イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

前週のトップ10初登場曲、当週のCHART insightから真のヒット曲に成るかを読む (2024年9月4日公開分)

3月まで記載していたこちらのエントリーを、内容を少しリニューアルした上で夏以降再開しています。先週の内容はこちら。

 

ビルボードジャパンソングチャートの動向を分析する者として、真の社会的ヒット曲とはロングヒットする、年間チャートで上位に進出する作品と位置付けています。週間単位で上位に入ることも素晴らしいですが、他方で所有指標が強い曲は加算2週目、また所有指標的な接触指標をなぞる曲(主にLINE MUSIC再生キャンペーン採用曲)はキャンペーン終了後に指標が急落し、総合でも大きくダウンすることが少なくありません。

急落傾向はここ最近、特に目立っています。ソングチャートのトップ10は5曲近くが毎週入れ替わり、ロングヒットする(その可能性を持ち合わせている)かそうでないかが極端に分かれる状況です。ロングヒット曲は主にライト層の支持が反映されるストリーミング指標が強い一方、急落する曲はコアファンとライト層との乖離が大きいのですが、これらを1週分のチャートから判断することは現状では難しいといえます。

ゆえにこのブログエントリーでは上記提案をビルボードジャパンに対して行っていますが、すぐに叶うことはないかもしれません。ならば、あくまで自分なりであると前置きしつつ、チャートの見方を提示したいと考えたのがエントリー復活の理由です。

 

 

<2024年9月4日公開分 ビルボードジャパンソングチャート

 前週初めてトップ10入りした作品の、前週および当週におけるCHART insight>

 

※CHART insightの説明

 

[色について]

黄:フィジカルセールス

紫:ダウンロード

青:ストリーミング

黄緑:ラジオ

赤:動画再生

緑:カラオケ

濃いオレンジ:UGC (ユーザー生成コンテンツ)

 (Top User Generated Songsチャートにおける獲得ポイントであり、ソングチャートには含まれません。)

ピンク:ハイブリッド指標

 (BUZZ、CONTACTおよびSALESから選択可能です。)

 

[表示範囲について]

総合順位、および構成指標等において20位まで表示

 

[チャート構成比について]

最新週における指標毎のポイント構成

 (CHART insight改定以降は累計ポイントにおける構成比に変更した、とビルボードジャパンは説明しています。)

 

・Number_i「INZM」

 8月28日公開分 1位→9月4日公開分 13位

乃木坂46「チートデイ」

 8月28日公開分 2位→9月4日公開分 47位

・TREASURE「KING KONG」

 8月28日公開分 3位→9月4日公開分 28位

(上記は韓国語詞のオリジナルバージョン。)

・米津玄師「がらくた」

 8月28日公開分 10位→9月4日公開分 7位

 

当週におけるストリーミング等動向表はこちら。

 

前週初めてトップ3に入った曲のうち、2位の乃木坂46「チートデイ」は当週もストリーミング指標未加算、前週3位のTREASURE「KING KONG」はLINE MUSICが極度に強い状況であり、前週首位のNumber_i「INZM」が最も安定しているといえます。それでも「INZM」はトップ10内をキープできませんでした。

Number_iは「GOAT」(1月10日公開分 1位→翌週 3位)および「BON」(6月5日公開分 2位→翌週8位)は初登場の翌週もトップ10入りしていたゆえ、「INZM」は勢いが弱まったと映るかもしれません。しかし登場2週目におけるポイントは「GOAT」が7,746ポイント(前週比48.0%)、「BON」が4,748ポイント(同33.9%)に対し「INZM」は4,400ポイント(同30.8%)であり、「INZM」は「BON」に近い推移といえるでしょう。

(上記はNumber_i「BON」の登場3週目、6月19日公開分におけるCHART insight。)

「INZM」はポイント数やその前週比の面でも、「BON」が比較対象になると考えます(「BON」は初登場以降2→8→19位、ポイントは14,007→4,748→3,796ポイントと推移)。ロングヒットに至るには好調な動画再生に加えて、社会的ヒット曲において週間獲得ポイントの過半数を占めるストリーミングが重要となることを踏まえれば、3週目以降の安定が課題ではと考えます。

「INZM」はApple MusicおよびSpotifyの週間チャート(前者は月曜、後者は金曜集計開始)で好調をキープしていますが、「BON」においてはApple Musicが11→16→24位、Spotifyが31位(集計期間4日分が加算対象)→7→9位と推移。一方で「INZM」においては下記の状況がSpotifyで発生しているため、次週ダウンする可能性も否定できません。

Number_iは歌手側やファンダムによるStationhead活用が長けていますが、「INZM」リリース日から9月1日までの2週間を徹底していたことの反動が、9月2日付(すなわち次週9月11日公開分ビルボードジャパンソングチャートにおける集計期間初日)のダウンに表れています(歌手側のポストからStationhead企画が"Day 14"で終了したことが解ります)。Spotifyで特に強いNumber_iですが、9月2日付以降のランクインは3曲のままです。

この点から、ライト層の人気がより大きく反映されるはずのストリーミング指標において、Number_iは他の歌手以上にコアファンによる聴取率が高いと想起することが可能です。ゆえにライト層を如何に拡げていくかを思案し実行することが、歌手側そしてコアファンの課題ではないでしょうか。

 

 

最後に。当週のビルボードジャパンのStreaming Songsチャート、また同期間におけるSpotifyの動向から、全体のストリーミング再生回数は前週より下がったと判断可能です(この背景については後日お伝えします)。仮にストリーミング再生回数が前週並をキープしていたならばライト層に支持される曲がより大きく上昇することで、Number_i「INZM」の総合順位はもう少し下がったのではと考えます。