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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

米津玄師、藤井風、Mrs. GREEN APPLE…トップアーティストチャートトップ10入りの背景を探る

ビルボードジャパンにはソングチャートとアルバムチャートを合算したトップアーティストチャート(Artist 100)が存在します。8月26日~9月1日を集計期間とする最新9月4日公開分のトップアーティストチャートでトップ10入りした歌手の中から、注目の動向を紹介します。

 

 

・米津玄師 (最新9月4日公開分ビルボードジャパントップアーティストチャート 2位)

米津玄師さんは前週『LOST CORNER』がアルバムチャートを制し、同チャートの構成2指標であるフィジカルセールスおよびダウンロードが当週も安定。加えてストリーミングが2位をキープしています。

ストリーミング好調に大きな影響を与えたのが「がらくた」のヒット。アルバムリリースの前日に先行解禁されたこの曲は大ヒット中の映画『ラストマイル』(8月23日公開)主題歌であり、ビルボードジャパンソングチャートでは10→7位に上昇。ストリーミング指標の基となる再生回数は前週の1.57倍と大きく伸びています。尤も当週が初の1週間フル加算ということもあるのですが、それでもこの伸びは驚異的です。

当週は台風の影響でストリーミングが全体的にダウンする傾向にあり(この点については後日エントリーを用意します)、ゆえに尚の事「がらくた」の勢いを感じずにはいられません。加えて『ラストマイル』と世界線を共有するドラマ『アンナチュラル』の主題歌「Lemon」も89→78→56位と上昇を続けています(なおドラマ『MIU404』主題歌の「感電」は最新チャート100位以内には達していません)。

『ラストマイル』は興行収入が50億円を超える可能性も指摘されており、その人気が同作と"シェアード・ユニバース"を成すドラマ2作品、そして3つすべての主題歌を手掛ける米津玄師さんの人気につながっていることが、トップアーティストチャートからみえてきます。

 

 

・藤井風 (最新9月4日公開分ビルボードジャパントップアーティストチャート 10位)

藤井風さんがトップアーティストにて4月17日公開分(10位)以来となるトップ10返り咲きを果たしています。これは間違いなく、8月24~25日に開催された【Fujii Kaze Stadium Live “Feelin' Good”】、そしてその初日をYouTubeにて全編ライブ配信したことが影響しています。

YouTubeでの生配信、それも2日間のうち初日の公演を対象とすることは、2日目に訪れる方にとってはネタバレと成りかねないものですが、それを懸念だとして後ろ向きに捉えるコアファンの声は(少なくとも自分の周囲では)ありませんでした。そしてトップアーティストチャートにおけるストリーミング13→7位、動画再生21→11位という接触指標群の伸びから、ライブの生配信がライト層も惹き付けたと捉えています。

さらには、上記ポストで指摘した楽曲単位のみならず、これまでリリースされた2枚のオリジナルアルバムも上昇。『HELP EVER HURT NEVER』は80→73→40位、『LOVE ALL SERVE ALL』は67→49→30位とこの3週で右肩上がりを続けています。興味深いのはこの2作品共に、フィジカルセールスよりもダウンロード指標の順位が高いという状況です。

ダウンロードはテレビパフォーマンス直後に上昇する傾向が強く、今回においてはYouTube視聴→ダウンロード購入という流れが生まれているものと思われます。尤も売上数は全体的にダウンロードよりフィジカルセールスのほうが大きく、フィジカル購入に至った方も多いことがみえてきます。アルバムチャートの動向からは、ライト層からコアファンへの昇華も感じられるのです。

ライブのアーカイブ期間は当初8月26日月曜16時までとなっていましたが、それが延期されています。このことも各種チャートの上昇につながったと考えるのは自然なことです。

 

 

さて、最新9月4日公開分のビルボードジャパントップアーティストチャートはMrs. GREENAPPLEが首位返り咲きを果たしています。

トップアーティストチャートで強さを発揮する最大の理由はストリーミングの強さであり、昨年12月27日公開分以降この指標を制し続けています。そして最も安定しないフィジカルセールス指標においても時折20位以内にランクインしているのが特徴です。『ANTENNA』がアルバムチャート登場61週目にして40位を下回ったことがないという状況は、ライト層からコアファンに昇華する方が増え続けていることを示しています。

接触指標での上位進出が所有指標の上昇、それもフィジカルセールスにつながることを考えれば、デジタルを充実させることが如何に重要かが解るのではないでしょうか。