イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

『「洋楽離れ」をデータから検証する』noteを基に作成した、”極を越えたコラボレーション”プレイリスト

徒然研究室さんによるnoteが反響を呼び、いいねの数は本日7時半過ぎに千を突破しました。内容の素晴らしさを踏まえれば納得であり、データの分かりやすい可視化、そして徒然研究室さんによる客観性を保ちながらポジティヴな表現の心地よさに、ただただ感服するばかりです。

昨日は”洋楽離れ”がXでトレンド入り。音楽フェスをくさす目的でタイトルに安易に用いた(と厳しくも断言します)デイリー新潮の記事が登場したことに対する憤慨が背景にあるのですが、そのトレンドを経て徒然研究室さんのnoteを知った方も多いかもしれません。

 

さて自分は、徒然研究室さんのnoteに刺激を受け【極を越えたコラボレーションの増加】を確信。Spotifyにてプレイリストを作成した次第です。

 

 

このブログでは米ビルボードによるグローバルチャートについて、その速報記事を翻訳掲載しています。グローバルチャートについては下記にまとめています。

日本ではメディアでグローバルチャートを紹介するところがないことも翻訳を続ける理由なのですが、毎週チェックした者としてランクインする国の多様化を実感しています。最新チャートにおいてはインド出身のハヌマーンカインドによる「Big Dawgs」がトップ10入りを果たしたばかりです。

このグローバルチャートは2020年9月に始まっていますが、ともすればこのチャートの新設も、世界における英語詞曲ヒット率やシェアの低下、そして(おそらく多くの方が”洋楽”と形容する)欧米発のヒット曲の減少を加速させた一因かもしれません。

 

そしてこの動きはアメリカのソングチャートにも波及し、昨年度はナイジェリアのレマがセレーナ・ゴメスと組んだ「Calm Down」が年間で6位に。2022年2月にレマによる単独版がリリースされ、同年夏にセレーナ参加版が登場したことで世界的な大ブレイクを果たした形です。また年間チャートを紹介した弊ブログエントリーではメキシコの作品、およびK-POPのFIFTY FIFTYによる「Cupid」のランクインを取り上げています。

 

先述したレマを含むアフリカが米(ヨーロッパを含む)、中南米、アジアに続く第4極に成る可能性が考えられますが、この”極”を越えたコラボレーションが最近増えていることをグローバルチャートから感じていました。徒然研究室さんのnoteで確信に変わり、プレイリスト化した作品の中から、興味深い曲を以下にて紹介します。

 

 

レマとセレーナ・ゴメスによる「Calm Down」はオリジナルバージョンではありませんが、同様の形で登場したコラボレーションにはジェイク(JVKE)「Golden Hour」(2022)や千葉雄喜「チーム友達」(2024)の各種リミックスが挙げられます。複数種のリミックスがほぼ同時に生まれていますが、その中には極を越えたコラボレーションも少なくありません。特に有名なのは「Golden Hour」における藤井風さん招聘版でしょう。

リミックスにおける極を越えたコラボレーションは、主演歌手が共演歌手のいる地域での認知度を高める目的があるとみられ、共演歌手が主演歌手のいる地域での認知度を高める点でも有効といえるでしょう。「チーム友達」はバイラルヒット、リミックスリリースの流れを経て千葉雄喜さんがいわば”見つかり”、トラックメーカーのKoshyさん共々ミーガン・ザ・スタリオン「Mamushi」参加に至ったのかもしれません。

またデュア・リパは最新アルバム『Radical Optimism』収録の「Illusion」について、5月以降複数のバージョンをリリース。そのひとつが先月登場したCreepy Nutsによるリミックスであり、公式動画(ビジュアライザー)には日本語が登場しています。先述した「Mamushi」のリリックビデオでも日本語が(ローマ字表記ではなく)そのまま掲載され、英語以外の言語をそのまま掲載や使用する流れが来ていると実感します。

 

そして今週、極を越えたコラボレーションが複数登場しています。

サム・スミスのファーストアルバム『In The Lonely Hour』(2014)のリリース10周年を記念し、新たに登場したのが宇多田ヒカルさんとのコラボレーションによる「Stay With Me」。アルバムを代表するこの曲は、Darkchild Versionと称したリミックス(メアリー・J. ブライジ参加版と非参加版が存在)がグラミー賞で最優秀レコード賞および最優秀楽曲賞を受賞しています。

10周年記念盤はデジタルのみにて「I'm Not The Only One」のアリシア・キーズ参加版が収録。8月2日にその記念盤がリリースされた後も、スペインのアイタナとコラボした「Like I Can」、ブラジルのイザと組んだ「Lay Me Down」、そして今回の「Stay With Me (feat. 宇多田ヒカル)」が週毎に登場。時間を空けずのリリースであるのみならず、サム・スミスの人選へのこだわりがみえてきます。

 

複数のバージョンリリース等とは異なりますが、先述した「Stay With Me」リリースの翌日に登場したのがコールドプレイの新曲「We Pray」。イギリスのリトル・シムズ、ナイジェリアのバーナ・ボーイ、パレスチナ/チリのエリアナおよびアルゼンチンのティニが参加しています。10月リリースのアルバム『Moon Music』にはナイジェリアのアイラ・スターを迎えた「Good Feelings」も収録されます。

コールドプレイは前作『Music Of The Spheres』(2021)に収録されたBTSとのコラボ曲「My Universe」で、米ビルボードによる米およびグローバルソングチャートを共に初登場で制しています。K-POPのようなコアファンが多く、熱量の高いファンダムが存在する歌手と組むことでオリジナルバージョンが初登場、またリミックスの追加に伴いその加算時にチャートを制することもあります。

ニュージーランドのジョーシュ・シックスエイトファイヴとアメリカのジェイソン・デルーロによる「Savage Love (Laxed - Siren Beat)」(2020)が、BTS参加版に伴い米およびグローバルのソングチャートを制したことはその一例。なおBTSは米ビルボードのグローバルチャート開始前から「Idol」(2018)でニッキー・ミナージュ、「Boy With Luv」(2019)でホールジーと組む等、極を越えたコラボレーションを積極的に行っています。

 

 

今回作成したプレイリストには、同じ曲における複数のリミックスや曲は異なりながらも矢継ぎ早にリリースされたリミックス以外にも、極を越えた様々なコラボレーション曲を収録しています。今後もこのようなコラボレーションが増えていくことが予想され、ヒットに至ることでチャートのグローバル化はますます進んでいくことでしょう。