3月まで記載していたこちらのエントリーを、内容を少しリニューアルした上で夏以降再開しています。先週の内容はこちら。
ビルボードジャパンソングチャートの動向を分析する者として、真の社会的ヒット曲とはロングヒットする、年間チャートで上位に進出する作品と位置付けています。週間単位で上位に入ることも素晴らしいですが、他方で所有指標が強い曲は加算2週目、また所有指標的な接触指標をなぞる曲(主にLINE MUSIC再生キャンペーン採用曲)はキャンペーン終了後に指標が急落し、総合でも大きくダウンすることが少なくありません。
急落傾向はここ最近、特に目立っています。ソングチャートのトップ10は5曲近くが毎週入れ替わり、ロングヒットする(その可能性を持ち合わせている)かそうでないかが極端に分かれる状況です。ロングヒット曲は主にライト層の支持が反映されるストリーミング指標が強い一方、急落する曲はコアファンとライト層との乖離が大きいのですが、これらを1週分のチャートから判断することは現状では難しいといえます。
ゆえにこのブログエントリーでは上記提案をビルボードジャパンに対して行っていますが、すぐに叶うことはないかもしれません。ならば、あくまで自分なりであると前置きしつつ、チャートの見方を提示したいと考えたのがエントリー復活の理由です。
<2024年9月25日公開分 ビルボードジャパンソングチャート
前週初めてトップ10入りした作品の、前週および当週におけるCHART insight>
※CHART insightの説明
[色について]
黄:フィジカルセールス
紫:ダウンロード
青:ストリーミング
黄緑:ラジオ
赤:動画再生
緑:カラオケ
濃いオレンジ:UGC (ユーザー生成コンテンツ)
(Top User Generated Songsチャートにおける獲得ポイントであり、ソングチャートには含まれません。)
ピンク:ハイブリッド指標
(BUZZ、CONTACTおよびSALESから選択可能です。)
[表示範囲について]
総合順位、および構成指標等において20位まで表示
[チャート構成比について]
累計における指標毎のポイント構成
・WEST.「まぁいっか!」
9月18日公開分 2位→9月25日公開分 100位未満
・OCHA NORMA「ちはやぶる」
9月18日公開分 4位→9月25日公開分 100位未満
・HKT48「僕はやっと君を心配できる」
9月18日公開分 5位→9月25日公開分 100位未満
当週におけるストリーミング等動向表はこちら。
先週水曜午後から木曜早朝の間に、CHART insightが完全な形でリニューアルを果たしています。3月のリニューアル時には円グラフを累計ポイントの構成比(ソングチャートの構成指標にはないTop User Generated Songsチャートも含む)に切り替えるとしていましたが、実際は当週(最新週)における構成比が表示され続けていました。それが先週、累計ポイントに切り替った形です。
ですので、今回紹介したCHART insightはリニューアル後の累計ポイント構成比が表示されたものとなり、当週(最新週)の指標構成がわかりにくくなっています。実際はHKT48「僕はやっと君を心配できる」が当週もフィジカルセールス指標のみ獲得、他2曲は他指標も獲得しながら、共にロングヒットに欠かせない接触指標が強くなく、総合100位以内に残れませんでした。後者の2曲についてはサブスク未解禁も影響しています。
またフィジカルセールス指標獲得に伴い2週前に総合2位に入り、翌週もフィジカルセールスが10万枚を上回ったことで総合6位にランクインしたRIIZE「Lucky」は、当週総合100位以内から脱落しています。RIIZE「Lucky」はラジオ指標も獲得しながらデジタルが強くなく、フィジカルセールスの急落(当週の売上は8,795枚)を他指標でカバーできませんでした。
さて、先月掲載したこちらのエントリーでは、ロングヒットに接触指標群が欠かせないこと、その上でフィジカルリリースにより週間単位で上位進出を図ることができること等を紹介しています。
今回紹介した作品ではRIIZE「Lucky」以外は第1段階、「Lucky」は第2段階に近づいたかもしれませんが、いずれも第3段階に達することはできませんでした。前週までラジオが強く4週連続で総合40位以内に入りながらも、そのラジオが途絶え当週100位を割り込んだTREASURE「KING KONG」もまた、第2段階止まりといえるでしょう。ラジオの強さについては、歌手側(レコード会社側)の施策に因る可能性が高いと考えられます。
(上記ミュージックビデオは韓国語バージョン。)
なお、総合ソングチャートで順位を大きく落とした曲においては、CHART insightにおける円グラフ(累計ポイント構成比)の比率が当週(最新週)と前週とで大きく変わらないことが解ります。これもヒットを知る上でのひとつの参考になるかもしれません。
最後に。次週はヒットの第2段階に入っている曲が複数登場するものと思われます。これは次週10月2日公開分ビルボードジャパンソングチャート(集計期間:9月23~29日)におけるフィジカルセールス前半3日分速報(先ヨミ)記事から見て取れます。
続いてAKB48『恋 詰んじゃった』は29,678枚を売り上げて現在2位に。TOMORROW X TOGETHERの日本4thシングル『誓い (CHIKAI)』は29,028枚で3位を走行中だ。
【先ヨミ】Hey! Say! JUMP『UMP』19.8万枚で現在シングル1位走行中 https://t.co/Segi1pt99H
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2024年9月26日
AKB48「恋 詰んじゃった」、TOMORROW X TOGETHER「ひとつの誓い (We'll Never Change)」(『誓い (CHIKAI)』収録曲)共に100位以内に通算6週在籍し、前者は当週29位に返り咲いていますが、いずれもフィジカルセールスと他指標が大きく乖離。ここからはフィジカルセールスに特化した施策がコアファンの熱量を高める一方でライト層との乖離が生じていると考えます。ロングヒットにまず必要なのはライト層の支持です。
ロングヒット曲でもライト層によりリーチできているかはCHART insightから判断可能ですが、フィジカルセールス指標ばかりが強い曲は複数週ランクインしても乱高下を繰り返す傾向にあります。それでもこの指標が短期的な上位進出を生みやすい状況では、ソングチャートが真の社会的ヒットの鑑と断言することを躊躇させかねません。この指標のウエイト等見直しについてビルボードジャパンが定期的に議論することを望みます。