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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

LE SSERAFIM「CRAZY」およびAdo「唱」、リミックス集リリースの背景を考える

先週金曜にミニアルバム『CRAZY』をリリースしたLE SSERAFIMが、リード曲であるタイトルトラックのリミックス週を今週月曜に配信しています。

"Party Remix 1"と名乗っているゆえ続編のリリースも予想される今作は、韓国語のオリジナルバージョン、英語詞版、ダンサーのダショーン・ウェスレイを迎えた"Vogue Remix"等を収録しています。

このリミックスの用意から、チャートへの高い意識を感じます。

 

ビルボードによる米およびグローバルのソングチャートは様々なバージョンが合算対象となるため、ストリーミングや単曲ダウンロードで接触/所有されることで「CRAZY」が双方のソングチャートでより上位に初登場する可能性が高まります。双方のチャートは金曜が集計期間初日のため、集計期間4日目のリミックス集登場は初週後半の勢いを高めるという意味でも投入されたと捉えていいでしょう。

リミックス施策はK-POPにて、直近ではBTSのJIMINによるソロ曲「Who」やStray Kids「Chk Chk Boom」でも用いられ、前者はふたつのグローバルチャート(Global 200、およびGlobal 200から米の分を除いたGlobal Excl. U.S.)で初登場から2連覇を達成しています。

一方で私見と前置きするならば、リミックスを2週目以降ではなく初週後半に投入したことでチャートの安定以上に初週の上位進出を優先したことが気になるほか、"Bounce Up"や"Dance"リミックスにおいてリミキサーが不明な点に違和感を抱いています。これは先述した「Who」や、BTSの大ヒット曲「Dynamite」「Butter」でもみられ、リミックス文化の浸透よりもチャート施策の側面が強いのではというのがその理由です。

 

 

一方、日本からはAdoさんによる昨年の大ヒット曲「唱」のリミックス集が、デジタルアルバムとして9月6日に登場します。こちらはオリジナルバージョン、既発のリミックスに加えてロサンゼルスでのライブ音源、またLE SSERAFIM「CRAZY」同様にスピードアップ(Sped Up)やスローダウン(Slowed Down)といったバージョンも用意されています。

特にスピードアップ版は最近のTikTokで定番化。日本ではビルボードジャパンのTikTok Weekly Top 20チャートでMega Shinnosuke「愛とU」のSped Up版が現時点で3連覇を達成。また米では一昨年、クリス・ブラウン「Under The Influence」(2019)がバズに伴いフックアップされていますが、いずれも歌手側が公式でSped Up版を用意したことが功を奏しています(後者の正式なリミックス名は"Body Language")。

「唱」は今週金曜(すなわちデジタルアルバムリリース日)からユニバーサル・スタジオ・ジャパンで開催される"ハロウィン・ホラー・ナイト"にて再びテーマ曲に起用されることから、様々なバージョンの用意は来園者のイベント参加における自発的な発信を高めるという狙いもありそうです。そして同曲のオリジナルバージョンが収録されたアルバム『残夢』の訴求にもつなげていくことでしょう。

そして金曜リリースは、先述したように米ビルボードによる米やグローバルチャートの集計期間初日に該当することから、9月6日を集計期間初日とする9月21日付チャートでの再浮上も狙っているのかもしれません。他方ビルボードジャパンは月曜集計開始、リミックスは言語の違いのみの場合を除き合算対象外であることから、「唱」が再浮上するためにはオリジナルバージョンの注目度上昇が必要となります。

 

 

Ado「唱」も上位に進出したGlobal 200では、しかしながら最新8月31日付にて日本の楽曲が200位以内からはじめて姿を消しています。それを踏まえ、ビルボードジャパンのチャートポリシー(集計方法)をグローバルに沿わせ、金曜集計開始やリミックスの合算を前向きに検討する必要があると今一度説きました(上記参照)。複数のリミックス登場やリミックス集のリリースが今後増えていくならば、早急な議論は必須でしょう。