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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

スピッツ「美しい鰭」が2位発進、フィジカルシングルがバランスの良い指標構成に至った理由とは

最新4月19日公開分のビルボードジャパンソングチャート、トップ10は前週から7曲が入れ替わっています。昨日は首位初登場を果たしたYOASOBI「アイドル」について紹介しました。

今回は2位に初登場したスピッツ「美しい鰭」について分析します。

 

 

スピッツ「美しい鰭」は、劇場版『名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)』の主題歌で、ラジオ1位、シングル4位、ダウンロード3位、ストリーミング7位、動画13位とバランスよくポイントを伸ばし、総合2位に。5月にアルバム発売を控え、幸先の良いスタートダッシュとなった。

「美しい鰭」のソングチャートにおける6指標の構成は、後から上昇するカラオケを除いてすべて加点対象に。そのうち動画再生を除く4指標でトップ10入りし、バランスの取れたポイント構成となっていることが同曲のCHART insight(上記参照)から見て取れます。フィジカルリリース曲の理想形と言っても過言ではないでしょう。

 

各指標の動向をみてみると、ダウンロードはフィジカルシングルのカップリング曲である「アケホノ」が16位、「祈りはきっと」が17位にランクイン。この2曲は5月17日にリリースされるニューアルバム『ひみつスタジオ』には未収録ゆえ、フィジカルでシングルを購入せずともデジタルでカップリング曲を買う方が少なくなかったと思われます。無論フィジカルシングルのセールス上昇にも寄与したと言えるでしょう。

 

ラジオ指標は首位を獲得。チャート予想を行う紅蓮・疾風さんが振り返りにて『ラジオ加点が2,000点超えとなる程の超高水準』とつぶやいるように(ツイートはこちら)、この動向が総合2位獲得に大きく貢献していることが解ります。ラジオ指標はプランテックによる全国31のFMおよびAM局のOA回数を基に聴取可能人口等を加味して算出されますが、そのOAチャートでは「美しい鰭」の首位の理由が記載されています。

劇場版『名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)』主題歌として書き下ろされ、今週、映画公開とシングルリリースを迎えた同曲。4月10日の先行配信と同時にラジオでもフル解禁されると、各局・番組がいっせいにオンエアを開始し、結果、全ステーションでのオンエアを獲得しての堂々首位初登場を飾った。

解禁初日から集まり始めたリクエスト数も今週ダントツで最多。また、特定のエリア・局・番組に偏ることなく、まんべんなく広範囲におよび大量オンエアを獲得している点からは、自然に番組・リスナー双方から大きな注目を浴びたことが窺える。主要地区となる東名阪エリアを制しての快勝となった。

ラジオ指標におけるベテランに強さについては、たとえばサザンオールスターズ(桑田佳祐さんのソロを含む)や山下達郎さん等についてこのブログで紹介しています。スピッツは1991年にメジャーデビューしたベテランであり、加えてボーカル/ギター担当の草野マサムネさんが『SPITZ 草野マサムネのロック大陸漫遊記』(TOKYO FM/JFN)を担当していること、月曜解禁だったことも相俟ってラジオで強さを発揮したと言えるでしょう。

(なお「美しい鰭」がデジタル解禁された4月10日には、ミュージックビデオも20時に解禁。6日以上が加算対象となったことで動画再生指標の13位到達につながったものと考えます。)

 

そしてスピッツ「美しい鰭」は、サブスク等に基づくストリーミングが強いのも大きな特徴です。

この指標は2010年代中盤以降、つまりサブスクの興隆前後にデビューした歌手が強く、試行錯誤を続けヒットに至ったという印象があります。ゆえに、例えば2009年インディーズデビューのback numberにおける同指標の強さは特筆すべきものと捉えていました(上記参照)。

スピッツ「美しい鰭」は劇場版『名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)』主題歌でありアニメソングとサブスクの相性の良さもストリーミング指標に貢献したと考えます。またビルボードジャパンの最新ポッドキャスト(YouTubeこちら)でも指摘されていますが、昨年のドラマ『silent』(フジテレビ)にて主人公等が好きな歌手がスピッツだったという設定に伴い若年層の認知度がさらに高まったことも影響しているでしょう。

そして桜の時期になると耳にすることの多い「チェリー」が接触指標群でも人気を博しており、上記ミュージックビデオは今年2月上旬に1億回再生を突破、日本のSpotifyデイリーチャートでも100位以内エントリーを続けています。そのSpotifyでは「美しい鰭」が4月16日日曜に4位に達すると翌日以降は2位を続けており好調をキープ。これは下記プレイリストの存在も大きく影響しているかもしれません。

なおスピッツTwitterアカウント(→こちら)では『名探偵コナン』とのコラボツイート(#コナンとスピッツ)を実施しており、その中で漫画が引用されています。このインパクトも、「美しい鰭」の認知度向上に寄与したことでしょう。

 

 

スピッツ「美しい鰭」が今後ロングヒットに至るか、注目しましょう。各サブスクサービスではデイリーチャートの順位に若干差が見られますが、主題歌に起用された映画は興行収入100億円突破が予想されています。映画の勢いに伴い主題歌がロングヒットする可能性は十分考えられます。

またアルバム『ひみつスタジオ』のチャート初登場時には、収録曲の「美しい鰭」が更に高い段階に到達する可能性も十分。ゆえに、まずはそこまでヒットを続けることが重要と考えます。