変革も必須です。

そしてリリース関連でいえば、日本の音楽市場がデジタル化を徹底し、海外でのヒット規模を拡大することで海外市場と地続きであることをユーザー(リスナー)に意識させ、彼らが言語の違いに関係なくフレキシブルに聴く環境や習慣を作ることもまた必要です。