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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

米アルバムチャートでK-POPが史上初のワンツーフィニッシュ、一方で数字からみえてくるものとは

最新8月3日付米ビルボードアルバムチャート(集計期間:7月19~25日)はStray Kids『ATE』が首位、BTSのJIMINによるソロ作『MUSE』が2位に初登場。このチャートでK-POP歌手による作品がワンツーフィニッシュを果たしたのは今回が初となります。

このワンツーフィニッシュについて米ビルボードが注目しています。座談会形式の記事は特筆すべきチャートアクションがみられた際に登場する傾向にあり、注目していると断言可能です。

他方、チャートを分析する者として2作品の次週のダウンは免れないと捉えています。

 

 

ビルボードアルバムチャートはデジタルおよびフィジカルのセールスのほか、ストリーミング(動画再生含む)のアルバム換算分(SEA)および単曲ダウンロードのアルバム換算分(TEA)が含まれ、ユニット単位で表示されます。

今回の2作品における指標構成は以下の通りです。

<8月3日付米ビルボードアルバムチャート 上位2作品の動向>

 

・Stray Kids『ATE』 合計ユニット数 232,000

 セールス 218,000

  (フィジカルとデジタルの内訳は不明、フィジカル11種類リリース)

 SEA 13,000 (1905万回再生)

 TEA 1,000

 

・JIMIN『MUSE』 合計ユニット数 96,000

 セールス 74,000

  (フィジカルとデジタルの内訳は不明、フィジカル9種類リリース)

 SEA 15,000 (再生回数は記事未掲載)

 TEA 7,000

Stray Kidsは米ビルボードアルバムチャートにおいて初ランクインから5作連続で首位を獲得。前作『樂-STAR (ROCK-STAR)』は昨年11月25日付にて224,000ユニットを記録しており、『ATE』は前作を上回っています。またJIMINは前作『FACE』が昨年4月8日付で164,000ユニットを記録し2位に初登場。『MUSE』は順位が同じながらユニット数が下がっています。

一方、その『MUSE』は『ATE』よりもTEAおよびSEAが大きくなっています。これは7月23日にふたつのデラックスエディションを投入したことが大きく反映された形です。

7月23日には『MUSE』の2バージョンも追加リリースされ、リミックス集に収録されたオリジナル以外のリミックス(インストゥルメンタル含む)が3曲ずつ収められています。

この追加施策も相まって、JIMIN『MUSE』リード曲の「Who」は最新8月3日付米ビルボードソングチャートで14位、ふたつのグローバルチャートでは共に首位初登場を果たしています。またStray Kids『ATE』リード曲となる「Chk Chk Boom」も同日付米ビルボードソングチャートで49位、ふたつのグローバルチャートではGlobal 200で10位、Global 200から米の分を除くGlobal Excl. U.S.では4位に初登場しています。

 

 

さて、気になるのは2作品の次週の動向です。それぞれの前作はStray Kids『樂-STAR (ROCK-STAR)』が2週目に7位(ユニット前週比22.8%)、JIMIN『FACE』が同16位(ユニット前週比不明)となり勢いを維持できたとは言い難い状況ですが、今作も似た動向を辿るものと思われます。

K-POP作品では【初登場の翌週においてユニット前週比が小さくトップ5内をキープできない】【ストリーミングによるアルバム換算分(SEA)の全体ユニット数に対する割合が小さい/セールスの割合が大きい】【セールスに占めるフィジカル売上の比率が高い】という特徴がほぼ共通しています。

元来アルバムチャートにおいて、K-POPは全体的に初動の大きさを維持できず急落する傾向にあります。これは米ビルボードアルバムチャートにストリーミングのアルバム換算分が含まれるためで、ロングヒットし社会的ヒットに至る作品はいずれもSEAの強さが共通しています。2024年度米ビルボードアルバムチャート1位および2位の動向(下記表参照)からみえてくるものについては、上記引用部分で記したとおりです。

前週7月27日付で2位に初登場を果たしたENHYPEN『Romance: Untold』は21位に急落。初登場時のユニット数全体に占めるSEAの割合は5.6%と低く、次週のダウンが予想されていました。そしてこの5.6%という数字は最新チャートにおけるStray Kids『ATE』と共通しています。

冒頭で紹介した座談会記事では、JIMIN「Who」が最新米ビルボードソングチャートでストリーミング1400万回を超えたと紹介されています。これがSEA上昇の要因でもあるのですが、この数字がリミックス等リリースの影響が大きく、その投入前後でSpotifyの順位が大きく異なることを踏まえればコアファンとライト層との乖離が推測され、それを埋めない限りアルバム/ソング双方のチャートで急落するかもしれないと考えます。

 

ともすれば今後、たとえばビルボードジャパンソングチャートにおけるAKBグループのフィジカルセールス施策追加投入のような形で上位を維持させる動きが出てくるかもしれません(AKBグループによる施策はこちら等にて掲載)。しかしながらそれではライト層が育つことは難しいと考えます。

以前のエントリーで記した内容を再掲し、K-POP全体の人気が真に拡がることを願います。そしてJ-POPにおいても、今回のエントリーが米等における施策立案の指針になるならば幸いです。

先述したSEA、および単曲ダウンロードのアルバム換算分(TEA)共に、ユニット数算出時の計算式においてアルバム収録曲数に関係なく分母は同一となります。(中略) 米ビルボード側はチャートポリシー変更を行うべきと考えます。

収録曲数の少なさが不利となるチャートポリシーゆえ、ストリーミングが大きな影響を持つ米ビルボード各種チャートでK-POPは厳しい状況が続くかもしれません。しかしストリーミングヒットが生まれれば状況は大きく変わると考えます。ストリーミングを介してライト層がコアファンに昇華すればフィジカルセールスにもつながることでしょう。ライト層へのリーチを主体とした中長期的施策にK-POP全体がシフトすべきです。