最新9月4日公開分のビルボードジャパンアルバムチャートは、BE:FIRST『2:BE』が首位に初登場を果たしています。
【ビルボード】BE:FIRST『2:BE』が前作に引き続き総合アルバム首位 https://t.co/iI780R1any
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2024年9月4日
アルバムチャートはフィジカルセールスおよびダウンロードという所有2指標で構成されますが、そのフィジカルセールスでは109,162枚を売り上げたBE:FIRST『2:BE』にIVE『ALIVE』(117,648枚)が勝っています。一方ダウンロード数は『2:BE』10,756DLに対し『ALIVE』240DLと大差がつき、総合で『2:BE』が逆転した形です。なお1枚と1DLとでは後者のウエイトが大きくなるようチャートポリシー(集計方法)が設計されています。
さて、BE:FIRSTの初週フィジカルセールスは、前作『BE:1』より下がっています。
【ビルボード】BE:FIRST『BE:1』が総合アルバム首位獲得 Ado/竹内まりやが続く https://t.co/6CjQYp5Jup pic.twitter.com/YbtVfyPEhK
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2022年9月7日
2022年9月7日公開分のビルボードジャパンアルバムチャートにおいて、『BE:1』はフィジカルセールス178,175枚(同指標1位)、ダウンロード8,489DL(同指標2位)となり、総合で首位に初登場。『2:BE』はダウンロードが伸びながら、フィジカルセールスの減少が小さくないとはいえます。
上記はnoteプロデューサーでブロガーの徳力基彦さんがYahoo! JAPANに寄稿したコラム(の全文転載)ですが、その徳力さんが開催する雑談配信(ミライカフェ)に一昨日参加した際、BE:FIRSTのファンと思しき方から"『2:BE』の売上が下がったことをどう捉えるか"との質問をいただきました。フィジカルセールスについては、コラムで紹介されたSKY-HIさんの考え方がコアファンの間に浸透したことが主要因と捉えています。
実際、フィジカルシングルでも「Mainstream」が169,197枚を初週に売り上げたのに対し、「Masterplan」は115,963枚となっています(前者は2023年9月20日公開分、後者は2024年5月1日公開分)。アルバムにおけるフィジカルセールス減少についても、この動向からある程度読めたものと考えます。
フィジカルセールスが(売上金額面では重要ながら)曲の社会的ヒットとはほぼ連動しないことは、ビルボードジャパンによる年間ソングチャートをみれば解るでしょう。フィジカルセールスが特典やリリースする種類によっても変わることを踏まえれば、数万枚の増減は起こり得るというのが私見。ただその見方を持ち合わせていない場合、分かりやすい数字だけを見て"人気が下がった"とみなす人が残念ながらいらっしゃいます。
最近も、あるアイドルグループのフィジカルセールスについて、新曲の売上判明前からゴシップメディアが腐す記事を出していましたが、その歌手は最新作をデジタル解禁しておりフィジカルセールスだけでの比較自体無理があります(またフィジカルセールス自体も前作から伸びています)。そもそもフィジカルセールスのみを判断基準とするやり方が旧態依然である等、コアファンはおかしな論法を冷静に批判することが必要です。
一方でBE:FIRSTについては、別の角度から気になる点があります。
ビルボードジャパンにはソングチャートとアルバムチャートを合算したトップアーティストチャートが存在します。昨日付エントリーでは最新9月4日公開分におけるこのチャートでトップ10入りした3組を紹介しましたが、BE:FIRSTは20→3位に上昇しています。
CHART insightは3月のリニューアルを機に円グラフが最新週ではなく累計のポイント構成比に変更したとアナウンスしていますが、現在でも最新週のそれを指すものと捉えています。この見方が正しいならば、BE:FIRSTは『2:BE』のセールスが最新のトップアーティストチャートにおけるトップ3入りに大きく貢献したことが解ります。
一方で気になるのは青で示されたストリーミング指標。BE:FIRSTは直近3週においてこの18→20→18位と推移しているのですが、3週前(18位獲得の前週)には加点対象となる300位以内に達していないことが解ります。仮に3週前が21~300位以内ならば、2週前のグラフは前週から上昇したことが示されていたはずです。
(ビルボードジャパンのCHART insightは3月のリニューアルを経て、無料会員には総合および各指標が20位までのみ可視化される形と成りました。またそのリニューアルに伴い100位未満(300位圏内)の各指標はグラフに表示されても21~100位までは未表示という設計になっており、不親切ではというのが厳しくも私見です。『NHK紅白歌合戦』の選考基準にも成るトップアーティストチャートだけでも100位までの公開を希望します。)
ビルボードジャパンがBE:FIRSTとATEEZとのコラボシングル「Hush-Hush」(7月10日公開分ソングチャート首位)をそれぞれの歌手ではなく"BE:FIRST × ATEEZ"として加算していることも影響していますが(米ビルボードとは異なる加算方法であり、この点も改善が必要です)、その「Hush-Hush」未加算を除いてもBE:FIRSTのストリーミングが一時的にでも300位を割り込んでいると思しき自体に対し、考える必要があるでしょう。
真の社会的ヒット曲とはライト層の支持を受け、その支持が特に大きく反映されるストリーミングが強い作品といえます。そしてストリーミングの強さは、上位に単発的に進出するのではなく安定し、そしてそのヒット曲が過去曲も牽引して歌手全体の動向を底上げしていくことを指します。ダンスボーカルグループにおいては「I wonder」のヒットが「CITRUS」や「スターマイン」等を押し上げたDa-iCEがまさにその好例です。
そしてストリーミング指標はロングヒット曲において、ソングチャートにおける獲得ポイントの過半数を占めるようになります。ストリーミングがヒットのすべてではないとして、しかしライト層の動向が最も反映される指標ならばやはりこの拡充が重要であり、BE:FIRSTにおける課題ではないかと捉えています(尤も各指標300位までしか加算されない状況は、ストリーミングの規模が拡大する現在にあっては問題と考えます)。
BE:FIRSTについては『2:BE』リード曲の「Blissful」が首位初登場の翌週もトップ10内をキープしたことを紹介した際、『ライト層への訴求において、ポップやキャッチーさを持ち合わせた曲を用意することが、楽曲単位でヒットを輩出し、歌手のステップアップを果たすという意味でも重要かもしれません』と記しました。カラオケ指標の強くなさも踏まえれば尚の事、この点は今後の運営において意識していいことかもしれません。