イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

前週のトップ10初登場曲、当週のCHART insightから真のヒット曲に成るかを読む (2024年7月10日公開分)

3月まで記載していたこちらのエントリーを、内容を少しリニューアルした上で先週復活しました。CHART insightの仕様が変わり以前と同様に作ることはできないものの、しかし作成する必要があると考えた次第です。先週の内容はこちら。

 

ビルボードジャパンソングチャートの動向を分析する者として、真の社会的ヒット曲とはロングヒットする曲、年間チャートで上位に進出する曲と位置づけています。週間単位で上位に入ることも素晴らしいですが、他方で所有指標が強い曲は加算2週目、また所有指標的な接触指標をなぞる曲(主にLINE MUSIC再生キャンペーン採用曲)はキャンペーン終了後に指標が急落し、総合でも大きくダウンすることが少なくありません。

急落傾向は特にこの3ヶ月で目立っています。ソングチャートのトップ10は週平均5曲前後が毎週入れ替わり、ロングヒットする(その可能性を持ち合わせている)かそうでないかが極端に分かれる状況です。ロングヒット曲は主にライト層の支持が反映されるストリーミング指標が強い一方、急落する曲はコアファンとライト層との乖離が大きいのですが、これらを1週分のチャートから判断することは現状では難しいといえます。

ゆえにこのブログエントリーでは上記提案をビルボードジャパンに対して行っていますが、すぐに叶うことはないかもしれません。ならば、あくまで自分なりであると前置きしつつ、チャートの見方を提示したいと考えたのがエントリー復活の理由です。

 

 

<2024年7月10日公開分 ビルボードジャパンソングチャート

 前週初めてトップ10入りした作品の、前週および当週におけるCHART insight>

 (※前週フィジカルセールス指標初加算に伴い二度目のトップ10入りを果たした櫻坂46「自業自得」についても採り上げます。)

 

※CHART insightの説明

 

[色について]

黄:フィジカルセールス

紫:ダウンロード

青:ストリーミング

黄緑:ラジオ

赤:動画再生

緑:カラオケ

濃いオレンジ:UGC (ユーザー生成コンテンツ)

 (Top User Generated Songsチャートにおける獲得ポイントであり、ソングチャートには含まれません。)

ピンク:ハイブリッド指標

 (BUZZ、CONTACTおよびSALESから選択可能です。)

 

[表示範囲について]

総合順位、および構成指標等において20位まで表示

 

[チャート構成比について]

最新週における指標毎のポイント構成

 (CHART insight改定以降は累計ポイントにおける構成比に変更した、とビルボードジャパンは説明しています。)

 

・INI「LOUD」

 7月3日公開分 1位→7月10日公開分 5位

 

・櫻坂46「自業自得」

 7月3日公開分 2位→7月10日公開分 28位

NCT WISH「Songbird

 7月3日公開分 4位→7月10日公開分 100位未満(300位圏内)

(上記は日本語バージョン。)

Da-iCE「I wonder」

 7月3日公開分 8位→7月10日公開分 9位

 

当週におけるストリーミングの動向表はこちら。

 

上記で挙げた4曲のうち、NCT WISH「Songbird」は当週100位圏外に急落しています。前週はストリーミング指標が100位未満ながら300位圏内に入り加点されていたものの、当週は300位圏外に。前週はLINE MUSICのみ100位以内に入っていましたが、これは対面サイン会参加が当たる再生キャンペーンが実施されたためと考えられます。

ただし上記は日本語バージョンにおける開催。こちらのキャンペーン終了日を開始日とした新たなキャンペーンが、韓国語バージョンでも行われています。

しかしながら韓国語バージョンはLINE MUSICで100位以内に登場せず、日本語バージョンも同様でした。ビルボードジャパンソングチャートは基本的に合算しないチャートポリシー(集計方法)ながら、言語のみが異なる場合は対象となります。にもかかわらずストリーミング300位未満という状況からは、コアファンのキャンペーン参加に対する疲弊感が見て取れます。歌手側はキャンペーン開催の是非を考える必要があるでしょう。

 

 

そして前週のトップ2、INI「LOUD」および櫻坂46「自業自得」においては明暗が分かれた形です。ストリーミングにおいては主要サブスクサービスのうちApple MusicおよびSpotifyが2曲共に圏外となっていますが、LINE MUSICで大きく異なる結果となりました。

櫻坂46は前作「何歳の頃に戻りたいのか?」のフィジカルセールス指標2週目において2→13位、ポイント前週比39.7%を記録していますが、「自業自得」ではストリーミング指標が大きく落ち込んでいることが解ります。また2曲ともフィジカルに先駆けてデジタルリリースが行われていますが、仮に「自業自得」が前作と同様のタイムラグにてデジタルリリースを設定していたならば、今回の急落は避けられたのかもしれません。

一方でINIの前作「HANA_花」はフィジカルセールス指標加算2週目において2→29位、ポイント前週比20.5%となっていました。今作「LOUD」はストリーミング指標が強いのみならず、当週は50,911枚のフィジカルセールスを記録。前作はフィジカルセールス指標加算2週目に6,864枚を売り上げており、「LOUD」におけるフィジカルセールスの強さも総合トップ10内キープに大きく寄与した形です。

 

(ちなみにビルボードジャパンはストリーミング指標の基となるStreaming Songsチャートの速報記事(先ヨミ)にてINI「LOUD」が3位に入ったと紹介していますが、それに対し少なからず問い合わせがあった模様です。速報値と主要サブスクサービスの順位との乖離を踏まえての問い合わせと思われますが、最終的に「LOUD」はストリーミング10位に。別のサブスクサービスにおける再生回数の多さが反映されたものと思われます。)

 

 

フィジカルセールス指標加算2週目に「LOUD」がトップ10をキープしたことは、INIがBE:FIRSTや乃木坂46、またサブスク未解禁ですがSnow Man的なチャートアクションを示したといえるかもしれません。歌手自身のステップアップと捉えることもできますが、今回はフィジカルリリースが櫻坂46と重なったことで売上等のブーストが起きた可能性も考えられるため、次週以降そして次回作の動向を注視する必要があるでしょう。

 

なおDa-iCE「I wonder」については、別途解説エントリーを設ける予定です。