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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

なにわ男子、最新アルバムと歴代シングル表題曲をデジタル解禁…今後の注目点とは

なにわ男子による作品の一部が、本日デジタル解禁されました。今回はこの解禁を踏まえ、チャート分析者としての見方を記します。

 

なにわ男子は昨日のライブにて(またその模様をYouTubeにて生配信した際)、デジタル解禁のほか海外公演もアナウンスしています。

なにわ男子は海外のコアファン、そして海外の音楽ファンへのリーチを目的にデジタル解禁したとも捉えていいでしょう。しかしながら本日解禁した音源以外の曲もライブで披露する可能性があると考えれば、海外公演前に全曲解禁することが重要と考えます。サブスク時代にあってはライブ(ツアー)終了後にセットリストをプレイリスト化する歌手やファンも少なくないゆえ、尚の事です。

デジタル解禁の重要性は、ビルボードジャパンが一昨日発信したこちらのコラムからも実感できるでしょう。なにわ男子は音楽フェスではなく単独公演での海外進出ですが、現地メディアへの出演も考えられます。ならばデジタルの充実はやはり必須であり、YouTubeにおけるミュージックビデオ等フルバージョンの解禁もまた検討する必要があると考えます。

 

 

さて、なにわ男子についてはデジタル解禁すれば社会的ヒットとしての地位をさらに確立できたであろう曲が存在します。

2021年のフィジカルデビュー曲「初心LOVE」はビルボードジャパンソングチャートで動画再生指標が大きく牽引。それも上記短尺版のミュージックビデオ以上にフルバージョンとなるダンスバージョンが人気となり、後者は昨年末に1億回再生を突破しています。これは動画をサブスク的に聴く方の多さも示しており、YouTubeのオーディオストリーミングがストリーミング指標加点につながっています。

上記エントリーにてなにわ男子「初心LOVE」を最初に挙げたのは、動画再生指標のヒットを踏まえてフィジカルリリースまでにサブスク解禁を行ったならばさらなる社会的ヒットに至れたと考えるゆえ。STARTO ENTERTAINMENT所属歌手によるそのような作品はデジタル解禁に伴い再浮上しており(Hey! Say! JUMP「DEAR MY LOVER」、King & Prince「ツキヨミ」等)、「初心LOVE」の今後のチャート動向にも注目です。

 

 

なにわ男子のデジタル解禁について、今後の注目点として3つ挙げるならば、まずは先述した【既発の全曲をデジタル解禁するか】。次に【次のフィジカルシングルをデジタル解禁するか】が気になります。

昨日のYouTube生配信では各種発表のほか、8月28日にフィジカルリリースされる「コイスルヒカリ」もパフォーマンス。同曲は既にミュージックビデオも用意されていますが、短尺版を示す(とみられる)"YouTube ver."が動画タイトル未記載であることから、フルバージョンでの公開とみられます。フルバージョン公開をデジタルに明るくなっている証拠と捉えれば、「コイスルヒカリ」のデジタルリリースは十分考えられます。

 

そしてもうひとつ、【今後リリースの曲をすべてデジタル解禁するか】にも注目しています。なにわ男子は12月20日に公開される映画『劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』にて「勇気100%」を歌唱することが先月アナウンス。デジタル時代はアニメタイアップ曲が大ヒットする傾向がより高いことを踏まえれば、この曲がサブスク解禁される可能性は十分考えられます。

 

さて、上記動画の概要欄には映画スタッフ一覧が掲載されていますが、声優や音楽等はEテレのテレビアニメ版スタッフと同一であり、松竹配給の映画ながらNHKとの関わりが大きい作品といえます。しかしNHK側は旧ジャニーズ事務所初代社長の性加害問題が解決されない限りは現事務所所属タレントを出演させない姿勢を続けており、ともすれば今回の主題歌起用は矛盾と捉えられかねません。

ゆえに、NHK側が何をもってSTARTO ENTERTAINMENT所属タレントの出演解禁に至るか、その判断基準を明確化することが必要ではと考えます。なにわ男子による主題歌担当は映画公開時期の出演解禁が予め用意されているという邪推を招きかねないゆえ(まして12月には『NHK紅白歌合戦』もあるため尚の事です)、毅然とした対応を続けていることも含めた放送局側の訴求は必要でしょう。

 

(なおこの問題も踏まえた上で、STARTO ENTERTAINMENT所属歌手のデジタル解禁の重要性を旧ジャニーズ事務所所属歌手による音楽作品のデジタル解禁を提案し続ける理由(2023年10月25日付)で述べています。)

 

 

最後に。デジタル解禁に伴いフィジカルセールスがダウンするという懸念が聞こえています。ですが、下がったとしてもそこまで大きくはなく、タイアップ先のヒット等もさることながらむしろ複数種リリースや特典の存在に左右されやすいのではと考えます。

フィジカルは1枚あたりの金額が大きいため増減が大きくなりがちであり、ゆえに懸念も生まれやすいはずです。しかしデジタルにはフィジカルのような廃盤という概念が基本的に存在せず、聴かれ続ける限りわずかでも着実に利益が出続けます。またTikTok等により過去曲がフックアップされやすく、バズがサブスク聴取等につながれば収益にもなります。売上ではなく利益の面で、短期よりも中長期で考えることが必要です。

 

そして、今回のなにわ男子によるデジタル解禁について、メディアによる記事の見出しには全曲を解禁したと思わせかねないものが少なくありませんでした。メディアが行うべきは全曲解禁を行う予定はあるか、行うならばいつになるかを歌手側に問うことではないでしょうか。メディア報道は取材力も試されるものであり、単なる広報になってはいないかと感じることが少なくありません。