”アナクロ系YouTubeチャンネル”のフィルムエストTVから発信された動画が人気を博しています。動画の始まりから様々な仕掛けが用意され、2時間ドラマ(特に”火サス”こと『火曜サスペンス劇場』)を彷彿させるのがたまりません。
【サスペンス100万回再生達成✨】
— フィルムエストTV【公式】 (@FilmestTV) 2024年9月15日
『道後ストリップ嬢連続殺人』が、なんと…!公開から2日経たずに100万回再生を突破しました😭🔥
たくさんの方にご覧いただき、スタッフ・出演者一同、心から感謝申し上げます!
本当にありがとうございます🙇🏻♀️💖https://t.co/Sf433CLB8q pic.twitter.com/ah3JfTPLd5
『外湯巡りミステリー・道後ストリップ嬢連続殺人』と題したこの動画は上記ポスト発信後も伸び続け、このブログを公開した時点で127万回を突破。フィルムエストTVによるYouTubeチャンネル発の動画全体において、既に歴代9位に達しています。
往年の2時間サスペンスを最大限にリスペクトし、パロディとドラマを両立させている動画がその質の高さから人気に至るのは自然なことでしょう。一方、1時間半超えの動画が人気を集めたことでエンタメ業界に新しい流行が生まれる予感がします。ならば、オリジナルである火サスの”完全体”でのアーカイブ化が必須だと感じた次第です。
(上記は火曜サスペンス劇場『十字路』(2002)の公式動画。視聴には購入もしくはレンタルが必要です。)
実はYouTubeにて、火曜サスペンス劇場の各作品を購入もしくはレンタル可能であり、同作品はAmazon Primeにも存在します。しかしAmazon Prime版はオープニングがカット、ラストに流れる主題歌は無音処理されており、尺が同じYouTube版も同様と思われます。フィルムエストTVによる今回の動画は、ドラマ本編もさることながらオープニングや主題歌のオマージュもまた人気の一因であるはずです。
火サスではオープニングでのザッピング的内容紹介、エンディング曲の存在に加えてCM前のアイキャッチ(ジャンクション)も雰囲気づくりに重要な役割を果たしていると考えるに、オリジナル版の配信を物足りなく感じる方は多いはずです。権利処理は難しいことを承知で、しかしこの醍醐味は省いてはならないと考えます。
フィルムエストTVというYouTubeチャンネルにて公開の友近サスペンス劇場「道後ストリップ嬢連続殺人」主題歌を作曲させて頂きました。9/8の今治映画祭で上映もされ、自分の作った楽曲に、あの友近さんが魂を吹き込むという貴重な作品に携われて、歓天喜地でございます🔥しっかりエンドロールに名前が🥹 https://t.co/c2Qnga6exF
— 松田ナオト(SEQUOiA/BMSJ) (@danaomatsuda) 2024年9月13日
松田ナオトさんが作曲し友近さんが歌った「ジャスト・アローン」は、火サス主題歌の中でも特に有名な竹内まりや「シングル・アゲイン」(1989)を思わせます(タイトルの寄せ方も秀逸です)。「シングル・アゲイン」はサブスクで解禁されている一方でYouTubeには公式動画がなく、動画を観た方がその流れで「シングル・アゲイン」にたどり着きにくいことも機会損失に感じてしまうのです。
音楽業界のデジタルアーカイブ化は未だ十分ではありまませんが、昨日段階的にサブスク解禁を開始したNEWSはミュージックビデオのアーカイブ化をアナウンス(ポストはこちら)、また嵐も同様の対応を開始すると宣言しており(ポストはこちら)、サブスクやYouTubeでのデジタル環境は着実に整備されている印象です。
デジタルアーカイブの充実は過去作が再注目された際にその勢いを高め、音楽チャートでも(再)浮上する契機となります。海外では映像作品を機にイン・シンクやケイト・ブッシュ等が注目されていますが、2020年にはフリートウッド・マック「Dreams」がTikTok経由で人気となり、メンバーがその動画をいわばカバーしたことでさらに勢いを高めることに成功しました。
今回のフィルムエストTVによる動画からその源泉を探るという動きが出ることは間違いないでしょう。その際、オリジナル版のアーカイブが不十分だったり、もしくはアーカイブそのものが存在しないということは流行の芽を摘みかねないという点で至極勿体無いと思ってしまうのです。
Spotifyでは今年3月27日に火サスオープニング曲が解禁されています。このようなデジタル環境の充実、そして権利処理の簡素化を音楽やメディアといったエンタテインメント業界全体が行っていくことを願うばかりです。
フィルムエストTVによる動画制作の経緯については上記noteで語られています。その苦労を踏まえればさすがに続編の制作を願うのはわがままなことかもしれませんが、今回の動画がエンタテインメント業界の新たな鉱脈と成ることは間違いないでしょう。友近さんとモグライダー芝さんとのコンビでシリーズ化してほしいというのが自分の思いです。